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ダイレクト・リスティング

こんにちは。
4/14にコインベース(ティッカーCOIN)がダイレクト・リスティングにより上場予定。その上場手法について記事にしました。

はじめに

 米株で最近増えてきた新規上場にダイレクト・リスティングがある。日本では1999年に事例があるがあ、それ以降はない。
 また、米国ではダイレクト・リスティングのほか、SPAC(特定買収目的会社)を介した上場手法も注目。

ダイレクト・リスティングとは

 「新株を発行しないで上場」すること

 さて、上場によるメリットは「資金調達」です。その他にも様々なメリットがある。最近、ダイレクト・リスティングにて上場した企業があり、音楽ストリーミングアプリを運営する「Spotify」、ビジネスチャットツールを提供する「Slack」など。

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 両者株価チャート(月足)。スラック(slack)は昨年末にセールスフォースに買収、以降は$40-42のレンジ相場となっている。

上場とは?

株式を証券取引所(市場)で自由に売買可能にすること」です。
 ダイレクト・リスティング(直接上場)も全く同じで、市場で自由に売買できる。違いは上場までの手順。ダイレクト・リスティングは、新株を発行しません。既存株式のみ売り出します。通常上場する場合、

1 上場予定企業が、投資銀行を雇って新株を引き受けてもらう
2 ロードショーと呼ばれる投資家向けに株式の売り出し価格を決める

など複雑な手続きを踏む。ダイレクト・リスティングは、新株発行をしない。いきなり株式上場することができる。
 従って、上述の新株を引き受け先(主幹事証券)に対する新株発行の手続きをせず、当然ながら新株の発行条件を決める必要もない。

ダイレクト・リスティングの利点・欠点

 既に利点の一端について述べましたが、利点・欠点を整理。

【利点】
1 コストがかからない
2 ロックアップ期間が設定されない
3 株式の希薄化が起きない

 通常の上場では、主幹事証券を決定に多額の手数料が必要。一方、ダイレクトリスティングでは新株発行がなく、手数料は不要。更に、通常の上場において大株主は上場後の一定期間(ロックアップ期間:通常180日位)は市場での株式売却ができない。ダイレクト・リスティングはロックアップ期間がないため、創業者含めベンチャーキャピタルは通常の上場よりも早く株式を売り、利益を得ることが出来る。
 最後に希薄化。上場前に投資家が保有する株式に対し、新株が発行されることになる。当初からの株主の保有率が相対的に低くなる。これを株式の希薄化と言い、ダイレクト・リスティングでは、新株発行がないので希薄化しない

【欠点】
1 資金調達ができない
2 株価の流動性低下

 上場目的は「新たな資金調達」にある。上場予定の企業は、投資家の出資を受けており資金はある。しかし、更に資金調達をするための手段として新株発行はできない。ダイレクト・リスティングは資金調達は「自己株」の売却によるほかない。
 次に、流動性が低下。厳密にはその可能性があるということ。知名度が低などのほか、市場に流通する株式が多ければ流動性が高まる。しかし、新株を発行しないため自ずと流動性は限定的。流動性は一般投資家への魅力となるため、流動生が低いことは欠点となる。

なぜダイレクト・リスティング

 今年3月の同じ時期にIPOした2銘柄、クーパンとロブロックスで比較。

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 上の2銘柄、クーパンは主幹事にゴールドマン・サックスなど4者。一方、ロブロックスはダイレクト・リスティングにより上場を果たした。流動性の観点からは、クーパンは上場直後は比較的高値で取引。今は、高値から約25%下落した水準で取引されている。ロブロックスは、初値の$65近辺のレンジで推移。この2銘柄は上場前から注目された。銘柄により、売買が成立しない場合もある。
 ここで、上場目的を整理します。

・資金調達により新ビジネスを立ち上げたい
・新規上場で知名度を上げたい

という狙いを持るはず。上述のSpotifyは、上場前にこの2つは既にクリア。上場前に約2,800億円の資金調達も完了し、音楽ストリーミングアプリの知名度も世界規模であった。

 Spotifyはコストがかかる一般的なIPOをする必要はなかった。

 ダイレクト・リスティングは、従来IPOとは違う目的があると感じる。

 ベンチャーキャピタルを含めた投資家に対する株式売却の機会を与え、利益を獲得の機会を付与する?

こう考えられる。既存の株主への恩返し。上述のスラック(slack)は、19年6月に上場し、初日は48.5%も急上昇し、一時は参考価格を6ドル上回る42ドルまで上がりました。同様にサービス利用者は800万人を超えており、世界的に知名度が高かった。

 昨年9月に、パラアンティアテクノのロジーがダイレクトリスティングで上場するなど、まだまだ活況です。ちなみに、日本におけるダイレクトリスティングで上場したケースは1999年が唯一だそうです。