詩「にじみ絵」

ぬらした画用紙まえにして
さらさら絵具と太い筆
思い描くはきょう耳を
かすめていった言葉たち
どこかうるさい言葉たち

図書室にあるホラー小説
授業中、起きない友達
なぜか白紙で出されたテストを
採点しているめがねの先生
ノートにちらつく絵具の色と
にじむみたいに広がるきもち
電車のなかのおしゃれな学生
落ちないリップにアイライナー

いろんな言葉を聞いて集めた
なんだか余韻が残る耳
洗いながしてしまいたい
そんなきもちを紙にぶつける
赤青黄色のみっつの絵具
太い筆、画用紙におく
とたんにさらさら広がる色たち
広がりは読めないし、聞く言葉なんて選べない
「白紙で出すって、どういうことだ」
どういう理由があるのだろうか
赤がにじんで青がにじんで黄色がにじむ
「面白いよお、この小説」
オレンジが、むらさきが、緑がうまれる
だったら読んでみようかな
色のさかいめなくなって
一枚の絵ができあがる
思い通りにならなくて当たり前
描く絵はまいにち違ったものになる
いろんな言葉を聞いて考え
きょうの私ができている
やっぱり耳を洗いながせやしないなあ
きょうの絵は、やはりきのうとは違ってた

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