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We came as romans 『Darkbloom』(2022)

アメリカ ミシガン発のメタルコアバンドWe came as romans

2005年にミシガン大学
の仲良し5人組Sean Zelda、 Dave Stephens、Jonny Nabors、Mark Myatt、Joshua Mooreで始めたThis Emergencyというバンドが母体。

初期はメンバーが流動的だったものの、2007年にChris Mooreがシンガーとして加入し、バンド名をWe Came as Romansに改めた頃から歴史は本格的に動き出す。

2008年に1stEP『Demonstrations』をリリース、2009年には2ndEP『Dreams』を発表し、Oh, Sleeper やThe Chariot と全米ツアーを回る等精力的に活動する。

その間、クリーンシンガーがKyle Pavoneに代わるという変化はあったものの、無事にEqual Visionと契約、順調に1stアルバム『To Plant a Seed』をリリースし、新人バンド登竜門であるビルボードチャートでtop200以内に入る快挙を見せ、コアなメタルファンならずとも広く認知されるようになる。
そんな中で2010年にJustin Timberlakeの"My Love"をカバーした反響は大きく、アメリカ中のお茶の間に名前が流れるように。
I Prevailといい、メタルシンガーがポップスをカバーするとバズる傾向はこの頃から良くありました。

続く2013年には『Tracing Back Roots』をリリース、なんとビルボードチャートで8位に入り一気に人気バンドの仲間入りを果たす。

2017年、Sharp tone recordsに移籍、『Cold Like War』を発表。
これも各方面から好評を得て、ますます上り調子のバンドに悲劇が訪れる。
クリーンボーカルでありバンドのフロントマンであったKyle Pavoneが突如逝去、死因はオーバードーズによるもので、28歳の若さだった。
残されたメンバーは悲しみを抱えながらも、代わりのメンバーは入れないと発表し、本作6thアルバム『Darkbloom』を2022年にリリース。

Darkbloom

透明感と力強さを持ったあのKyleの声は無いが、しかしその分Daveが頑張りまくっているし、重厚で奥深いサウンドは変わらず耳に優しく浸透してくる。
世の無情を訴える世界観も一貫している。

さらに、人生の困難な時も前を向いて立ち向かわなければならないというポジティブな歌詞もよりストレートに、よりむき出しの感情を持って紡がれている。
聞けば聴くほどバンドの強さと未来を感じられる一枚。
また、ヒットメーカーCaleb Shomoをフィーチャリングした『Black Hole』やZero 9:36が参加した『Daggers』など今までになくバラエティに富んだ楽曲が並ぶ。

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Dave Stephens – lead vocals
Kyle Pavone – additional keyboards
Joshua Moore – lead guitar, backing vocals
Lou Cotton – rhythm guitar
Andy Glass – bass guitar, backing vocals
David Puckett – drums, percussion
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■Darkbloom
電子音を伴った重々しいギターが輝きを放つイントロから振り切る、疾走。
オーオー系の漢クワイヤを携えて、まるで悲しみを振り払うかのような、激奏。
開幕からメッセージ性の強いサウンド。

■Plagued
ゴリっとしたヘヴィなギターリフを主軸に据えるミドルテンポチューン。
Daveのハスキーで強靭な歌唱が全体を支配する中、細かなノイズやテンポチェンジが静かに曲の隙間を埋めていき、確実に全体の濃度を上げていく。
“切れ味鋭いブレイクダウン”、と表現して伝わるか分からないが、しかしそう表現するしかない強烈な落としも。

■Black Hole
激しく縦ノリに身を委ねるほかないミドルテンポチューン。
フロアを揺らす歓喜のヘドバン軍団が大量生成されるであろう曲。
BeartoothのCaleb Shomoが入る事で、またボーカルサウンドに鮮やかさが加わり、ブレイクダウンもより重く響く。


■Daggers feat.Zero 9:36

とんでもない音圧とZero 9:36の濁流のような高速ラップが乱舞するニューメタル。
ナヨいメタラーを片っ端からベアナックルで殴り倒すような破壊力のある威圧感たっぷりの激重チューン。

■Golden
透明感溢れるクリーンなVoがどこまでも響きわたる綺麗なメロコア。
アルバムを代表する、いや彼らの歴史の中でも五指にはいるであろうキャッチーで誘引力のある曲。
前曲からの温度差で効かせてくるWCARマジック。

■One More Day
エモさが極限に達してしまっているハードバラード。
Daveの嘆くような、慟哭スクリームがどうしても体の中から涙を引っ張り出してきてしまう。
「’Cause l’m trapped in the weight of the pain you left.
I’m calling your name, but you won’t come back…」のフレーズはストレートに泣いた。

■Doublespeak
EDM的なミックスをイントロとして使い、野太いギャングコーラスで爆発するヘヴィ極まりないデスコアに近いメタルコア。
Choke! On Your Words!は腹の底から全て吐き出して合唱するパートです。

■The Anchor
クリーンで軽やかに歌い始め、徐々に昇天し、コーラスは魂のデススクリームで心臓を搾り出すように歌うDave。
奥行きのあるサウンドの波が打ちつける重厚なメタルコア。

■Holding the Embers
コーラスがキャッチーで聴きやすく、しかし全体的なサウンドはタイトかつ広がりがあり、劇場感がある。
エモーショナルなクワイヤコーラスがいつまでも枕元を去らないような暁の夢のよう。

しかし最後はドスンとブレイクダウン。

■Promise You
アルバムを占めるクリーンバラード。
MVが全てです。
涙がいくらあっても足りない。脱水症状待ったなし。
Kyle Forever


総合満足度 87点

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