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発覚(1)

社会人にとって、春先は健康診断の季節。

……かどうかはわかりませんが、ともかく私にとってはそうです。前の日から夕飯を早めに取り、午後9時以降は水分も取れないのでその前に気が済むまで水を腹に注ぎ込み、朝早くから病院に出かけ、まっずいまずいバリウムを飲んで散々転がされたあげく下剤で1日ブルーになる、あの健康診断です。正確には「生活習慣病予防検診」。

適当に、いつものように、そうやって終わるつもりでした。そのはずでした。


なぜか、診察室に呼ばれました。2回目です。1回の検診で2回診察室に呼ばれたことは今までありません。診察室に入ると、最初に乳房を触診してくれた女医と、机の前にマンモグラフィーの写真。

「胸がちょっとおかしいんですよ。なので超音波でも調べたいんですけど、良いですか?」

その時の私の気持ちを包み隠さず申し上げると、こうなります。

「ドラマの通りや!やっぱマンモの次はエコーなんや(ワクワク)」

はい、こんな奴です。いや驚かないってこともないんですが、ないはずなんですが、この時は8割くらいワクワクだった気がします。ちなみにこの時放送されていたドラマが「ラジエーションハウス」。3話にちょうど乳がん絡みのストーリーがあったところでした。

そして胸のエコー検査。診察室に呼ばれる前にバリウム転がりも済ませて、3度目の診察室。「うーん、やっぱりおかしい」

まじすか! 次は何ですかCTですかMRIですか(ワクワク)。

「もう組織取っちゃいましょう」

なんですとっ。

その場でベッドに寝かされ、タオルを体の下に挟み込まれ、超音波で位置を確認しつつ、なにやら大きな針をぶっすり……だったようです。見てません。若干パニクって終始目をつぶっておりました。なにせ急展開。いやこれ、普通は後日とかになるんじゃないの。そんなほにゃほにゃした所に針を刺されたらさすがに怖いし、実際割と痛いし、あとで麻酔は効いたらしいけど針が体の中を動く感触は実に気持ち悪いし、ガッチャンガッチャンとえらい音がするし。どんな機械だったのかは、家に帰ってからWeb検索して確認しました。

そして、いくら私が能天気でもここまでくれば察します。ただの健診でその日のうちにここまで検査するってことは、これはもう見るからに、ほぼほぼ、ほぼほぼなんだろうと。

不思議とショックとかそういうのはあまりなかったのですが、実感がないだけなのか、面白がるのが勝っているのかは自分でもわかりません。

結果は1週間後、おそらくその時に大学病院へ紹介状を書くことになるでしょう、とのこと。


ちなみに、胸のしこりは女医も最初の触診ではわからなかったようです。「あー改めて触ったらあるねえ」と。自分で触ってみても、左右比較して初めてちょっと何か余計にあるくらいの感覚で、比較しないと絶対にわからない。胸のしこりってなんか、こう、もっとコリコリというかゴリゴリというか、そんなイメージでした。私は正直乳腺と全く区別つきません。

胸の傷口を山のようなガーゼで押さえつけられ、窓口では健診代の他に2万以上請求されあわてて近くのATMへ走り、いつ頃どのくらい入院になるかなあ仕事大丈夫かなあと思いながら家に帰ると、なぜか病院から電話が。

「血液検査の結果が早めに出ましたので、急ですが明日来院していただけますでしょうか?」

早いな!と思ったら……。この話、何とここでは終わりませんでした。

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