「晴れ風」と凱風快晴

4月2日にキリンがビールの新定番と銘打って発売した「晴れ風」。
このネーミングの背景をリバースエンジニアリング的に探り、マーケティング的批評を試みる。
パッケージデザインとネーミングだけを頼りに振り返る(CMその他は参考にしない)。
<晴れ風のコンセプトをリバースする>
特徴は水色のベースカラーに「晴れ風」が白抜きであることであろう。この点だけ見ればビールではなく清涼飲料のデザインといえる。
上部の金色の聖獣マークと中央を横切る金地に黒文字の「KIRIN BEER」を大きくデザインしてイメージをビールジャンルに引き戻している。
ここからは「天気の良い日の昼間に飲むビール」とのシーンが浮かぶ。子供は清涼飲料で満足するが大人はしっかりした味わいのあるビールをたしなむ。だから、これは酔うためのものではない。
以上はラガー、一番搾りと棲み分けできることを意味するがニッチ過ぎる心配がある。さらに「秋味」を考えると春から夏までの季節限定品にされる危険がある。とにかく夜の飲み屋でこれが出てきたら少し引くし、「晴れ風ください」は明るい飲み会でしか使えないだろう。(そんなことない?)
<晴れ風のネーミング分析>
晴れ風とは大胆なネーミングである。たぶん若い世代のしかも女性が入ったプロジェクトだったと想像できる。
晴と風の間に「れ」のひらがなを入れた理由、晴れも風もビールより清涼飲料イメージが強いコトバでそれを2つも重ねた理由、パッケージの地色が決まった後のネーミング開発だったか、など聞きたいことはたくさんある。
晴風でもはれかぜと読ませることはできるし、ひらがなを入れるより力強い表現になる。炎天下や強風でなければ晴れも風も柔らかい触感をもつコトバである。晴れも風もパッケージの地色とフィットしている。
話が飛ぶが、晴れと風からは「凱風快晴」が連想される。この絵そのままをパッケージに使う案はでなかったのか(出ないだろう!)。初夏に相模湾から吹く強い風と太陽を受けて赤く輝く富士を大胆な構図(右をカット)で描いた北斎の傑作である。
(朝日があたったところとの赤を解釈する説があるが、雲が白いままであることなどからこれは昼近くの太陽と考える。:余計な話)
さらに良寛の「天上大風」のおおらかさをパッケージに入れたらどうなるだろう、など、このネーミングはおもしろい。
ちなみにChatGPTに和文のビールブランド名を上げさせたら「清風、青雲、春露、純麗、澄光、露草、翠雨、白波、雪解、涼音」だった。
最初の「きよかぜ」でもいいのか、良くないのか。
<晴れ風はヒット商品になるか>
ネーミングやパッケージよりも味が重要なのはいわずもがなである(飲んでない)。
マイルドな口当たりと爽やかな喉越しを想定しているが、アルコールが5%であることが予想を裏切ってしまう。
スーパードライに3.5%のクリスタルが出たことも考えると、この新製品開発のプロセスはいろいろな齟齬や葛藤があったのではないだろうか。
(スパードライクリスタルが売れてるかどうかは知らない)

KIRIN「晴れ風」
凱風快晴
良寛





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?