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住宅ローンは変動金利の独り勝ちってホント?②

 お世話になっております。仙と申します。金融の個人営業一筋16年。昨年末に15年勤めた都銀を退職し、今は個人会社を設立して財産コンサルティング業を行うと共に、業務委託IFAとして活動しています。
 住宅ローンは変動金利の独り勝ちってホント?と題して、昨今の住宅ローンを取り巻く環境について整理していきます。①に続きまして、本稿では他国の状況を見ていきたいと思います。

 まず、変動金利って上がるんですかね?日銀が利上げすれば変動金利は上がっていくはずですが、じゃあ日銀が利上げするには?雇用や所得、消費者物価指数(CPI)など複合的に判断されているようですから、今の状況ですと何とも言えません。ただ、判断をする要素の一つで、コアコアCPIが時々話題になっていますので、ちょっと取り上げてみます。
コアコアCPIだけで金融政策の判断をしているわけでは無いですが、ここ30年の中でも高めの数値にはなっています。このコアコアCPIが2%を超え続けているとすると、それは確かに過去30年間無かったことですから、「今までと違う」という心構えをしないといけないでしょうね。
https://jp.tradingeconomics.com/japan/cpi-core-core

 ちなみに、日本は中央銀行の緩和政策に対して、財政政策は増税一辺倒で、実は緊縮的です。
 余りにも短すぎたので、記憶にあるかどうか怪しいですが、今年の9月に英国でトラス政権が誕生しましたよね。英国は30年振り返ってみても今が最高のインフレ率となっています。下表の通り。

 これだけのインフレになっていますから、英国の中央銀行は当然に緊縮的な金融政策を実行します。つまり利上げに動いていきます。
しかし、トラス政権はこの高インフレの状況下で、減税策を発表しました。
減税策は景気を刺激するものです。減税されると使えるお金が増える為、消費に回しやすくなります。
よく使われた表現ですが、英国はブレーキとアクセルを同時に踏み込むことになりました。加熱するインフレに対するブレーキが中央銀行の利上げ。アクセルが減税策です。物凄いアホなことをしたために、イギリスの信用は失墜し、英国債は売り込まれました。結果、トラスは10月には退陣しています。アホだから。
英国10年債の利回り推移↓

 我が国はどうかというと、黒田日銀はYCCの変動幅の修正は行いましたが、緩和は継続。岸田内閣は3日に1回の頻度で増税の話が出て来ています。まだ実行されていませんが、金融緩和でアクセルを踏み、増税でブレーキを踏みこむという、英国と逆だけど同じという様相を呈しています。
あるいは、増税によって大したインフレにならないかもしれません。その場合は、金利は大して上がらないのですが、日本が更に貧乏になっていくわけで、余り良い話でも無い気がします。今のところは信用失墜で日本国債が売り込まれることもありません。

 米国もまた高インフレに悩んでいるところです。これまた40年ぶりくらいの高インフレです。
米国ってデータを振り返られる期間が長くて良いですね。インフレ率の推移↓

それから、ここ30年の住宅ローン金利(変動金利)の推移を見てみましょう。
現在6.3%程度のようです。すごいですね。
米国住宅ローン変動金利の推移↓

 インフレ社会のアメリカでは、待っているとモノの価格が上がるので、お金を借りて早く買った方が得になります。今はというと、インフレが落ち着いた後の景気後退、景気後退時の利下げまでも想定内である為、じゃあ待った方が得じゃない?という考えも出てきているようです。
ということで住宅価格の上昇は止まっています。

住宅価格の下落はこれからなんでしょうね。買うのを待った方が借入金利は低いわけですから。待つメリットが出てきます。

 金利は動くもの。これを伝えたいが為に、米英のデータを見ていただきました。金利は動くのが世界の常識です。「世界の常識は日本には当てはまらない」なんてことはないと考えていた方が無難でしょう。
 次回で、金利変動時の返済額の変化など、数字で見ていきたいと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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