見出し画像

テストマッチ

最近、サッカーや野球でよく「テストマッチ」という用語を見かけます。それを見るたびに激しくモヤモヤするのだけど、その理由を以下つらつらと記していきたい。

「テストマッチ」はそもそもラグビー用語です。それが他競技に持ち込まれ、捻じ曲げられて一般化しました。(※クリケットでも「テストマッチ」の用語は用いるけれど、日本への流入はラグビーからでしょう)

ラグビーユニオンは1995年のオープン化(プロ解禁)までアマチュアスポーツでした。プロラグビーもあったけれど、それは「ラグビーリーグ」という13人制の競技です。言ってしまえばユニオンと仲違いした兄弟(いわばプーマとアディダスの関係)です。そしてユニオンは1987年までワールドカップが無かった。下記に述べるような事情で、そういうフォーマットをヨシとしていなかったからです。

繰り返しますがラグビーは「ユニオン」です。関東の大学ラグビーも対抗戦とリーグ戦に別れています。ユニオン、対抗戦と「リーグ」はちょっと違います。

ユニオンは対戦相手は自分で選びます。リスペクトのできる相手と1対1の関係性で向き合い、試合にとどまらず人生の仲間になる……くらいの感覚です。(そもそもラグビーはアフターマッチファンクションが「本番」です。ゴルフと同じように競技は手段で社交が“目的”くらいの意味合い)

関東大学対抗戦グループは「1対1の対戦」が結果として積み上がったグループです。だから慶應はなかなか帝京と試合を組まなかった。今はAグループとBグループに別れて、実質的に「リーグ」になっていますけど(※帝京は早稲田OBが指導者で、その伝手で対抗戦に入った経緯がある)

5ネーションズ、6ネーションズも、誰彼構わず入れるリーグ戦と違って、閉鎖型の対抗戦じゃないですか。ラグビーユニオンは「しっかり愛し合ったパートナーと結婚しよう」という発想が強いわけです。何とか教会の集団結婚式のように相手を選ばず結婚する「リーグ戦」は好まない(昔の話です)

そもそも1980年代までは選手もアマチュアで仕事をしながら競技をしていました。だから国際試合って、頻度が著しく低かったわけです。1年に2試合3試合、多くて5試合の晴れ舞台です。だからキャップがものすごく重いわけですよ。

ホスト国はは旅費から滞在費から何からすべて持って、警察がアテンドして信号は全部青で……みたいなご接待をする。特別な試合ですから。

W杯やW杯予選以上に重い、1年に2試合しか3試合しかできない究極の国際試合――。それがテストマッチです。

例えば1970年代の日本ラグビーにとってイングランド戦やフランス戦なんて、恋い焦がれた女性とやっとデートできた!みたいな試合じゃないですか。

一方で最近マスメディアでは「練習試合」「本番に向けた調整試合」という意味合いでテストマッチを使うわけです。

ただこれが間違いとは言えません。例えば日本の高校野球でマネージャーは「雑用係」ですが、アメリカの野球やイングランドのサッカーでは「監督」を意味します。ドイツでは「トレーナ−」と監督を呼びます。ドイツのトレーナーはテーピングを巻く係ではありません。

バスケの世界で「ヘッドコーチ」はチームの采配を振るう一番手のコーチ(つまり監督)ですが、サッカーや野球でヘッドコーチと言ったら「監督に次ぐ二番手」の意味ですよね。

つまり国境、競技をまたいで用語は混乱します。テストマッチも仕方のない“誤用”なんでしょう。だからこそモヤモヤするのです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?