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Be’lkor『Of Breath and Bone』(2012)

オーストラリア発のメロデス/プログレメタルバンドBe’lkor

オージー産のプログレメタルといえば、Ne Obliviscarisと、このBe’lkorが二台巨頭だと思うが、より叙情みが高いのがこちらのBe’lkorで、今作はその叙情みがより日本人好みのサウンドになっていると思うのだが、まだまだ認知度は高くない気がする。

結成は2004年、デビューアルバム『The Frail Tide』をリリースしたのが2007年と時間が掛かっており、評価も当初はそこまで高くはなかったが、2009年にセカンドアルバム『Stone's Reach』をリリースすると、各方面から高評価を獲得し、Kolony Recordsとの契約を勝ち取る。

2010年から2011年に掛けてはTurisusAlestormのツアー帯同、Summer Breeze Open Air Festivalなどで忙しく活動し、徐々に認知度を上げていくと共に、制作も活発化。
2012年本作『Of Breath and Bone』をリリースに至る。

Of Breath And Bone


音像は、前作『Stone's Reach』より、ややまろやかになったというか、プロデュースのイェンスボグレン由来の叙情成分が増えている。
一方で、アグレッシブなフレーズを次々に繰り出して、混沌空間を作り出す場面は減退している印象。

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* George Kosmas – vocals, guitars (2004–present)
* Shaun Sykes – guitars (2004–present)
* Elliott Sansom – drums (2015–present)
* Steven Merry – keyboards, piano (2004–present)
* John Richardson – bass (2004–present)
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■Abeyance
開幕から叙情が溢れ出してしまうオーストラリア産イェーテボリスタイル。
いきなりイェンスボグレンが出ちゃっている。
ミュートがかった緊張感のあるギターに扇動されるミドルテンポで淡々と奏でる前半部と、堰を切ったように4:39辺りから嵐のように流れ出す後半部、そしてラスト1分半はしっとりメロで聴かせにくる濃密な8分。
George Kosmas(Vo)の低音で落ち着いたグロウルもマッチしていて聴きやすい。


■Remnants
様々に移り変わるTheプログレメタル展開を楽しめる一曲だが、ただひたすら忙しく移り変わるのでは無く、しっかり一つ一つのパートを味わえるように長めに取ってくれている。
よく「印象的なフレーズは一瞬だけで良い!」という人がいるが、そんな事はない、
良いフレーズは長めにやって欲しいと思っちゃう野暮な私にピッタリな曲、バンドです。


■Fraught
隙間なくトレモロリフで埋められた分厚い音の絨毯にGeorgeのグロウルが堂々とのるややゆったり目のチューン。
中間部はいつものBe’lakorのミュートがかった一音一音を強調するギターの粒寄りのサウンドが主張してくる。
局所的な盛り上がりの山はないが、全体的にジワジワとテンションが高めに位置する曲。


■Absit Omen
不協和音、不穏なサウンド、中東風のメロディを取り入れて起伏を持たせたプログレデスメタル。
不穏なコード進行やハーモニーでありながら、ギターサウンドは秀逸で、クリスタルクリアな輝きを感じてしまう。
繊細な筆でカオスな抽象画を丁寧に描いているかの如く。


■To Stir The Sea
切ないメロディのアコギインスト。


■In Parting
ゴテっとしたバッキングに、耽美なピアノが控えめに響く前半部。
からの、三拍子ワルツのパートを経て、トレモロリフに操られながら軽快に進む。
Amorphis やDark Tranquility、Insomniumなど2000年代前半メロデスにありがちだった様式美をふんだんに詰め込んで魅せてくるミドルテンポチューン。

■The Dream And The Waking
なだらかなリフに揺蕩う前半パート。
途中、Omnium Gatherum的な叙情溢れるゴシカルな風も漂わせ、いつもの単音テッテッテッサウンドが顔を出す。
まぁこの手のバンドにありがちな「ワンパターンでちょっと飽きてきた…」感はそこはかとなく感じてしまうが、それでも次のフレーズが気になって最後まで聞いてしまう。



■By Moon And Star
大作揃いのなかでも8:30を超える超大作。
まるでオペラのように様々に表情とサウンドを変えながら魅せてくるフルコースなメタル。


総合満足度 86点

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