見出し画像

AIのべりすと怪文書『ウェスタン義経記』

 源義経は武蔵坊弁慶ら部下たちと共に、OK牧場の決闘でボニーとクライドのコンビに敗れ、逃走した。彼らはアメリカ西部でガンマンとなり、ヴァン・ヘイレンの曲を歌った。
「悪魔と契約したブルースマンがいるらしい」
 義経は言う。彼らは酒場でバーボンをラッパ飲みし、ガンも酒浸りである。
「悪魔に魂売るくらいなら死んどるわアホ」
 弁慶は手ぬぐいで顔を拭くと、そのまま床に横たわり大いびきをかき始めた。OK牧場での荒淫が祟ったらしい。
「俺たちには無理だな」
 義経はつぶやく。彼の視線の先には、ギターを構えて気勢を発する青年の姿がある。酒場の客たちがみな注目している。
「人を引きつける、華のある奴」
 彼はギター弾きを眺めながら言った。
「俺たちには持てないものだ」
 弁慶がむくりと起き上がった。彼の視線はギター弾きに注がれている。
「おい、あいつにガンの撃ち方を教えてくれるよう頼んでくれ」
 義経が言うと、弁慶はうなずき、よろよろと青年の方へ近づいて行った。その間も気勢を上げ続けている。青年はたじろいだ表情になった。
「あ、あの……何スか」
 弁慶は青年の両肩をつかみ、顔を近づける。青年は目を白黒させて硬直している。
「教えてもらいたいことが山ほどあるんじゃ。撃ち方から女の口説き方まで何でもいい」
 弁慶が言うと、義経も彼の横に並んだ。
「頼む!」
 二人に迫られ、青年はたじたじとなりながらギターを抱きしめた。恐怖のあまり泣きそうな表情になっている。青年はギターを抱きかかえたまま駆け出した。
「おい、待ってくれ」
 彼らも後を追った。
 青年は息を切らして駆けていく。ついに路地裏の行き止まりに追い詰められ、膝に手をついた。義経と弁慶は彼に詰め寄ったが、青年が抱えていたギターを見つけた弁慶が声を上げた。
「なんじゃこのオモチャは」
 彼はギターを奪い取ろうとする。だが青年はひしと抱きしめて放さない。青年は涙目になって弁慶を睨んだ。
「返せ!」
「なんじゃこいつ。オモチャの分際で生意気じゃ」
 弁慶はギターを力ずくで奪い取ろうとするが、青年も必死に抵抗する。やがて弁慶がしびれを切らし、ギターを奪い取ってへし折った。真っ二つになったギターを見て青年が悲鳴を上げる。
「あ」
 義経がつぶやいた瞬間、弁慶は青年の顔を殴り飛ばした。青年は壁に叩きつけられ、気絶してしまう。弁慶は真っ二つになったギターを見つめ、肩を落とした。
「弁慶……いくら何でもやりすぎだ」
 義経が言うと、弁慶は目を丸くし、唾を吐いた。
「オモチャを壊しただけじゃろうが」
 その時、背後から拍手の音が聞こえた。二人が振り返ると、サングラスをかけた大男が立っている。背後には手下たちが控えていた。青年は気絶しているだけだと気付くと、弁慶は再び彼に詰め寄ろうとした。だが大男の方が一瞬早く殴りかかった。
「うおっ」
 弁慶はよろめく。さらに大男がパンチを繰り出すと、義経とて例外ではなく、二人はあっという間に路地裏へ追いやられた。大男の部下たちも加勢し、義経と弁慶は袋叩きにされる。
「馬鹿! やめろ!」
 義経が叫ぶ。しかし彼の制止など聞く耳を持たないらしく、大男は部下とともに二人の顔面を殴り続けた。やがて疲れ果てた大男たちは手を休めた。その場に倒れ伏す弁慶と義経。大男たちは再び拍手を始めた。
「いいぞ、ボス」
「かっこよかったぜ!」
「ヒーローだ!」
 大男はサングラスを外し、まだ意識が朦朧としている弁慶の額に葉巻をこすりつけた。そして気絶した弁慶を肩の上に担ぐと、路地裏から去っていった。義経が体を起こした時にはもう遅い。二人の姿はもう見えなくなっていた。
 彼はしばらく茫然自失していたが、やがて立ち上がり、破れた衣装をはたいた後、酒場に戻っていった。
「俺たちの夢は叶わなかったな」
 義経がつぶやくと、弁慶もうなずいた。
「ああ、だが悔いはない」
 二人は拳を突き合わせた。そして無言でギターの弾き方を練習し始める。カウンターの隅に座った男たちの声が彼らのもとにまで届く。

「おい聞いたか? ボスがあのガキどもに絡まれて返り討ちにしたらしいぜ」
「さすがだぜ! ボス!」
 二人は笑い合った。酒場の客たちも彼らの方をちらちらと見ては、称賛の声を上げた。やがて噂を聞きつけたカウボーイたちが店にやってくる。
「おう、お前らか。ボスにケンカ売った命知らずな野郎どもは」
 彼らは義経たちに近づき、話しかけた。しかし義経と弁慶は目も合わせない。彼らを無視して黙々とギターの弾き方を練習するばかりだ。
「無視すんなコラ!」
 カウボーイが二人の肩をつかみ、怒鳴りつける。だがその時、義経が彼らの方を振り向き、にっと笑った。
「俺たちとやろうってのか? 上等だ」
 弁慶もにやりと笑い返した。カウボーイたちはたじろいだ表情になる。彼らは慌てて店から出て行った。
「お前らもいつまでもヘタクソなギター弾いてんじゃねえ!」
 酒場の客の一人が叫ぶと、店内にいたカウボーイたちもどっと笑う。その笑い声に義経は満足げな表情を見せた。弁慶も義経につられて笑い出した。
 彼は酒場の主人と目があった。酒場の主人は気まずそうに目をそらす。義経が肩をすくめていると、弁慶が肩を組んできた。
「これからどうする?」
「そうだなあ」
 義経はしばし考えた後、立ち上がった。ギターを肩にかけ、カウンターにチップを置くと、彼は店の外に出た。もうすっかり夜になっている。
「腹も減ったな」
 義経と弁慶は宿屋へ向かった。彼らは自分たちがどうなるかは分からずとも、どうにでも生きていけるという自信があった。
「おい、お前も来い」
 宿の廊下ですれ違った男に義経が言った。男は立ち止まって振り向く。
「え? 俺?」
「そうだよ。お前もギターを持ってるじゃないか」
 彼は自分の腰にかけたアコースティック・ギターを指さして言った。男は不思議そうな顔をして義経たちを見つめると、おもむろにうなずいた。
「よし、一緒に行こう」
 彼は自分の部屋にギターを取りに行き、それを義経たちと運ぶのであった。
 彼は宿の廊下を歩きながら、見知らぬ二人の男に話しかけた。
「お前ら、名前は?」
 二人は顔を見合わせる。弁慶が口を開いた。
「俺は弁慶」
 義経も続ける。
「俺は義経」
 彼らが名乗ると、男は満足げな笑みを見せた。その時、前を歩いていた弁慶が何かにつまずいて転びそうになった。咄嗟に男が彼の腕を摑んで助けた。
「おい、気を付けろよ。怪我したらどうするんだ」
 男は言うと、弁慶からギターを取り上げた。
「これも持ってやるよ。俺には軽すぎるし」
 男は軽い口調で言うと、弁慶の肩を叩いて先に進ませた。義経も後に続くが、彼は男から微かに漂う血のにおいに気づいていた。
 男は部屋に入るとギターを壁に立てかけた。そして二人に向き直り、口を開く。
「ところでお前らはなんで旅なんてしてるんだ?」
 男が言った。弁慶が答える。
「俺たち、何も持ってないからよ」
 義経も言った。
「何か、金になりそうなものを探しに来たんだ」
 男はほうとつぶやいた。そして彼らの目を見つめると、口角を上げた。
「じゃあさ、俺がお前らに仕事を与えてやるよ」
 彼はギターを再び手に取ると、弾き始めた。その歌にはどことなく哀愁が漂っているように思えた。男が歌い終えると、弁慶は拍手し、義経は首をかしげた。
「何だ今の歌は?」
 男が答える。
「俺たちの国に古くから伝わる歌さ」
 彼がそう言うと、弁慶がギターを指さして言った。
「俺たちは今それを練習してるんだ」
 すると男は驚いたような表情を見せた。そして突然笑い出した。
「そうか、お前たちはこれを練習してるのか」
 彼はギターを放り投げると、ベッドに寝転がった。二人は困惑した表情で彼を見つめている。
「まあせいぜい頑張れよ」

 翌日、義経と弁慶はベッドの傍で目覚めた。部屋を見渡しても、男の姿はない。彼がどこに行ったのか知る術はなかった。
「ギターはどこに行ったんだ」
 弁慶がつぶやくと、義経は部屋から出た。ちょうど宿に泊まっていたカウボーイたちが同じ方向に向かっていく。彼らの行く先は酒場だった。彼らは口々に弁慶たちを罵倒しながら酒場に入っていった。
「なんだお前ら、また来たのか!」
「何度来たって俺たちには勝てねえぞ」
 店内から不謹慎な笑い声が響いている。弁慶と義経は互いに顔を見合わせた。
「あいつら、俺らが負けると思ってやがる」
「見返してやろうぜ」
 彼らは酒場に駆け込んだ。すると彼らの目に映ったのは、昨日自分たちのギターを取ってくれた男が、カウボーイたちに袋叩きにされている姿であった。彼は倒れ伏し、動かなくなっていた。
「おい何やってんだお前らァ!」
 弁慶が叫ぶと、カウボーイたちが振り向いて言った。
「てめえら、チキンガンボの具にしてやる」
「お前、昨日ギターを取られたやつだろ」
 義経が男に駆け寄ろうとする。しかし彼は振り返り、義経の前に立ちはだかった。そして男たちに向き直る。
「おい! どうしてこの男を殺した!」
 彼は怒鳴った。カウボーイたちは顔を見合わせると、にやりと笑った。
「別に俺たちが殺したんじゃないぜ」
「ただそいつが死にたがってたから死なせてやったのさ」
 彼らの言葉に義経と弁慶は耳を疑った。
「なに?」
「この酒場には仲間を一人殺せば、一晩飲み放題ってルールがあるのさ」
 弁慶が絶句すると、カウボーイたちはまた笑った。
「分かったらさっさとここから出ていくんだな!」
 その瞬間、義経は怒りに震え、手近にいた男の胸ぐらをつかんだ。そのまま顔面を殴りつける。カウボーイは吹っ飛んで壁に叩きつけられた。さらに弁慶が彼につかみかかり、床に引きずりおろすと何度も殴りつけて足蹴にし、踏みつけた。
「お前らは絶対に許さない」
 弁慶が倒れたカウボーイを見下ろしながら言う。その拳は血で濡れていた。義経も肩で息をしながら、もう一人のカウボーイと対峙している。彼はまだ殴られていない方のカウボーイに耳打ちをした。すると彼はにやにやと笑みを浮かべながら二人に向かっていった。
「おい、俺たちも加勢してやっか?」
「いや、やめておこうぜ」
 二人が言い合う声が聞こえたが、彼らはかまわず向かってくる。
「どりゃー!!」
 弁慶が叫びながらもう一人のカウボーイに殴りかかる。だがその拳は空振りに終わった。義経が素早く相手の懐に潜り込み、アッパーカットを繰り出す。だがこれも空を切った。彼は体勢を立て直すと、相手の動きを凝視した。
「おい、あいつの動きなんか変じゃないか?」
 弁慶が指摘する。確かに相手の動きがぎこちなかった。二人は困惑した表情を浮かべながら戦闘を続けるのであった。
 やがて酒場には気絶したカウボーイたちだけが残された。
「大丈夫か?」
 義経が男に駆け寄る。彼は震えながら起き上がろうとしたが、うまくいかなかった。弁慶は男の身体を抱き起こすと、彼の右脚を見つめた。そして険しい表情を見せる。
「その足……」
 男は弁慶に支えられながら、自分の右足に目をやった。包帯の下には痛々しい傷跡がある。彼はそれを見て言った。
「これか? これは昔、ガキの頃にフォークダンスで踏まれてできた傷さ」
 彼は懐かしむように語った。
「その時、俺は骨折したんだが、痛みに耐えかねて泣き出しちまったんだ」
 彼は肩をすくめた。義経は顎に手をやり、男を見つめている。弁慶は突然口を開いた。
「もしかしてあんた、あのダンスに加わってなかったのか?」
 男がうなずく。その目には涙が浮かんでいた。
「ああそうだとも! 俺はいつも惨めだった! どうして俺ばかりこんな目に遭わなきゃならないんだ!」
 男は涙を流しながら拳銃を引き抜いて銃口を自らのこめかみに向けた。だがその直後、弁慶がその腕を摑んで止めた。
「もういい、それ以上言うな」
 男はしばらく嗚咽していたが、やがて落ち着きを取り戻していった。
「ところであんた、名前は何て言うんだ?」
 義経が尋ねると、男は涙を拭きながら言った。
「俺はケンだ」
 ケンは酒場を出ると、路地裏へと消えていった。二人はその後を追いかけた。ケンは空き箱を見つけるとそれに腰掛けた。そしてギターを取り出して弾き始める。
「俺、ケンの歌が聴きたい」
 義経が言うと、ケンは照れくさそうに笑った。
「俺もお前らと一緒に旅をしてえな」
 義経は微笑んだ。
「なあ、俺たちもギターを練習してるんだよ。あんたも一緒にやろうぜ」
 するとケンはかぶりを振った。彼は立ち上がって二人に言った。
「俺はここでやらなきゃならないことがあるんだ」
 その時、ケンの背後に人影が現れた。それは昨日酒場にいたカウボーイたちであった。
「お前ら、昨日酒場にいたやつらだな」
 弁慶が拳を握りしめる。だがケンは落ち着いた声で言った。
「いや、もういいんだ」
 ケンはカウボーイたちを振り返って言った。
「今までありがとうな」
 彼はカウボーイたちに背中を向けた。彼らは何かを言いかけたが、押し黙ってしまった。そしてその場に立ち尽くしている。やがて一人が口を開いた。
「また一緒に飲み明かそうぜ!」
 その言葉を皮切りに、他のステイゴールド産駒たちが次々に別れの言葉を口にし始めた。
「またな!」
「楽しかったぜ」
 ケンはうつむいたまま、彼らに手を振った。そして背を向けて歩き出す。だが突然立ち止まると、振り返って叫んだ。
「おい! お前らに名前も教えてなかったよな!」
 ステイゴールド産駒たちは虚を突かれたような顔をしていたが、やがてケンの言葉の意味を理解すると破顔した。彼らは口々に言った。
「さよならだ、カウボーイ」
 するとケンも笑みを浮かべながら言った。
「俺はもうカウボーイじゃねえよ」
 彼は手を振って去って行った。その後ろ姿を見つめながら、義経と弁慶は手を取り合った。そしてケンの後を追いかけるように歩き出したのであった。

 ケンが辿り着いた先は墓場だった。彼は足を止めた。夕日に照らされながら、静かに墓石を見つめている。彼が墓に手を触れると、義経と弁慶もそれに倣って手を合わせ、目を閉じた。そして互いに顔を見合わせるのであった。
「さてお前らの名前を教えてもらおうか」
 ケンは微笑みながら言った。二人はほぼ同時に口を開いた。
「俺の名は義経」
「俺の名は弁慶」
 彼らはケンに名乗った。すると彼は二人を見つめてうなずいた。
「義経と弁慶だな、よろしくな」
 義経と弁慶は嬉しそうにうなずいた。そしてケンが語るのを聞くのだった。
「俺はこの墓場でガキの頃に友達を亡くしたんだ」
 彼は静かに語り始めた。
「その時、俺は一人でいた。昔から俺は友達が少なかったんだ。それでさ、その友達が死んじまって、俺は悲しくて仕方なかった」
 彼は再び墓に手を触れた。
「そしたらさ、そいつの兄貴が現れて言ったんだ。『こいつは死んだんじゃない、天国に行ったんだ』ってな」
 義経と弁慶は顔を見合わせる。ケンは続けた。
「それから俺は歌うようになったんだ。辛いことがあった時とか悲しい時にいつも歌ってた。今思えばそれが俺が歌うようになった理由なのかもな」
 二人は黙ったまま彼の言葉を聞いていた。ケンは続けた。
「そしてある時、俺は思ったんだ。『歌で世界を変えられないかな』ってね」
 ケンが歯を見せて笑うと、弁慶が言った。
「世界を変える?」
 すると彼はうなずいた。
「ああそうだとも。俺たちはこのクソみたいな国に生まれたんだ。しかも黒人として生まれたっていうおまけつきだ。だから俺たちが音楽で世界を変えるんだ!」とケンは言った。
「世界を変えるのか……」
 義経と弁慶がつぶやくと、ケンは笑みをこぼした。
「お前らもやってみないか?」
 二人は顔を見合わせた。そして互いにうなずいた。
「ああ、やるよ」
 それからしばらく三人は語り合った後、墓場を去っていった。彼らが去った後、ケンは墓石に向かってつぶやいた。
「じゃあな」
 風が彼の頬を撫でていった。彼らの旅はまだ始まったばかりであった。

 義経と弁慶は、かつて自分たちが日本にいた頃を思い出した。彼らはとある一族の武将だった。しかしある事件をきっかけに、二人は日本から逃亡することになった。
「俺はまだまだ力不足だったのかもしれないな」
 義経が言うと、弁慶はうなずいた。
「俺たちはもっと強くならなきゃいけないんだ」
 二人が会話していると、背後から馬の足音が聞こえてきた。振り返ると、そこにはケンの姿があった。彼は手綱を引いて馬を止めながら笑顔で言った。
「これからどこ行くんだ?」
 義経は地図を見ながら答えた。
「そうだな……ひとまず都に行こうと思ってるんだが」
「そうか、じゃあ一緒に行くか?」
 義経と弁慶は顔を見合わせてうなずいた。彼らはケンの馬に同乗することにした。彼が手綱を引いて馬を歩かせると、義経が尋ねた。
「なあ、どうしてお前は旅をしてるんだ?」
 彼は振り返って言った。
「俺は自分がどこまでやれるか試したいんだ」
「それで俺たちと一緒に行くのか」
 ケンはうなずいた。彼は遠くを見つめながら語った。
「俺は自分の力でどこまで行けるのか知りたいんだ。そしていつか世界中を旅するのが夢なんだよ」
 二人は黙って彼の話に耳を傾けていた。ケンは空を見上げながら、さらに続けた。
「それにお前らとは何か縁を感じるんだよ」
 義経と弁慶も、自分たちとケンとの間に深い絆を感じていた。それは言葉にはできないものだったが、彼らは互いに目配せをすると、微笑み合った。すると突然、空模様が怪しくなり始めた。どうやら天気が崩れてきたらしい。雨が降り出しそうだったが、彼らは構わず進んだ。
 やがて雨が激しくなり、土砂降りになった。雷鳴も轟く中、彼らは必死に馬を走らせていた。すると前方に小さな村が見えてきた。義経がつぶやく。
「あそこで少し休もう」
 弁慶とケンは同意した。そして村にたどり着くと、急いで宿を探した。だが既に日は暮れており、人通りは少なくなっていた。やっと見つけた宿に入ると、店主が出迎えた。
「こんな時間にようこそいらっしゃいました」
 店主は彼らを部屋へと案内してくれた。部屋の中に入ると、弁慶がため息をついた。
「今日は疲れたな」
 義経もうなずく。
「ああ、早く休もう」
 二人が荷物を整理していると、ケンが口を開いた。
「お前らってさ、なんで旅をしてるんだ?」
 義経と弁慶は顔を見合わせた後、答えた。
「世界を変えるためだ」
 それを聞いたケンは目を輝かせた。彼は身を乗り出して尋ねた。
「それはどういうことだ?」
「俺たちはこの国を変えたいと思っているんだ」
 弁慶が答えると、ケンはさらに興奮気味に尋ねた。
「お前たちは反乱軍なのか?」
「まあそんなところだ」と義経は答えた。するとケンは興奮した様子で叫んだ。
「俺も協力させてくれ!」
 義経と弁慶が驚いて彼を見つめると、ケンは語った。
「俺はもう逃げたくないんだ! この国を変えたいんだよ!」
 彼らは思わず笑みを浮かべた。そして弁慶が言った。
「お前ならきっと俺たちの力になってくれる」
 するとケンは嬉しそうにうなずいた。そして三人は固い握手を交わした。それから彼らはそれぞれの思いを語り合った。義経と弁慶がいかにこの国を変えたいと思っているか、ケンがいかにこの国を変えたいかということなどを話し合った後、その日は眠りについた。

 翌朝、彼らが目を覚ますと外には激しい雨が降り注いでいた。雷も鳴り響いており、外に出ることは困難そうだった。だが幸いにも出発の準備を整えているうちに雨は上がり、雲間から日差しが差し始めた。
「行くぞ」
 義経と弁慶が言うと、ケンも荷物をまとめた。そして宿を後にして村を出ると、再び歩き出した。途中、大きな川を渡る必要があったのだが、その途中で弁慶が言った。
「ここでお別れだ」
 ケンは驚いた表情を浮かべる。
「どうしてだよ?」と彼は言った。すると弁慶は落ち着いた口調で答える。
「俺たちにはやらなきゃならないことがあるんだ」と彼は言った。
 ケンはしばらく考え込んでいたが、やがて口を開いた。
「そうか、でもまた会えるよな?」
 弁慶と義経はうなずいた。そして彼らは川を渡ると、そこでケンと別れた。義経と弁慶は川沿いを進みながら、お互いに顔を見合わせた。
「まさかあいつと同じタイミングで、俺たちも国を変えるという夢を持つことになるとは思わなかったな」
 弁慶が言うと、義経はうなずいた。
「ああ、そうだな」
 二人は歩きながら会話を続けた。

「俺たちも頑張らないとな」と弁慶が言うと、義経はうなずいた。
「ああ、俺たちならやれるさ」
 義経は力強く答えた。そして二人は決意を新たにして歩みを進めていった。その道中で様々な困難があったものの、彼らはそれを乗り越えていった。そしてついに日本から逃げ出したあの山までたどり着いたのだった。
 山に入ると、そこはすっかり荒れ果てていた。かつては美しい自然に囲まれていたのだろうが、今では見る影もない状態であった。二人は顔を見合わせてから、さらに奥へ進んでいく。すると岩肌がむき出しになった山道を登っていった。そして山頂付近までたどり着くと、そこには大きな洞穴があった。
「ここは……?」
 義経がつぶやくと、弁慶は言った。
「ここは俺たちが逃げる時に使った洞窟だ」
 二人は懐かしさを感じながら中へと入って行った。すると奥から誰かが出てきた。それは義経の師匠鬼一法眼であった。鬼一法眼は二人を見て笑みを浮かべた。
「よく戻ってきたな」
 彼らは驚きながらも笑顔を見せた。そして鬼一法眼は言った。
「ここで出会ったのも何かの縁だろう、お前たちに少し話がある」
 義経と弁慶は顔を見合わせてから、うなずいた。すると鬼一法眼は口を開いた。
「お前はこの国の現状をどう思う?」
 突然の質問に驚いたものの、義経は答えた。
「どうしようもないと思います」と彼は答えた。すると鬼一法眼はうなずいた。
「その通りだよ」
 彼は話を続けた。
「この国は腐っている。表向きは民主主義を掲げていながらも、その裏にあるのは独裁だ。人々を騙し、搾取し続けている」
 彼は拳を強く握りしめた。
「私はこの国の現状を変えたいんだ」
 彼は義経と弁慶を見つめて言った。
「お前たちの力が私には必要なんだ」と鬼一法眼は言った。すると弁慶が尋ねた。
「具体的にはどうすればいいんですか?」
 鬼一法眼は真剣なまなざしで答えた。
「この国を変えるためには革命を起こすしかないだろう」
 彼は続けた。
「この国を変革し、国民が自らの力で国を動かすようにしなくてはならないんだ。それができる唯一の方法が革命なんだ」
 義経と弁慶はうなずいた。そして彼らは決意に満ちた表情で言った。
「やります、俺たちも協力します」義経は続けた。
「そのために私たちはここに来たのです」
 弁慶がさらに続ける。彼らは三人で拳を合わせ、互いに見つめ合った後、うなずいた。こうして若き革命家たちが生まれたのである。

 それから彼らは、行動を開始した。まずは武器を集めるため、近くの町へ向かった。そこでは銃や弾丸、その他様々な物資が売られていた。彼らは手分けしてそれらを調達した。
「こんなもので大丈夫なのか?」
 弁慶がつぶやくと、鬼一法眼が答えた。
「安心しろ、この程度で十分だ」
 そして一行は山に戻り、訓練を始めた。鬼一法眼は彼らに革命の戦略を教え込んだ。いかにして革命を起こすか、その具体的な方法や手順などを事細かく説明したのである。
 やがて準備が整うと、彼らは街へと繰り出していった。まずは彼らが反体制派の同志として認められる必要があったためだ。街中を歩き回り、人々に訴えかけたり演説を行ったりした。また各地で抵抗運動も展開した。彼らは常に緊張感を持ちながらも、冷静に行動していた。
 やがて彼らの努力が実を結び始め、民衆の支持を集め始めた。最初は小さな抵抗運動だったが、次第にその勢いを増していった。

 そんな中、ある夜のことだった。義経と弁慶が見張りをしていると、鬼一法眼が姿を現した。彼は険しい表情をしていた。
「どうしたんです?」
 義経が尋ねると、彼は口を開いた。
「お前たちは今すぐここを離れろ」
 二人は驚いた表情を浮かべて言った。
「なぜです?」
 すると鬼一法眼は厳しい表情で答えた。
「敵のスパイがこの辺りに紛れ込んでいるという情報が入ったんだ」
 彼はさらに続けた。
「このままだとお前たちの命が危ない。今すぐ荷物をまとめてここを去れ」
 しかし義経と弁慶は首を振った。
「俺たちは戦います、最後まで諦めたくないんです」
 鬼一法眼は険しい表情で二人を見つめた。そして深いため息をつくと、口を開いた。
「わかった、だが決して無理はするな」
 二人はうなずいた。それから彼らは急いで準備を済ませると、山へと向かった。その後、街の酒場でカウボーイたちと出会った。彼らは革命軍と行動を共にし、各地で戦い続けている英雄たちだった。
「君たちも戦うつもりなのかい?」
 カウボーイの一人が尋ねた。
「ああ、最後まで戦い抜くつもりだ」と義経が答えた。
 すると一人の男が言った。
「それはやめたほうがいいぞ」
 その男は白髪で白い髭を生やした老人だった。彼は険しい表情を浮かべながら言った。
「実は私の仲間がスパイだったことが判明したんだ」
 彼は話を続けた。
「その女スパイが情報を流していることがわかったんだよ」
 そして彼はため息をついた。
「私たちはここで撤退するつもりだよ」
 義経と弁慶は顔を見合わせた。すると老人は言った。
「君たちも早く逃げるんだ、いいね?」
 そして彼らは酒場を出て行った。義経と弁慶は彼らを見送ってから、自分たちも出発する準備を始めた。だがその時だった。突然、銃声が鳴り響き、酒場に銃弾が飛び交った。どうやら襲撃者が紛れ込んでいたらしい。彼らは急いで荷物をまとめると、山へ向けて走り出した。
 山を登りながら、二人は少しずつ仲間を失っていった。途中で脱落した者も多くいた。しかし二人はあきらめずに走り続けた。そしてようやく山頂付近にたどり着いた時には、すでに日が落ちようとしていた。
「ここが最後の隠れ家だ」と弁慶が言った。
「ああ、そうだな」
 彼らはうなずき合った後、洞穴の中へ入っていった。そこにはすでに鬼一法眼が待っていた。彼は言った。
「よくここまで辿り着いたな」
 義経と弁慶は笑顔で答えた。すると鬼一法眼は言った。
「もうすぐ夜がやってくる。それまではここで静かにしているんだ」
 義経と弁慶はうなずき、岩陰に隠れた。それからしばらくの間、静寂の時間が流れた。時折聞こえてくるのは風の音だけだった。そんな中、突然外から足音が聞こえてきた。その音を聞いた瞬間、二人は緊張した表情を浮かべたが、すぐに落ち着きを取り戻していた。鬼一法眼が何か話を始めたからだ。「いったい誰なんです?」と誰かが尋ねた。
「政府の役人がこちらに来ている」と鬼一法眼は落ち着いた声で答えた。するとまた別の人物が尋ねた。
「なぜ知っているんですか?」
「スパイを送り込んだのはこの私だからだ」
 彼は笑みを浮かべながら言った。
「そんな馬鹿な!」
 相手は驚きの声を上げた。それに対して鬼一法眼は答えた。
「私はこの国の変革のために行動することを決めたのだ」
 そして彼は懐から銃を取り出すと、それを彼らに向けた。
「もうこの国は終わりだよ、さようなら」
 彼は引き金を引いた。乾いた音が響き渡ると同時に、誰かが倒れたような音が聞こえた。
「これで邪魔者はいなくなった」と鬼一法眼は言った。そして彼は他の人々に向かって話し始めた。
「さあ、革命を始めようではないか」
 彼は再び銃を構えた。その時だった。突然、洞窟の外から大勢の足音が聞こえてきたのである。何事かと思って外を見ると、そこには政府軍の姿があった。彼らは武器を構えながら、こちらに向かって走ってくる。
「どうしてここが分かったんだ?」と鬼一法眼はつぶやいた。
 そして次の瞬間、政府軍が雪崩込んできた。彼らは一斉に攻撃を始めた。銃声が響き渡り、血が飛び散る。その場は戦場と化した。
 そんな中、鬼一法眼は再び銃を構え、引き金を引いた。銃弾は彼の頭を貫いた。その瞬間、彼はその場に倒れた。しかし同時に敵も一人また一人と倒れていった。それでもなお政府軍の攻撃は続いた。
 やがて銃声が止むと、辺りは静寂に包まれた。生き残った者たちは周りを見回した。そこには多くの死体が転がっていた。ある者は血を流して倒れ、またある者は恐怖に満ちた表情で横たわっている者もいた。そして生き残った者たちはその光景を見て呆然としていた。
「なぜこんなことになったんだろう?」と一人の男性がつぶやいた。すると別の男性が答えた。
「わからない、ただ言えることは一つだけだ」
 彼は深いため息をついた後、こう言った。
「俺たちは負けたんだ」
 こうして革命軍の戦いは終わった。人々は次々と街へと戻り、それぞれの家に帰っていった。義経と弁慶は疲れ果てた表情で山を後にした。二人が家に着くと、そこには仲間が待っていた。彼らは二人を温かく迎えた。そして祝勝会が開かれたのである。

 翌日、新聞やテレビで報道されたことで、この事件は大きく報道されることとなった。革命軍の一斉検挙や、政府の要人の死などが報じられたのである。それはまた新たな時代の幕開けを告げるものだったかもしれない。しかしそれによって多くの人々が悲しみや苦しみを味わうことになったのである。

『ウェスタン義経記』(完結)

【Van Halen - Can't Stop Lovin' You】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?