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読みオワタ『図解でわかる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて』田渕直也

本書を読み終わって、さっそく Excel でランダムウォークするダミーチャートを生成してみた。

なるほど、生成したチャートの右半分を隠して、これがとある通貨ペアのとある日時のチャートです、テクニカル分析してトレード戦略を立ててください。って言われればみんな適当な水平線やトレンドライン/チャートパターンを認識して IF THEN プランがたてられそう。


詐欺師っぽい【予想】𝕏weet(イメージ)

隠していた右側を表示して答えあわせだ。

詐欺師っぽい【爆益】𝕏weet(イメージ)

ランダムウォーク生成機から無限にヒストリカルデータを生成して、テスターツールに読み込ませて【手法】の訓練を積めば億トレーダーになれるかも!?!?本書は、そはなれないと言います。ダミーチャートはランダムだし、相場もランダムなので。人間は1/2で売り買いする猿にも勝てない。

また、人間にはランダムウォーク理論で生成したダミーチャートと、実在するマーケットとのチャートは区別がつけられない。実在するマーケットは「ほとんど」ランダムウォークだ。

ランダムウォーク世界では…

  • ファンダメンタルズ分析もテクニカル分析もすべては無意味

  • アクティブ運用はパッシブ運用に勝てない

  • サルがスーパー投資家に

  → 投資理論は必要ない(すべては運頼み)

現実の相場はどの程度ランダムウォークなのか…

  • 価格変動が正規分布に近い

  • ランダム・シミュレーション相場と見分けがつかない

  → マーケットの大部分はランダムウォーク

【つまり】マーケットにわずかに残る "ランダムではない部分" に焦点を当てない限り、期待リターンを高めることはできない (p55)

「トレーダーの9割が利益を出せずに退場する」って出所不明の格言は、ここから生じている。市場はランダムなので、全員手数料負けして退場する仕組みになってる。「ポジポジ病」が必敗なのもこれだ。でも、𝕏 や Youtube にいる勝ってる風のトレーダーが本当に実在するのなら、ランダムじゃない何かがあるはずだ。

一体…何が…

ここでいったんランダムウォークの成立の条件を整理すると

P38, P174を元に作成

※情報コストがゼロ=相場を変動させうる情報は、瞬時にマーケットに広がる

マーケットがこの条件を満たすと、相場変動の分布は正規分布に従い、冒頭のランダムウォークチャートのようになる。この考え方を「効率的市場仮説」と言う。ランダムウォークなチャートを形成している時、市場は「効率的」だと表現される。

効率的なマーケットにおいて、上表「ただし……」の列に示した要因によりランダムじゃない瞬間が発生しうる。つまり富の源泉は市場の「非効率」に存在する……!!ドユコト……

現実の市場は「かなり効率的だが、一部の人間心理の偏りから生まれる比効率性がわずかに存在する」(p174)

そこから得られる投資機会は以下の3つだ。

(A)【ランダムではないトレンドとミーン・リバージョン】何かしらの理由で発生した市場の「非効率」が生み出す「予測可能」なトレンド

(B)【リスク・プレミアム】リスクを厭うという人間の心理構造から生まれる利回り

(C)【アービトラージ】マーケットに存在する「歪み」などから金を抜く

(B)はいわば普通の投資本で散々言われてる個別株のスクリーニング手法だったり、素人はだまって全世界か米国全体を買っとけ(VTやVTI)っておなじみの話なので省略。

(C)は、イールドカーブの歪みや、市場間の価格乖離などから利益を得るやつ。2023年前半だったら「NASDAQを買ってDAWを売る」ペアトレード(ロング・ショート戦略)とか。しかし資金量の大きな大口の手法なので個人ではうまみが少なすぎる。個人でボロモーケするには、よりエッジの効いた特殊な歪みをみつけ高速取引BOTを仕込むなど、難易度が高くて秘伝になりがち。株だと下手すると違法になったり、FXだと業者から口座凍結を食らったりするので、もろもろがばがばな仮想通貨界隈の「かしこいやつ」(憧れるぅ!)が得意とする手法。

(余談)仮想通貨界隈で「Terra(LUNA)ショック」が進行していたとき、とある仮想通貨取引所のデリバティブ価格がマーク価格より激しく下方に乖離していて、システム上ロングの精算価格が異常に上がる現象が発生していた。それに気づいた人たちが、ぴゅっと下ヒゲをつけたときハイレバでロング入れて一瞬の反発での利確を比較的安全に繰り返せて、億り人が量産されたみたいな事案を指をくわえて見ていました。これは一種の(C)かな……。

やっぱ個人が "短期投資" のFXや仮想通貨などハイリスク市場で収益を狙うなら(A)を克服しなくちゃならん。

(A)の『ランダムではないトレンド』とは、見解が分かれていて多くの投資家が結論を出すには至っていない認識(や仮説シナリオ)が、少数の投資家から多数の投資家に伝播するときに生まれるトレンド。また、そのトレンドの「行き過ぎ感」から反転するミーン・リバージョン。

は思い当たるふしがたくさんあるのでは?ドル円相場とかで。黒田日銀終盤では

  • YCC修正の可能性が投資家のあいだでじわじわと広がる
    →じわじわと非効率に広がるので円高方向のトレンドが発生

  • 日銀政策決定会合でYCC修正なし
    →一瞬で効率的に広がる確定情報なので大きく円安へ回帰

って攻防がなんども繰り返されていたり。直近2023/7月は事前のリークが二段構えになってて複雑な動きでしたが、市場参加者の迷いから折込に時差が発生する局面は注視していきたい。

ところで前に読んだ『トレンドフォロー大全』では、効率市場仮説を否定した上で、つまり非効率なトレンドがあちこちに発生するから、それを見つけて乗りこなせって事例を列挙している。とも言えます。

まとめると、テクニカル/ファンダメンタルズ分析から未来を予想してもランダムな波に飲み込まれて無限に負け続けるので、予測可能なトレンドの発生を見て順張りするか、トレンドの発生を見届けて逆張りのミーン・リバージョンを取りに行くのが唯一の勝ち筋だ。

個人的な見解ですが、値動きを見て勝ってるトレーダーは、年がら年中チャートを見ていて「ランダムじゃない値動き」の発生を無意識で会得してると感じている。何気ないランダムウォークの中でも、非効率で感情的で非合理で歪んだ値動きがちょいちょい起こる。ちょいちょい起こったときに大衆を苦しめ負けさせる方向にエントリーするんだ!!これで億り人ぉぉぉぉ!!!!

口で言うには容易いですがここはほんとスポーツの世界なので実践で学ぶしかあるメーってコト……。

ちなみに無能烙印を押されたテクニカル分析ですが、未来の予想には役に立たなくても過去に起こった非効率の分析など活用場面がいくつか述べられているのでご安心を。

本書では(A)、(B)、(C)の具体的・実践的な詳細がもろもろ書かれているのでご興味があればチェックよろー。

ソンジャーネ!!

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