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加湿空気清浄機くんと僕
昨年末、冬場の乾燥に耐えかねて加湿器を買うことにした。
せっかくだからいいものをという思いとケチな性格と冬のボーナスと他の欲しいものとが複雑にせめぎ合った結果、空気清浄機の機能も付いた2万円程度のものに決めた。
加湿空気清浄機の中では最も手頃な値段のものだったが、流石はシャープ製、いい買い物だった。
空気の汚れや湿度を感知するセンサーが付いていて、自動で強弱を調整してくれる。よくある加湿器みたいに水蒸気が出るタイプではないためビジュアル的には加湿を感じられないのがやや寂しいが、タンクいっぱい(2L弱くらいはあると思う)の水が数日でなくなるのを見ると、ちゃんと働いてくれていることを実感できた。
このように、値段を考えると申し分ないくらいの高機能なのだが、一つだけどうしても気に入らない点があった。
食費の節約がてら、食事は簡単に自炊をして済ませることが多い。下手くそながらにレシピとにらめっこしつつ作る料理は、自分で食べる分には十分満足できる。
だけど清浄機くんはそうじゃないらしい。
できあがった料理をテーブルに運んでいくにつれ、静かだった清浄機くんがうるさくなる。空気の汚れを示すモニターは「きれい」の緑から、「少し汚れている」のオレンジに。さらに食事を続けているとモニターは最も「汚れている」を表す赤になり、清浄機くんはここぞとばかりにエンジン全開、唸り声を上げてフル稼働し始めるのだ。
ある意味これも高機能の証明と言えるのかもしれないが、それでも毎日のようにこれをやられると流石に気分が悪くなるというもの。暗に料理が臭いだのメシマズだの言われているような気さえしてくる。
食事中はテレビを見ることが多いのだが、フル稼働する清浄機くんはテレビの音をかき消してしまう。しばらくは意地でそのままにしているが、大抵我慢できず静音モードに切り替える。すると清浄機くんは不満そうに赤々とモニターを光らせたまま、すっと大人しくなる。静かにはなっても、料理への文句を強引に抑え込んだかのようでなぜか負けた気分になる。それがまた納得いかない。
そんなことをずっと根に持ち続けていたある日、たまたま清浄機くんをつけたままでソファにファブリーズをしたことがあった。すると。
清浄機くんはみるみるうちに出力を上げ、ついにはフル稼働をし始めたのだ。除菌消臭するためのものに過剰反応するなんてアレルギーみたいだ、とちょっとおもしろかった。と同時に気づいた。
もしかして、僕の料理に対する反応もそうなんじゃないか、と。
僕の料理は清浄機くんにとってファブリーズと同格なのではないか、と。
そう考えた途端、清浄機くんと和解できるような気がしてきた。
それからしばらく。いつの間にか学習したのか、清浄機くんは僕の料理に反応しないようになっていた。やるじゃん、と僕はつい先日、いつもよりも念入りにお手入れをしてあげた。
するとどうだろう。また食事をする度に清浄機くんはフル稼働するようになったのだ。
どうやら、お手入れ不足でセンサーの感度が悪くなっていただけのようだった。
今までの扱いに抗議するがごとく唸りを上げる清浄機くんを見て思う。
まだ、彼とは和解できそうにない。
続いてしまったvs家電シリーズ
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