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次世代を担うべき才能にエールを。「お笑いスター発掘ラジオバトル」に込められた想い【インタビュー】

耳で本を聴くことのできるサービスaudiobook.jpが、なぜお笑いの賞レースを開催するのか?そこには、audiobook.jpを運営するオトバンクが抱いてきた理念との共鳴があった。

入社たった2ヶ月の新入社員が発案したひとつの企画が、劇場で彼らを見守ってきたライブ制作のプロと共に、若手芸人の夢「ラジオ」への道を照らすー

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―今回、お笑いライブの制作をしているK-PROさんと、オーディオブックを運営するオトバンクが「お笑いスター発掘ラジオバトル season1」を共同で開催することになりました。K-PRO代表の児島さん、オトバンク代表の久保田さん、オトバンク社員で企画発案者の田中さんにお話を伺っていきたいと思います。

児島気奈(K-PRO代表)
年間1000本以上のお笑いライブを主催するイベント制作会社K-PROの代表。「THE MANZAI」「キングオブコント」などの決勝進出者のほとんどはK-PROライブに出演経験がある。
久保田裕也(株式会社オトバンク代表)
日本最大級のオーディオブック配信サービス「audiobook.jp」を運営するオトバンクの代表。3台のデッキを部屋に構え、夕方から朝5時まで放送を聴き続けほぼ寝ずに登校する青年時代を送ってきたラジオフリーク。
たなかひろき(株式会社オトバンク ディレクター)
2020年4月オトバンクに新卒で入社。オリジナルコンテンツのディレクターを務めており、今回の「#ラジバト」企画者。個人でも放送作家として活動中。


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きっかけは、いち お笑いファンの熱い想い

ーまず、この企画はどういう経緯で立ち上がったのでしょうか。企画として動き始めたのはいつ頃でしたか?

たなか:4月の頭に児島さんに初めてご連絡して、その後ミーティングが数回、企画が決定したのが4月の終わり頃ですね。

―今(取材時点)6月末で、すでに配信開始日(7月8日)も決まっていて。かなりスピーディーに進みましたよね。児島さんとは元々お知り合いだったわけではなくて、突然ご連絡を差し上げて、という?

たなかそうですね。

―児島さんは最初に連絡が来たとき、どう思われましたか?

児島:ちょっとびっくりしました。最近は若手お笑いに興味をもっていただける異業種の方が多い印象はあったんですが、オーディオブックさんはほとんど、お笑いのイメージがなかったので。

―発案者である田中さんは、どんな思いで企画したんでしょうか。

たなか僕は大学生のときにフリーでお笑いをやっていたくらい、もともと大のお笑いファンなんです。自分もライブに出たりしていろんな芸人さんを見ているなかで、以前からずっと、若手芸人さんの活躍の場が足りないな、と感じていました。

―メディアに出られる芸人さんは限られていますよね。

たなかはい。お笑いが好きだからこそ、こんなにおもしろいのになんでテレビに出られないんだろうとか、いろいろと感じるところがあって。だから自分は裏方に回ろうと思った時に、いつかは彼らにフォーカスした企画や番組をやりたいなっていうのは、ずっと思っていました。

―若手芸人さんにフォーカスした企画を考えた時に、K-PROさんのことはすぐに頭に浮かんでいた?

たなか学生の頃にK-PROさん主催のバトルライブに出させていただいたこともあるので、以前から知っていました。いち会社員の僕が直接(芸人さんの)プロダクションの方にご連絡しても、お話を聞いてもらうのがまず難しいだろうと思っていたので、ここは「関東のお笑いライブシーンを牽引するK-PROさんに力をお借りできないでしょうか」と。

―先ほど児島さんがおっしゃっていたように、audiobook.jpはビジネス書やビジネスパーソンに向けたコンテンツが多いと思うんですが、久保田さんは最初にこの企画を聞いたとき、どう思われましたか?

久保田:audiobook.jpがお笑いの企画、っていうのは皆さん意外に思われるかもしれないんですけど、もともと会社としていくつかその伏線というか、文脈があったんですね。「作り手にたくさんお金を戻す仕組みを増やしたい」という考えをずっと持っていました。なので、これまでとジャンルは違えど、根幹にある想いは変わりません。

―そういう文脈の中で考えると、今回の企画は実は会社が大事にしている想いに沿った企画だった、ということなんですね。

コロナ禍が浮き彫りにしたライブという「ナマモノ」の弱さ

―企画が立ち上がった頃はちょうどコロナで緊急事態宣言が出て私たちの生活が一変し始めた時期だったと思うんですが、そのことは企画に影響していますか?

久保田:今まで通りの生活ができない状況になったときに、ちょうど田中くんと「芸人さんってどうなっていくんだろう」という話になって。劇場が開けない、テレビも収録できないかもしれない、ってなると、他に彼らが出られる場所がこれから必要になってくるんじゃないかっていう。今すでにメディアにたくさん出ているような人たちよりは、もっと若手の、チャンスを必要としている人たち。そのときに「K-PROさんとお仕事してみたいよね」という話は出ていて。

―憧れがやっぱり。

久保田:一方的に知っている存在ではあったので。田中くんが「どうすかねどうすかね」って言うから(笑)、「とりあえずダメもとで連絡してみたらいいんじゃない?」って。だめならダメで、っていう。

たなかそうですね(笑)。あとやっぱり、コロナ禍でK-PROさん自身も岐路に立たされている状況かもしれないと思ったので、微力ながら一緒にお仕事させていただきたいなっていうのもありました。

―最初のご連絡がいったとき、児島さんはどんな状況でしたか?

児島:もうお笑いライブ自体が自粛ムードというか、お客さんを集めてやるっていうことが全くできない状態で。何か若手芸人さんのために活動の場がないとダメだなと思っていた時でした。当初はこんな状況、1,2週間で落ち着くんじゃないかってちょっと呑気に思っていたんですけど、だんだん、これはやっぱり長期化するんじゃないか、と。

―先が見えないなか、主戦場である劇場を開けられないことは相当な不安要素ですよね。

児島:テレビやラジオの収録はアクリル板を立ててまだやっているっていう話を聞いて、ライブの弱さというか、ナマモノの弱さをすごく感じていました。ライブだけじゃ若手の支えになれないんじゃないかって。今回のお話をいただいたのはそういう時だったので、これは若手芸人さんが少しでも活動できるチャンスになる!と嬉しかったですね。
ひいては自分たちが常に言っている「ラジオっていいよね、やってみたいよね」という若手芸人さんの夢に直結するような企画だったので、すごくいいなと思いました。 

若手芸人に根付く、ラジオへの圧倒的な憧れ

―若手芸人さんが「ラジオやりたい」という話はよく出るんですか?

児島:今テレビのネタ番組が少ない時代なので、ラジオを聴いてお笑いに興味を持ったという人が多いんです。例えばバナナマンさんとかオードリーさんとか。だから、自分たちもいずれはラジオ番組を持ちたいという夢を持って始める人は多いんじゃないかな。憧れは、ずっと昔からあると思います。

―そういう背景があったからこそ、突然のご連絡で急なスケジュールだったにも関わらず、ご快諾いただけたんですね。

児島:若手にとってチャンスだとは思いましたね。たまに若手芸人さんが単発でオールナイトニッポンやったりすると、ネットラジオでもそうですけど、芸人さん同士でもよく話題になっています。みんな注目しているんじゃないかな。 

次世代のお笑い界を担う期待の若手実力派がエントリー。MCはラジオでも人気のコンビ、三四郎

―今回出演してくださる芸人さんですが、どんな方々にお声がけしたんでしょうか。

児島:都内のライブシーンで、その世代における実力派ですね。若手だけどちゃんと酸いも甘いも経験していて、周囲からも特に期待されている7組という感じ。ネタの評価はあるのにテレビ出演が少ないので、まだ人間味の部分が伝わっていないというか。ここからもっと、おもしろい部分が出てくるんじゃないかなと期待しています。

―普段から彼らを見ている児島さんならではの視点ですね。田中さんは出演芸人さんを知ったときどうでしたか?

たなか:興奮しましたね(笑)。もう皆さん、深夜のネタ番組には出ていたり、ザ・マミィさんはレギュラーでコント番組も始まったり、それくらいの方々なので。このタイミングでご一緒させていただけるのは、すごくありがたいです。

―三四郎さんがMCというのもインパクトありますよね。児島さんは三四郎さんとのご関係は?

児島:ライブシーンでもまだ三四郎さんの名前が注目されていない頃からずっとK-PROのライブは出てもらっていて。だから、スターになっていく様を全部見られているんです。でもお仕事として対面でお話する機会はなかなかなかったので、先日のイントロダクションの収録では久しぶりにお会いして懐かしかったですね。楽屋で喋っているように楽しく録れました。

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(左前:三四郎小宮さん、左奥:K-PRO児島さん、右前:三四郎相田さん、右奥:オトバンク田中さん)

―同席した田中さんはどうでしたか?

たなか緊張しました。僕、三四郎さんのDVDも全部持っているし、ラジオも、オールナイトニッポン0が始まった年から聴いているくらい好きで。画面やラジオの向こう側の人なので…前日あまり寝られなかったです。

―(笑)同じ部屋で、真横でラジオが行われているのがすごかったですよね。

たなか収録のときは、ファンです感を出してしまうとよくないと思って抑えてました…

児島:(笑)もともと好きだった芸人さんとご一緒できるってすごくいいですよね。

―久保田さんも三四郎さんのラジオ聴いていますよね。MCが決まって、いかがでしたか?

久保田:すごいびっくりしました。ありがたいですね。そこは、ファン感を出さないように。

―みんなファン感を出さないように必死だったんですね(笑)。 

ラジオは、芸人さんの「人間味」についてきてくれるお客さんが育つ場所

―お笑いにおけるライブでの良さと、ラジオ(音声)での良さって、それぞれどういうところがありますか?

児島:ライブの良さはやっぱり、「現場で一緒に体験ができる楽しさ」が一番でしょうか。

久保田:「そこでしか体験できないナマモノさ」ですよね。

児島:そうですね。一方、ラジオはその共有した体験について、「後説」じゃないですけど、今日こんなことがあったんだよ、っていう話をより深く、芸人さん自身の言葉で聴ける。芸人さんの魅力が、より一層伝わるのが良いところですね。

―収録やイベントの裏話をラジオで、っていうのはよくありますよね。企画した田中さんはどうですか?

たなかライブとラジオは、「お客さんとの一体感」という意味ではよく似ていると思います。例えば、僕は東京03さんが好きで単独ライブにもよく行くんですが、周囲の友人たちにはなかなか話が通じないんです。

―ライブシーンではすごく有名だけど、みんなが知っている話ではない?

たなか「昨日のテレビの話」をするのとは違うんですよね。でもライブに行けば、大勢の人が同じものを観て一緒に笑って、終わるとみんな同じ話題で盛り上がっている。この一体感がライブの一番の良さだと思うんです。実はそれはラジオも似ていて。目に見えないけど、同じものを一緒に聴いているリスナーがいる。どちらもテレビより距離感が近いところも似ていますね。

―久保田さんはいかがですか?

久保田:音のコンテンツは、ストックになるのが良いですね。継続することで積み上がって、作り手についてきてくれる、つまりライブに毎回来てくれるような、ちゃんと芸にお金を払ってくれるお客さんを育てることにつながると思うんです。
久米宏さんと伊集院光さんがラジオで「永六輔さんはテレビには出なくなったけどどうしてラジオには出るのか」という話をしていて。それは「受け手との距離感に間違いなく縁(えにし)がある」からだと。つまり距離がすごく近いっていうことだと思うんです。だから腹割っていろんな話ができるという。

―ラジオはリスナーと関係性を築くことができるんですね。

久保田:例えば今回MCの三四郎さんの、3月に予定されていたオールナイトニッポンのライブイベント(コロナの影響で中止)もそうなんですけど、不思議とラジオ局がやるライブって、テレビと比べるとリーチは明らかに狭いはずなのに、チケットは即完する。それがまさに動かぬ証拠で。そういう意味で、音のコンテンツっていいものだと思います。

児島:ライブからしたらラジオ・音声メディアはすごく夢があるなと思っちゃいますね。舞台で、ネタの面白さでお客さんを笑わせることももちろん大事ですけど、ラジオは自然体で自分たちの口から思っていることを発信してお客さんを魅了することができる

―児島さんが、これからもっと伝わるといいなとおっしゃっていた、芸人さんの「人間味」の部分ですね。

児島:人としての面白さが存分に出せる場だと思うので、羨ましいです。ラジオと舞台がくっついたら最強なんじゃないかな。

たなか「ゴッドタン」のラジオ芸人サミットみたいに、ラジオの公開収録とか、ラジオのライブとか、総合的に何かできたらいいですね。 

若手芸人の夢を叶える登竜門としての「ラジバト」に

―今回が「season1」で、企画は今後も継続していければ…とのことですが、これからこの企画に期待していることはありますか?

児島:シーズン1で企画自体が盛り上がって、「ここでチャンスや夢を掴みたい」と若手が思う賞レースになるといいなと思いますね。彼らが憧れる、箔のつく大会になれば。ラジオをやりたいという気持ちをぶつける大会はあまりないので、ここに全部ぶつけて欲しいです。

たなか今ってネットラジオ乱立の時代で、それ自体は出面が増えていいことだけど、その先のお仕事につながる出口が明確に作られていないのを課題に感じています。僕もポッドキャストで放送作家として携わっている番組があるので、実感としてそう思うんです。
例えばM1グランプリだったら「優勝したら一年はテレビにたくさん出演できる」というような、出口がちゃんと作られている。ラジオはそういう前例があまりないので、ラジバトシーズン1がその第一歩になっていければいいですね。

久保田:テレビ向きの人、劇場で活躍する人、ラジオに軸足を置いてやる人。芸人さんによりけりだと思うんです。個人的には、活躍できる場は多ければ多いほどいいと思っていて、その中で僕らができることとして今回の企画を考えている。
だからこれをきっかけにaudiobook.jpで番組を始める(優勝コンビは冠番組配信が確約)とか、例えば放送作家さんやラジオ局、はたまたテレビ局の方の目に留まるとか、結果的に人の目に触れる機会が増えて、より羽ばたいていくお手伝いができたらすごく嬉しいですね。

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―場があればあるほど、何かにつながる機会にはなりますよね。

久保田:東京ポッド許可局(自主制作のポッドキャスト番組をTBSラジオが異例の逆輸入)みたいな前例もあるので、これからどんどん増えていくんじゃないかな。最初インディーズなんだけど、インディーズの時点で演者さんだけじゃなくてディレクターと作家がついている、という。これってYouTuberになった芸人さんと同じフォーマットだと思うんですよね。

全員:うんうん。

久保田:カジサックさんとかも4人や5人でやってて。

たなかそうですね。

久保田:単純に芸人さんに来てもらって、ただ「好きに喋ってください」というよりも、こういうフォーマットの方がコンテンツとして熱量が出てくると思うんです。どうやったらおもしろくなるかをみんなで考えて。

―今後、インディーズの音声配信番組がラジオ局の放送するラジオ番組へ進出、というパターンが増える可能性も大いにあるかもしれませんね。楽しみです。 

続けていく難しさと伴走者の重要性

久保田:ラジオって、技術が進歩した今、始めるのはそんなに難しいことじゃないと思うんですけど、しっかり伴走してくれる人がいないと続けるのが難しいと思います。
それこそ、例えばオードリーさんには(藤井)青銅さんが今も同席してますし、他の一線級で人気のあるしゃべり手さんにもやっぱりいます。そこが肝だと思うので、そういったところで僕らにできることがあるならやっていきたいなと思いますね。

たなかそうですね。

久保田:このコロナ禍の状況があるから、自分たちで発信するようなものは恐らく向こう半年くらい続くと思うんです。芸人さんが喋っているのはリーチを稼ぐっていう意味ではいいんだけど、でもやっぱり、そこに商売が合わさってこないと演者さんも続けられない

児島:続けること難しいですからね。

久保田:そうなんですよ。「芸人さんだから面白い話できるでしょ」って、そんな簡単な話じゃないと思う。大変だからこそ、その分お金になるようにしないと、こちらも続けてくださいって言いづらくなる。そこは考えていかなきゃいけない。

―確かに今ネットラジオの番組は多いですけど、商売として成立している例ってほとんどないと思うので、モデルケースというか、道を作ってあげられるといいですよね。
7月に入ったらすぐに配信開始、その後審査があり、優勝が決まったらレギュラー番組の制作に入ります。最後に意気込みをどうぞ。

児島:配信が始まったら芸人さんたち自身もたくさん発信してくれると思うので、それをより広められるように、私たちも努力していきたいです。

たなか一人でも多く聴いてもらうためにPRしていきたいですね。今回を成功させれば、シーズン2開催時により多くの芸人さんに参加する意義を感じてもらえますし、リスナーさんにも注目される企画になると思うんです。芸人さんが「ここでチャンスを掴んだ」と思える大会、そしてレギュラー番組になるように、全力で制作していきます! 

久保田:あんまり瞬間的な、一発ドン!ってやって終わり、というのは全く考えていないので、この企画は長く続けていけたらいいなと思いますね。

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K-PRO×ABJP
「お笑いスター発掘ラジオバトル season1」の聴き方

下記にて詳細をご案内しておりますので、ご参照下さい。
リスナー審査への参加は明日7月14日23時59分までとなっておりますので、気になるエントリー音源からぜひぜひ聴いてみてくださいね。

7月14日実施の中間発表(K-PRO児島さん、オトバンクたなか出演)の模様はこちらからご覧いただけます。

審査結果は、7月17日に発表予定です。お楽しみに!!

インタビュー:佐伯帆乃香(オトバンク広報)
ライティング・編集:遠山エイコ

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