カスタマージャーニー

<カスタマージャーニーの目的と効用>
カスタマージャーニーはダイナミックなPDCAサイクルを確立することを期待して作成される。
期待のひとつは、カスタマーの「きっかけから購入」までを旅程(ジャーニー)として分割し、その間の態度変容・感情変化を時系列に記述することで消費者心理の動きをわかろうとすることである。
もうひとつは、タッチポイントのそれぞれに自社のマーケティング施策が届いているか、ヌケはないか、それぞれの施策の効果が測定ができることである。こうしてPDCAサイクルを回し続けられる。
<カスタマージャーニーのフレーム作り>
まず、下の表を参考に作成し、自分の当該製品に不要な旅程の削除、必要な旅程の追加を行う。
同時に表側の項目もB2CかB2Bか、また、商品ジャンルによっても違うので事情にあわせてカスタマイズする。
作成作業を始めてからでも追加・削除・修正は行える。
<ジャーニーの作成のためのコグニティブインタビュー>
フレームができたら1on1インタビューを実施し、書き込んで行く。フレーム構成が完璧ならFGIでも描ける。
通常のインタビューでも良いがコグニティブインタビューがカスタマージャーニー作成の最適な方法である。
コグニティブインタビューは逆順想起法と悉皆思い出し法という2つの特徴を持っている。目撃者の目撃証言を無意識のウソや脚色を排除して「起こった事実」をそのまま精確に捉える犯罪捜査の方法論が機嫌である。
逆順想起とは、過去(きっかけ)から現在(購入)までを順に聞くのではなく、結果からタイムラインを逆にたどる方法である。
具体的に下表で言うと、まず「◯◯をいつ、どこで、いくらで買いましたか」と質問する。次に「買うと決めた直前のあなたの行動は?」と進めて最後にきっかけの場面をインタビューする。
もうひとつの「悉皆思い出し」とは、「関係ないとあなたが思っていることでも全て、思い出した話してください」とのプロービングのことである。
下表の冷蔵庫のジャーニーでいうと「そういえば、あの時、義母から電話でパナソニックを勧められた」という体験が「ま、今回は関係ないか、強く勧められなかったし、いつも義母の意見は聞くだけだから」と発言されないような状況を意識的に破ってもらって話をしてもらう。
<逆順想起と悉皆思い出しの理由と効果>
逆順想起の利点は、自分の記憶を述べるときに「解釈装置モジュール」が働きずらいことである。起きたことを順に記憶再現すると、記憶の合理化、意味付けのバイアスが大きい。つまり、無意識のうちに、自分でストーリーを作ってしまうのである。
これが無意識のウソ、脚色であり、人間の記憶想起が生物学的にもつバイアスである。事件、事故の目撃者もフィルムで再現できるような記憶想起はできず、必ず自分で、あるいは捜査官が作った物語に沿った記憶を話すだけでなく、それが事実であるとの信念に変わってしまうのである。
悉皆思い出しも「解釈装置モジュール」の発動を防ぐ。対象者本人が無意識のうちに関係あるなしを判断してしまい、破綻のないストーリー(ジャーニー)を作ってしまうと重要な(かもしれない)情報がモレることになる。
ただ、マーケティングリサーチで悉皆思い出しのインタビュー方法は確立されておらず、やってみてもうまくいかないことが多い。人の記憶にはエピソード記憶と意味記憶の区別があるが、カスタマージャーニーはエピソード記憶を聞くので逆順想起や悉皆思い出しができるが、意味記憶はその構造上、逆順想起ができない。
<PDCAを回す>
カスタマージャニーの最終旅程に「情報発信」がある。
これは、本人の次のきっかけにつながることもあるし、他の人の「情報収集」プロセスの資源になる。

冷蔵庫のカスタマージャーニー



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