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WARMEN『Here for None』(2023)

北欧フィンランドから綺羅星の如く登場すると、そのサウンド、クリエイティビティ、ロックスターとしての唯我独尊の立ち振る舞いで、デスメタル界だけでなく世界中のロックファンを魅了し、凄まじい爪痕を残し解散した伝説的なバンドChildren Of Bodom、その魂を正統に受け継ぐバンドが同バンドでキーボーディストであったJanne Wirman率いるこのWarmanである。

チルボドが存命だったころからJanneのサイドプロジェクトとして活動しており、その歴はもはや四半世紀と意外にベテランバンドに近い。

とは言え、2023年にリリースされた本作『Here for None』は前作から実に9年ぶりで、作風も、おそらく意気込みもこれまでとは違う一枚になっている。

今まではJanneのキーボードが目一杯フィーチャーされたインスト曲ばかりのアルバムだったが、今作はEnsiferumPetri Lindroosをバンド史上初めてvoを加えて、Alexiそっくりの吐き捨て型のグロウル、キラキラキーボード、唸りを上げるギターサウンド、、まるでチルボドの最新作のようなチューンが並ぶ、かつてのHate Crew達が涙を流しながらヘドバンする姿が世界中で多発するであろう一枚。

Here For None


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Janne Wirman - keyboards
Petri Lindroos - vocals
Antti Wirman - guitar
Jyri Helko - bass
Seppo Tarvainen – drums

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■Warmen Are Here For None
怪しげなJanne節炸裂のキーボードから、カラッと乾いた感じのリフに繋がるチルボド晩年の『I worship Chaos』に入っていそうなスピードチューン。
弟のAntiが本当に頑張って弾いたギターソロ&キーボードソロが往年のAlexiとのJanneの掛け合いを再現しているようで、開幕から涙が止まらない展開。


■The Driving Force
ゴリっとした質感漂うリフに突如走り出す展開のスピードメタル。
コーラスでは開放的でメジャーな響きになるかと思いきや、最後に「異質で」「奇妙な」コードを挟むというチルボドが『Hellhounds on my trail』で披露したあの展開を彷彿とさせる。
AntiのソロもAlexiが多用していた4連譜上昇フレーズとランフレーズを駆使して組み立てており、完全に本人が憑依している。


■A World Of Pain
スラッシーなリフが昂揚感と荒涼感を産む疾走チューン。
コーラスでは華やかながらも北欧メタル特有の刃物の先端を思わせるソリッドな叙情感を植え付けてくる。
大スウィープから始まるギターとシンセの超高速ソロの掛け合いが激走具合に拍車を掛け、全身の血潮をダイレクトに沸騰させてくる。



■Too Much, Too Late
うねるベースが重厚感ををひねり出したかと思いきや、感傷的な悲哀感を演出するギターが淡々と絡みつくミドルテンポチューン。


■Night Terrors
ヒヤッとする冷感あふれるキーボードが軸となり圧倒的なチルボド感を醸し出す一曲。
まさにオリジネイターが切り開いた境地そのもので、ただその外見やスタイルを模倣、剽窃するだけの凡俗バンドとは圧倒的な違いを見せつけてくる。


■Hell On Four Wheels

Alexiお得意のパターン、いや、セルフカバーのような曲。
野暮と言われてもやはり頭をよぎらざるを得ない『Needled 24/7』『Bastards of Bodom』『Waste of Skin』感。
Hey Fucking Bitchども、こういうのが聞きたかったんだろ!?と、言わんばかりで、はい、そうです!と答えるしかない。
こういう曲をタイトル曲に持ってくるあたり、しっかりとJanneが”分かってくれてる”。


■The End Of The Line
テンポはスローながら、確実に刻まれたビートの上にのる十分にスリリングなキーボードと、曲を追うごとにますますAlexiみを帯びてくるPetriのグロウルがリアルタイム勢には染み渡る。


■Death’s On Its Way
Motorhead的なリフから叙情的で耽美なコーラスが導かれる、もはやメロハー的な酩酊感さえ感じる一曲。
逆に晩年のチルボドではここまでのあからさまな展開はできなかっただろうと考えると、これこそWarmenの新たなアイデンティティなのかもしれない。


■The Cold Unknown
キャッチー+Black Metal+ネオクラシカルという混ぜるなキケンなジャンルを絶妙なバランスで、かつ研ぎ澄まされた音像で成立させている曲。


■Dancing With Tears In My Eyes
ポストパンクバンドULTRAVOXのカバー。
カバー曲を入れてくれる文化も引き継いでくれて嬉しい。


総合満足度 87点(Children of Bodomの新作といっても過言ではないレベル)

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