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はじまりの話 1 ~オーディオとの出会い~

自作スピーカーから、プロのスピーカービルダーになったカノン5Dですが、
そもそも、何が始まりだったっけ?と思い、以下書き連ねてみようと思います。


幼少期の話

まだ物心ついて間もないころ、我が家にはオーディオ機器が多く転がっていました。
私の父は、オーディオも手掛ける電気系メーカーに勤めており、クラシックが好きだったので、家では父の聴くクラシック音楽が聞こえるのが当たり前の日々でした。

そんな英才教育の家庭にいながらも、幼少期の私はオーディオに全く興味なし。むしろ私の兄の方が、オーディオやビデオに興味を持っていましたね。

1990年代に小学生だった私は、ミニ四駆に夢中。何台も作り、改造を重ね、悦に浸っていました。内向的な性格もあって、大会に出たりということはありませんでしたが、近所の模型店のコースには度々足を運んだことを思い出します。それでも、誰もいない日に限って、一人でミニ四駆を走らせていました。

あのとき、なぜオーディオに興味を持たなかったのか? 今から考えると、分かりやすくダイナミックに動く車のほうが好奇心をそそられたのだと思います。オーディオって、なんか小難しいじゃないですか(笑)

中学生になって、目覚めの時

私の中学生時代は、MDが販売されたころです。オーディオに興味がある兄は真っ先にMDデッキを購入。自分は、黄色い本体デザインが特徴の、小さな再生専用機を買いました。

そして、中学2年生の頃でしょうか。埼玉県在住の私は、模擬試験のたびに池袋に行くことが多くなりました。兄が「すごいミニコンポ(※ステレオセットの小さいやつ)があるぞ」「80kHzが再生できるスピーカーがあるぞ」と言っているので、池袋の さくらやに一緒に行きました。

その頃は、大人っぽいのが欲しくなるんですよねぇ。私にオーディオを紹介した兄は、接続したり配線をしたりすることが好きだったのもあり、中古のアンプや父のおさがりのスピーカーを組み合わせてオーディオシステムを組んでいました。

私は、店頭でもらってきたパナソニックのMDコンポのカタログを見たりして、「へーこういうのがあるんだ」。と眺める日々。
しかし、中学2年生頃のとあるタイミングで、オーディオ熱のスイッチが入ったのです。それが何だったか、未だに分かりません。でも、無性にMDコンポが欲しくなったのです。

母親にねだって、MDコンポ買ってもらいました。販売終了間近のセールで、39,800円だったと思います。

このMDコンポの音が凄かった。今まで持ってたラジカセとは異次元のワイドレンジ再生!こんなにも音がクリアに聞こえるのか!!と。

まだこの頃は、車(タミヤ製のラジコンなど)や、写真(キヤノンの一眼レフを母から借りた)が主な興味の対象でした。しかし、このMDコンポとの出会いが、カノン5Dの最初の産声になったのは間違いありません。

憧れが生み出した輝き

MDコンポを買う人は同世代に多かったと思います。しかし、なぜこんなにも私が感動したのか。

やはり、父や兄が既にオーディオシステムを持つ中で、それに対抗したい、それの真似をしたい、という思いがあったからだと思います。
単なる環境要因といえば、それまでなのですが、父や兄への憧れや対抗心が混ざった感情が根底にある中での、初めて手に入れたオーディオシステムは、強烈な意味を持ったのだと思います。

昭和の時代に子供時代を過ごしたオーディオマニアの多くが、「近所の兄ちゃんに聴かせてもらったオーディオが凄かったから」という話をするように、それが家庭内で縮図になっていたのが私だったのだと思います。

私が手にしたMDコンポは、当時の私を熱狂させてくれました。しかし、実はそこまで良い音ではなかったのだと思います。
その証拠に、音楽に詳しい私の叔父が遊びに来た時、MDミニコンポの音を聴いてもらったのですが、「うーん、やっぱり(本格オーディオとは違って)ミニコンポの音だね」という反応でした。

たしかに、私のMDミニコンポはそこまで凄い音ではなかったのかもしれません。所詮3万円のミニコンポです。しかし、それ以上に、手に入れた満足度が大きく、私の眼には輝いて見えたのでしょう。

生音の衝撃

ここまで書いていて、本当に偶然が重なってオーディオマニアが生まれるんだなと思ってしまいます。そして、さらに偶然が重なります(笑)

通っていた中学校で、オーケストラコンサートを聞きに行くという催しがありました。コンサートですから、楽曲は事前にパンフレットに書かれています。クラシック好きの父がその楽曲のCDを貸してくれて、MDミニコンポで聴いて予習をしたのだと思います。

そして当日。演奏が始まります。かなり興味を持って聴けたのだと思います。隣で聴いていた友達が「お前、目、すげぇ見開いてるぞw」と突っこむぐらい、私は集中して聴いていたようです。

で、その曲を帰宅後に、MDコンポで聴いたら何じゃこりゃ!ですよ。自分の自慢のMDコンポと、生で聴いた音が、全然違うのです。

こうした経験が「オーディオを持ってる人」を「オーディオマニア」に昇華させるのだと思います。生演奏は、アコースティクなものでなくても、ライブハウスでも、Jazzやバンド演奏でもいいと思います。
自分はいいオーディオを持っている。しかし、まだまだいい音が出せていない。この矛盾こそが、オーディオマニアという名の探究者が各々に感じていることなのではないでしょうか。

攻略本から学んだこと

私が小学校時代に流行ったのはポケモンでした。赤・緑に始まり、青・・・と、誰もが夢中になるコンテンツでした。

友達とポケモンバトルをしたりすることは多少あったと思うのですが、メインは一人遊び。何度も言いますが、内向的なカノン5Dは、淡々と攻略とレベル上げをしたり、CPU対戦をするのが主な遊び方でした。

しかしながら、ポケモンの攻略は子供にとってかなり難しい。少なくともゲーム内のマップが分からなければ進められないし、技やタイプの相性、どこに何があるのかを知らないと、大人でも進めるのは難しいと思います。

そうしたなかで、攻略本はありがたい存在でした。近所の本屋で、攻略本を買い、その通りにやってみる。これは、ポケモンだけでなく、ミニ四駆やGT3(レースゲーム)、さらには趣味のラジコンや写真撮影においても、「本」が進むべき道を示してくれました。

そう。憧れの自分のオーディオを手にしながらも、生音との差に愕然としたカノン5D(当時、高校生?)がとった手段は、オーディオの本を読んでみるということでした。

手に取ったのは、ステレオ誌とHiVi誌。もう夢中になって読みましたね。
手元にあるのはミニコンポ一台ですが、インシュレーターを使ってみたり、100均で買ったクッションマットの上にスピーカーを置いてみたり、ホームセンターでゲル状クッションやブチルゴムを買って使ってみたり、サブウーハー(ヤマハのYST-SW320)を追加してみたり。

挙句の果てには、ミッドレンジに厚紙で作ったショートホーンを加えてみたり、スピーカーの周囲をタオルで覆って吸音してみたり。ミニコンポ一台に情熱を注ぐド変態高校生であり、オーディオマニアとしての沼に完全に堕ちていました(笑)

まとめ

こうして私、カノン5Dがオーディオに目覚める体験を書いてみると、以下のような特徴が見えてきます。

  • ダイナミックに動くことに魅力を感じる

  • 憧れと対抗心

  • 本で地道に情報収集

この章の後半は、まだ高校生の頃。確かに、秋葉原のテレオンSound110や、川崎のデノン ショールームにも行きましたが、そこまでオーディオ一筋ではありませんでした。そもそも、手元にあるのはミニコンポ1台と、サブウーハー、1万円ぐらいのヘッドフォンだけです。

そんなオーディオ少年が、自作スピーカーの扉を開けるのは、また後の話。それは後日書くことにしましょう。

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