イントロダクション

前回、「聞き出し」と「行間観察」をキーワードにモデレーター話法の考え方の基本を述べた。
今回はインタビューの出だし、イントロダクションの話し方を具体的に述べる。
<ラポール形成とアイスブレイク>
マーケティングインタビューの教科書に、他ではほとんど使われないラポール形成という表現が出てくる。
ワークショップやグループワークで言うアイスブレイク、ウオーミングアップと機能は同じだが、めざすポイントが少し違う。
アイスブレイクは固い雰囲気をアナーキー状態にすればよいが、ラポールは、信頼関係で結ばれた自由な会話空間創出をめざす。
これからみんなでワイワイやろう、おしゃべりしようはアイスブレイクで、モデレーターは対象者の全てを聞くいて受け止め、対象者はできる限り自分の真実を語るというお互いの了解形成がラポールなのである。
対象者の余計な緊張感は解放するが、完全にリラックス、弛緩させてはインタビューは成立しない。
対象者自身にはテーマに関して一定の緊張感を保ってもらうようにする。
<イントロダクションのやり方>
モデレーターは必ずイントロダクション部分(数分)のロープレを事前に数回行う。内言によるロープレでよい。
少し大きめの声で、ゆっくりしゃべる。活舌に気を付けて、かまないように、「エー、ウー、アー」などは使わない。
FGIの場合は対象者全員に視線を送る。1on1の時も対象者を見て話すが見つめることはしない。
テーマをはっきり、正確に告げる。クライアント名やインタビューの都合で伏せたいこと以外は、これからやる、話すことを隠さずに話す。
個人情報の扱い、所要時間、対象者の秘守義務も正確に伝える。
以上、イントロは高座に上がった落語家のまくらと同じでその後の作品のデキを左右する。まくらといっても笑いやオチはいらない。
<スクリプト:実際のしゃべり方>
本日はありがとうございます。今日はポッキーを買っている方に集まっていただいてチョコ菓子などお菓子について皆さんで自由に話し合ってもらいます。何を言ってもいいのですが、他の人の発言を頭ごなしに否定するようなことは避けてください。私はメーカーや広告会社ににんげんではありません。市場調査を専門にやっている人間ですので、こちら絵の気遣いは必要ありません。また、自分の話をまとめようとしたり、前後の関係を意識する必要もありません。思ったときに思ったことを話してください。時間は2時間でおわります。個人情報、プライバシーは守られます。ここいらっしゃったことも含めてお名前や発言内容が外に出ることはありません。我々はレポートを描く必要があるので録音録画、記録を取らせてもらいますが、これも処分してしまいます。最後に今日の集まりことは口外しない、特にSNSに書き込まないでほしい。
<モデレーターの立ち位置>
上の例は消費財テーマで消費者が対象だったが、対象者が専門職(医者など)の場合はモデレーターは医者ではない、製薬会社の人間でもないので専門知識は不足している。と先に断る。B2Bの場合は勤務先の秘守と業界知識の不足を断る。
UX調査のコンテクスチュアルインクワイアリーでは対象者をその分野の「師匠・名人」あるいは開発メンバーのひとりと想定することがある。


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