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現金・発生・実現主義ってなに?

ふと気になって、青色申告特別控除の要件を調べてみました。
青色申告特別控除は、青色申告者の特典のひとつです。


青色申告特別控除の要件とは?

55万円の青色申告特別控除

(1)不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
(2)これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに当該申告書を提出すること。

国税庁

65万円の青色申告特別控除

(1) 上記「55万円の青色申告特別控除」の要件に該当していること。
(2) 次のいずれかに該当していること。
イ その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること。
ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

国税庁


現金主義とは?

さて、この国税庁の文言の中に気になる一文を見つけました。

現金主義によることを選択している人は、55万円の青色申告特別控除を受けることはできません。

つまり、65万円の青色申告特別控除も受けることはできないということですね。

この「現金主義」とは何でしょうか?
現金主義とは、現金の受け渡しに基づき会計処理をする方法のことです。

商品引渡時 : 仕訳なし
後日入金時 : 現金 XXX  売上 XXX

商品受取時 : 仕訳なし
後日支払時 : 仕入 XXX  現金 XXX

現金には預金も含まれ、お金の動きがなければ帳簿には現れません。
売掛金や買掛金、未収金や未払金、これらのお金の動きがない取引は計上しないのです。

メリットは会計処理が簡単なことや現金の動きと連動していること、デメリットは正しい期間損益にならないことや未決済項目が把握できないことです。

現金主義による会計処理は、要件の「複式簿記」に該当しません。
青色申告承認申請書で65万円(55万円)の承認を受けるためには、現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳・預金出納帳・総勘定元帳・仕訳帳にチェックを入れますが、ここからも掛取引が前提となっていることがわかります。

では、どのような会計処理なら、複式簿記に該当するでしょうか?


発生主義・実現主義とは?

複式簿記は「発生主義」と「実現主義」による会計処理であることが求められます。

発生主義とは、現金の受け渡しに関係なく、取引の発生に基づき会計処理をする方法のことです。
費用の計上基準で、正しい期間損益を計算するため、棚卸在庫と売上原価・前払費用と未払費用・減価償却費などを使用します。

実現主義とは、収益が実現したときに会計処理をする方法のことで、発生主義よりも厳しく定められています。
収益の計上基準で、商品を販売した(引き渡した)日やサービスを提供した日が計上日となります。

売掛金や買掛金は、この発生主義や実現主義で認識されるものなのです。

簿記を学ぶと収益・費用と現金の動きが連動しないことは当たり前のように感じますが、知らなければ不思議に思うかもしれませんね。


現金主義が認められる青色申告とは?

前述したとおり、現金主義によることを選択している人は、55万円の青色申告特別控除を受けることはできません。
逆にいえば、10万円の青色申告特別控除なら受けることができます。

現金主義による所得計算の特例を受けるための手続
所得税の青色申告承認申請(兼)現金主義の所得計算による旨の届出手続

前々年分の所得金額が300万円以下の小規模事業者であれば、届出書を提出することで現金主義が認められます。
提出期限がありますので、どうしても簡単な会計処理がいい!という方は、お早めにどうぞ。

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