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「PERFECT DAYS」を観て家に帰る、完璧な一日

丁度東京駅で用事があったので、日本橋の映画館で話題の「PARFECT DAYS」を観に行った。事前に情報を入れずに行ったのがよかった。映画を観終わったあとのなんとも清々しい読後感(他に言葉が見つからない)は、やはりヴィム・ヴェンダースだなあと思った。

若い頃に大好きな映画監督だった。「パリ・テキサス」「ベルリン・天使の詩」はリアルタイムで夢中になった。深夜テレビでやっていた「都会のアリス」を録画したVHSテープを持っていて、何度も見た。音楽好き、ロック好きの監督だったから、余計に好きになったのだと思う。パリ・テキサスのサントラはライ・クーダーだし、ライ・クーダーとは「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」も作った。「ベルリン・天使の詩」ではニック・ケイヴ&バッドシーズが演奏していたし、その続編にはルー・リードも出演していた。

何かのインタビューだったか、ヴェンダースがベルベット・アンダーグラウンドが好きで、その最後のアルバム「Loaded」に入っている「ロックンロール」という曲(彼女はロックンロールに救われたんだ、という歌詞)を引き合いに出して、まさに僕も彼らの音楽に救われたんだ、と語っていた。

だからこの「PERFECT DAYS」もいかにもヴェンダースらしいなと思った。劇中の挿入歌もベルベットの「ペイル・ブルー・アイズ」、ヴァン・モリスンの「ブラウン・アイド・ガール」、キンクスの「サニー・アフタヌーン」など、イントロクイズなら一瞬で当てられそうな、お馴染みの曲ばかり。嬉しくなってくる。ドラマで重要なエビソードでもある役所広司演じるトイレ掃除人の主人公のところに家出して転がり込んでくる姪っ子役の名前が「ニコ」という。当然ベルベット・アンダーグラウンド・アンド・ニコから名前をもらったのだろう。ファム・ファタルだということかな。

偶然だが3月2日はルー・リードの誕生日なんだそうだ。SNSでは誕生日に因んでいろんな投稿が流れてくる。その中で驚いたのがこれ。なんとキース・リチャーズが「ウェイティング・フォー・ザ・マン」をカバーしている。しかもかっこいい。

この「PERFECT DAYS」もそうだが、ヴィム・ヴェンダースの映画は、人への眼差しが優しい。もう少し限定すると、おじさんへの眼差しが優しい。だから映画を観た後気分がいいのだろう(僕のようなおじさんにとっては)。
役所広司が毎朝仕事に行くためにボロアパートの玄関の扉を開けて空を見るとき微笑みを浮かべる。夜寝る時に一日の出来事が淡い光と影になって走馬灯のように画面を駆け巡る。アパートの向かいのおばさんが道を箒で掃く音で眼が覚める。東京が舞台で日本人しか出てこない映画なのに、そういう細かな演出がいかにもヴェンダースっぽい。

最後にルー・リードの名曲「Perfect Day」特集。
なんとアル・グリーンがカバーしている。

こちらはなんとオペラ歌手のパバロッティとデュエットしている。

すごいのを見つけた。Youtubeではボノ、ドクター・ジョン、エルトン・ジョン、デビッド・ボウイ、デュラン・デュランというタイトルになっているが、それ以外にも脈略もなく沢山の有名人が出てきて代わりばんこに歌っている。BBC制作ですごいお金がかかっていそうだが、映像の趣味も悪いし、何かの冗談みたいだ。ポーグスのシェインやルー・リードの元カノのローリー・アンダーソンも出てくる。トム・ジョーズまで出てくる。

デュランデュランもカバーしているんだな。

まとまりがつかないので、最後は映画「PERFECT DAYS」のエンディングロールで流れるピアノバージョンで締める。ピアノはパトリック・ワトソン、というアメリカ生まれのカナダ人シンガーソングライターが弾いているのだそうだ。

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