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誰もが明石のたからものである「海」をあきらめることのないまちに

明石市の大蔵海岸はJR朝霧駅から歩道橋を渡って徒歩2分のとってもアクセスのいい場所。

この歩道橋の一番海側に慰霊碑があります。2001年の明石花火大会歩道橋事故の犠牲者を弔うためのものです。いつも通りかかる時には手をあわせるのですが、この日も私の他に花を手向け、長い間手を合わせている方がいらっしゃいました。

「安全」や「危機管理」への想いを新たに海へ向かいます。

6月には車いすでフレスコボールを体験するイベントも開催しました。
その時の様子はこちら。

■主催 明石市の想い

明石には、明石インクルーシブ条例があります。その中では、インクルーシブ社会のことを「誰もが地域で安心して楽しみながら生活することができる」という言葉で説明しています。そして、誰一人取り残さないインクルーシブな社会を実現することがこの条例の目的です。

さらに、明石市ユニバーサルデザインのまちづくり実行計画では、誰もが自由に出かけることができるまちを実現していくことを理念に掲げています。

つまり、誰もがビーチを含むあらゆる場所に出かけ、楽しむことができるまちを目指しているのが明石なのです。

誰もが明石のたからものである「海」をあきらめることのないまちにしたい!

そんな思いから今回の体験会の取組がはじまりました。

■日本フレスコボール協会ディレクター 山下祥さん

明石市市議会議員で、フレスコボール協会のディレクターでもある山下さん。フレスコボールの日本代表選手でもあります。
山下さんが湘南でユニバーサルビーチに出会い、これを大蔵海岸でもやりたい!と発起人になり、須磨ユニバーサルビーチプロジェクトの事務局長とコラボイベントを開催したことが、最初のキッカケです。

今回も、フレスコボールの皆さんがたくさんご参加くださいました。

■明石工業高等専門学校 大塚先生

大塚先生は、明石高専でユニバーサルデザインをテーマに取り組んでこられた第一人者。

須磨ユニバーサルビーチプロジェクトにも、事前に、建築コースの学生(高校6年生)さんや、高校生が学びに来てくれていました。今回はボランティア部の学生さんがボランティアに来てくださいました。

私たちともつながりのある兵庫県但馬地域で活動する一般社団法人INCREW(インクルー)のフィールドディレクターの岡田絵美さんが、昨年大塚先生と一緒にインクルーシブビーチの実証イベントを行い、お繋ぎいただいたご縁で今回開催との運びになり、感謝しかありません。

■「最後に海がみたい」と須磨を訪れてくれた山下孝光さん

最後に海が見たい。海に入りたい。と昨年5月26日に須磨海岸を訪れてくださった山下さん。その想いを実現すべく、須磨ユニバーサルビーチプロジェクトでサポートさせていただきました。ユニバーサルビーチの本質のひとつを教えてくれた山下さんのことは、当日サポートしたメンバーのみならず、当日参加できなったメンバーの中でも大切に受け継いでいます。

その後、山下さんは6月1日にお亡くなりになりました。後で知ったことですが、山下さんは、元明石市社会福祉協議会副理事長でいらしたとのこと。そのご葬儀でも須磨の海に来られた時の写真や動画をご紹介くださっていたようで、多くの方からそのことを伺い、亡くなってからも山下さんのお人柄や影響力の大きさを感じます。

この時は腫瘍が十二指腸や胃を圧迫しており、腎臓も一つは機能していない状況で毎日吐き気との戦いの中での来訪だったようですが、

波の音と潮風をしっかり感じ、海水を口に含み、砂を手で握り、磯の香りを楽しんでおられたそうです。

ご夫婦ふたりだけの時間を、スタッフは後ろでそっと見守っていました。

「私一人のために、みなさんがこんなに素晴らしい用意をしてくださって…これからも私のような方の応援をよろしくお願いします…」

山下さんの言葉、大切に胸に刻んでいます。

■設営とブリーフィング

今回の現場は、海までのあいだに結構草が生えていました。

なので、まずは草むしりから。

海岸に生えている草は、飛ばされないようにかしっかりと根を張っているものが多く、鋤や鎌も使っての大掛かりな除草作業となりました。刈った草の量は大きなゴミ袋2つ分!フレスコチームのみなさまの働きぶりがすごかったです。

続いての整地作業もフレスコチームが大活躍!何かのトレーニングのようです。

重要なのがトンボでの整地作業。波打ち際に傾斜がある地形だと車いすが転倒しやすくなるので平らにならしていきます。スタッフの目も真剣です。

ブリーフィングでは、性別や年齢、障がいの状態、注意する点以外にも、ご家族で写真を撮りたいというご要望や、SNSへの写真NGなどの情報も共有します。

まずは設営、お疲れ様!

■宏哉くん(10)

経鼻チューブをつけている宏哉くん。新しいことにチャレンジすることが大好きです。

最初は、ピッポキャンプ(水陸両用車いす)で入水します。

これまでも水に入ったことがあるとのことで、水温に慣れたらすぐにピッポキャンプを外しました。こういった手順も、それぞれの経験や障がいの状況によって対応を変えています。

お父さんもお母さんもいい笑顔!

たっぷりと家族での海水浴を楽しんでいただきました。

■結菜ちゃん(7)

水遊びが大好きな結菜ちゃんは、スイミングスクールに通っていたこともあり、生まれて初めての海にも全然臆せず大興奮。

スイミングの時から愛用しているアームリング付き浮き輪を持参されていました。

全然大丈夫そうなので、アームリング付き浮き輪を外して、ライフジャケットに替えました。泳げる結菜ちゃんには、こちらの方が腕が動かしやすいのでよさそうな感じです。スタッフ自作の浮き輪クッションに乗って、感覚に慣れてもらいます。

もっと慣れてきたので、浮き輪クッションも外してヌードルで。こうして遊びながら、さりげなくできる範囲を広げていきます。

最後にはヌードル1本で。これだとより本人の自由度があがり、サポートする側も楽です。それにしてもみんな楽しそう。


結菜ちゃんのお兄ちゃんは、最初は遠慮していた感じがありましたが、水鉄砲を渡すと須磨の中学生メンバーを狙撃!中学生メンバーがいい反応をしてくれるので(さすが関西人!)そこからは本領発揮?!

家族そろっての初めての海、楽しんでくれたかな。

■こうちゃん(3)

こうちゃんは、須磨の海にも何度か遊びにきてくれていて、海遊びはもうベテラン。海が好きだというお母さんとふたりで参加してくれました。

体温調整が難しく、酸素モニターと酸素ボンベを持参されて、海に入る準備が整うまで、涼しい日陰で酸素吸入しました。

まずはお母さんに抱っこされて、海辺で少しずつ水に慣れていきます。前回の須磨でこのやり方を教えてもらったのだとか。この体制だとお母さんも楽だし、こうちゃんも安定しています。

水に慣れてきたら、表情が緩んでいい笑顔!

今回、我々にはミッションがありました。こうちゃんが使っているアメリカ製のこの浮き輪が、来年にはサイズアウトしてしまいそうなのです。

来年の海のシーズンまでに、こうちゃんにぴったりの方法を見つけられるように試行錯誤中。

写真では分かりにくいですが、ベルトの位置や浮きの大きさや数などが、絶妙にいいんですよね、この浮き輪。ジョーズの頭の部分も少し膨らんでいて、こうちゃんの寝心地もよさそうです。

来年も地元の海に遊びにきてね。

■勇樹さん(26)

生まれて初めての海に大興奮だった勇樹さん。

海に入るぞー!というワクワク感が伝わってきます
いきなりの手荒い歓迎?!
明石高専のボランティアの人と一緒に

勇樹さんは、日頃いる施設では最年少なんだそう。今日は若者に囲まれて楽しそう。何度も何度も「幸せやー」と言っていました。

施設の方がとても熱心で、「彼にいろんな体験をさせてあげたい」とこれまで海に入ったことのなかった勇樹さんを連れてきてくれました。

周りの人が「無理」と思うか「できる」と思うかで、経験できることが大きく変わってしまうのは、ある意味仕方のないことだけれど、だからこそポジティブマインドでいることで可能性はどんどん大きくなっていく。

帰りの車の中でも「幸せやー」を連発していたそうなので、今日の日のことはずっと覚えてくれているでしょう。また、遊びにきてくださいねー。

■明石市長・丸谷さんご視察

6月のイベントの際にも視察に来てくださった明石市長の丸谷さんが、今回も現地に足を運んでくださいました。

その際、須磨ユニバーサルビーチプロジェクトの代表の木戸に最初に言われたのが、「あの山下さんが、最後に須磨で海にいかれた。その想いを、明石でも実現したい。」という言葉だったそうです。

山下孝光さんがつないでくれた明石インクルーシブビーチin大蔵海岸なのを実感します。

申し込み枠をあふれてキャンセル待ちの方が多くいることや、参加者の方の「須磨もあるけど、地元の海に入りたかった」という言葉からも、大蔵海岸でチャレンジしたい!というニーズの高さを感じました。

明石も神戸と同じく、街や生活と海の距離が近いんですよね。これからも素敵なインクルーシブビーチがどんどん増えていけばいいな。

■番外編:健人くん

須磨ユニバーサルビーチプロジェクトのメンバー、健人くんファミリー。
キャンプにも何度もご一緒しています。この日も申込をしてくれていたのだけれど、残念ながらキャンセル待ちで。「でも、ビーチマット敷いているんだったら車いすで行けるでしょ」と遊びに来てくれたのが嬉しい。「もう水着なくても海入っちゃいなよー」とポンポン冗談が飛び交います。


「あ!この顔だ!」

表情豊かな健太くんの写真は、須磨ユニバーサルビーチプロジェクトのポスターにも使わせていただいています。この日、8月24日にユニバーサルビーチを開催する小豆島の観光協会の方が下見に来られていたのですが、健人くんに会うなり、あのポスターの人だ!と気づいてくれました。

■素敵なシーンあれこれ

今回、プロカメラマンの須磨メンバーが同行していたので、素敵な写真がたくさんあります。

大好きな消防士さんと
午後からクラゲが大量発生!
透き通ったきれいな海でした
明石海峡大橋と078

■活動を終えて

駅からも近く、設備も整っていて、景色も抜群な大蔵海岸。フレスコボール以外にも、ビーチバレーの練習にも使われています。
この日の朝には、海岸でヨガをするグループも見かけました。

そういった日常的に大蔵海岸を活用している人たちが軸となり、これからどんどんインクルーシブビーチとして発展させていかれるだろう力強さを感じました。

フレスコボールの皆さんと

■須磨海岸で開催しているユニバーサルビーチ

■2024年全国で開催しているユニバーサルビーチ

●6/23(日)大分
●6/29(土)石垣島
●7/17(水)南あわじ講習会&体験会
●7/20(土)下田
●7/21(日)静岡
●7/27(土)尾道
●7/28(日)徳島
●8/3(土)大阪貝塚
●8/4(日)明石大蔵海岸
●8/10(土)陸前髙田
●8/11(日)釜石市
8/17(土)神奈川・大磯町
●8/24(土)小豆島

「自分の地元でもユニバーサルビーチを開催したい!」「体験会に参加してみたい」という方は、須磨ユニバーサルビーチプロジェクトのHPからお問い合わせください。

須磨ユニバーサルビーチプロジェクト

皆さまの街でお会いできるのを楽しみにしています!

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