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【レビュー】スピーカーブック2013付属 eilex EXIMA CONCEPT スピーカーケーブル

CDジャーナルでお馴染みの音楽出版社が2013年に発売した付録付きムック「スピーカーブック2013」実は2022年現在も在庫が残っていて未だ各所で入手可のだったりします。中に入ってるのは eilex EXIMA CONCEPT スピーカーケーブル。NVS等ハイエンドオーディオの輸入代理店で知られるアイレックスが設計したスピーカーケーブルが4m入っています

スピーカーブック2013付属 eilex EXIMA CONCEPT スピーカーケーブル

✅構造と外観 EXIMA Speaker Cable Limited Editionとの違い

書籍として売られているためか、切り売りスピーカーケーブルだと考えると製品内容に対して比較的安価な設定がされています。eilex EXIMA CONCEPT スピーカーケーブルは一部オーディオ店でOUTLET扱いで切り売りを販売しているところもあります。尚、この後EXIMA Speaker Cable Limited Edition (3,150円/m)も発売されましたが、限定20ロールの生産だったため、こちらは現在流通していません。無印付録品とLimited Editionの違いは、

・EXIMA CONCEPT@付録品:OFC Φ0.3 × 17本(1.2SQ) シールド:アルミニウムテープ 硬質PVC
・Limited Edition:OFC Φ0.38mm x 38本(4.3SQ/11AWG) 銅テープシールド 硬質PVC

この様になっています。EXIMA CONCEPTは元々Limited Editionのプロトタイプとして設計されたそうですが、導体径はあくまで半分以下ですので用途的には別物と考えた方が良いかも知れません。スピーカーブック2013ムック内ではΦ0.3と書かれていますが、実物を触った感じにしてはスペックが細すぎますので、実際はΦ0.38mm × 17本/1.9SQ(14AWG)相当ではないかと思われます。

eilex EXIMA CONCEPT

見た目はブラウンのシースルーで外径8.4mm。中身のアルミ箔シールドが透けて見えます。品質/構造的に市販の他の切り売りスピーカーケーブルと比べた場合、1m/2000円前後の製品になると考えるとお買い得かも。ちなみに本体であるCDジャーナル別冊スピーカーブック2013の内容ですが、90ブランド177モデルの解説があり、2013年当時のスピーカーカタログとして、今読み返しても十分マニア心を擽る素晴らしい出来です。

尚、Limited Editionはも音楽出版社ではなく音元出版の| オーディオ銘機賞2014 を受賞しています。


✅eilex EXIMA CONCEPT 音質レビュー

方向性指定あり。中域を中心に上下にナチュラルに広がる比較的ナローレンジの、軽妙且つチャーミングな音質。撚り線ですが、単線的な傾向のニュートラルより少しだけ硬めの音。撚り線にありがちな滲むような弊害はほとんど感じません。音像は適度にタイトで密度感があり説得力があります。

ハイスピードだけれど音像のエッジや輪郭の強調感は無く、スムースで滑らかなサーフェス。素直な中域で、中域~中高域が僅かにパリッとしていてストレートにクローズアップされます。上下は比較的狭いfレンジ感ながら、音場は前後感があり、奥へと広がる滑らかな音場の中にマイルドで潤いのある残響が深く豊かに広がります。低域方向はピッチが明快且つややタイト傾向で質的には中庸。控えめな艶の中で中高域に少し明るさがありますが、安物のケーブルにありがちな歪み感は全くありません。温度感は高め。

ただし音数は割と少なめ。弦楽器は基音の滑らかさがクローズアップされて倍音が控えめ。トーンにまとまりがありますので、トゥイーターの歪みっぽいスピーカーや、ユニットが暴れるシステムを音楽的にまとめて調教するのには良さそう。もう少し低域の沈み込みや高域の情報量が改善されたら・・・とは思いますが、そこは流石に1クラス上のEXIMA Speaker Cable Limited Editionの領分となるのでしょう。


✅暫く使い込んでエージングが進むと・・・

音場にほの暗い憂い感と云いますか、陰影の「影」の部分がより引き立つタイプ・・・喩えるとミレーの絵画みたいな。この高級感と大人びた懐かしさを感じさせる音色の個性はなかなか魅力的。高域方向の情報量はいまいちな反面、中域のストレートで明瞭な芯の強さ、密度感と音楽的説得力はなかなか。絶縁体の中身は綿糸ですが、聴感上は、綿糸絶縁のイメージよりもスムースで、シルキータッチのストリングスを聴かせます。

割と折り目正しい内向的な雰囲気と裏腹に、時に音楽的解釈に僅かな思考的堅苦しさを感じてしまう部分があり、音楽性については正直、我思うところがある感じ...( ³△³  ).。。o eilex EXIMA CONCEPT スピーカーケーブルでは、僕が好きな情緒的にたゆたうショパンよりも、バッハの解釈に念いを巡らしたくなる印象。決して抑揚表現豊かで良く歌う系でもないし、ノリノリのリズミカル系でもないのですけど、音楽の内面にいつのまにか気持ちを奪われる不思議な説得力があります。

上下のレンジの広がりが薄く地味目の音色なのもあって、繋げて直ぐの最初の印象は正直それほど良くなかったのですが、エージングが進むと高域に明るさが加わり、音場が広がり、密度感のある音像と滑らかな反響音の分離に優れていて、この節度あるスムースさは使い方次第で面白そう。

✅逆方向接続を試してみました

方向性指定のあるスピーカーケーブルですが、試しに逆接続にしてみると、全然違う傾向のSPケーブルになります。順方向が陰だとすると逆接続は陽。聴感F特が更に狭まり、益々カマボコ音場臭くなって安っぽくなると云いますか、前述のフォーマルな陰影を伴うストレートな音像とスムーズな音場の奥行き感は後退するのですけれど、音が前に出て、中高域に華やかな明るさとレンジ感、中~低域にチャーミングな音の弾力が加味されます...( ੭ ・ᴗ・ )੭♡。音楽性・・・音楽の表現としてはこっちが好みかも。でもって、悪く云うとやや無理に音が絞り出される感じで苦し紛れっぽいと言いますか、商品としてバランスが崩れたサウンドにはなってしまいますけれども。。。


✅カーオーディオで使ってみる

eilex EXIMA CONCEPTスピーカーケーブルは音場がフラットでは無くややカマボコ気味。魚眼レンズ的に中域が出てくるので、もともと卵形のキャビンで、周波数帯域が盛大に歪んだ特製の車内で使うと、F特の歪みが更に気になるようになってしまいその点はむぅぅぅな感じ。しかし眼前に広がる音像定位は三次元的に立体的ですし、音質はナチュラル傾向なのに音抜けが良く、音像描写がクリッとタイトでしっかりしていて、その点はなかなか悪くないと思います。そんな感じで結局、フランス車(シトロエン×BLAM×FOCAL×ナカミチ)のカーオーディオシステムで暫く使う事になりました。

✅まとめ♪

eilex EXIMA CONCEPTスピーカーケーブルは、中域の魅力的なコントラストの音像描写と空間表現の反面、レンジの広がりについては中庸且つ音数は少ないタイプです。解像度やレンジ感を求めて3000円/mクラスのケーブルを期待すると肩透かしを食らいますけれど、切り売り1500~2000円/mクラスの実力は確実にありますので、3800円の雑誌付録としては、まあまあお買い得ではないでしょうか。今回は何か、ケーブルって結局、導体とジャケットの素材音なのかもですねぇ。。。なんてしみじみと考えてしまいました。設計元のアイレックスは輸入代理店業が主で、オーディオ機器/オーディオアクセサリの専業メーカーではなく、この後の製品展開などは続きませんでしたが、この価格帯には少ないハイエンド指向を感じさせる明確な個性を持つ世界観を提示した意義はあり、マニアックな選択肢の一つとして覚えておいて良いと思います。

+For
滑らかでタイト且つ抜けの良い音像
ナチュラルな暖かみと陰影の豊かさ
ムックとして発売されたことで質的割安感がある
本誌そのものに資料的価値が高い

-Against
明確な個性があるためスピーカーを選ぶ
専業オーディオメーカーの製品ではない


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