見出し画像

「それを作った大人」の存在_セーラームーンにおける「好みの顔」の話

セーラームーンの劇場版前編を観たあと、子どもの頃に豊かなものを浴びていた事実をかみしめていたところ、友人から「小学生の子どもがセーラームーンにハマった」と連絡をもらった。
配信で、最近アニメ化した原作準拠のシリーズを追っているそうです。
世代としては90年代版もおすすめしたいけど、デジタルに慣れた令和のキッズに当時の絵柄は少し違和感があるようだとのこと。
それでも、気が向いたとき何かの参考になればと「推しが活躍する回&お顔がかわいい回」をまとめ始めたら楽しくなってきました。

「好みの顔」が巡ってくる

当時、毎週の「顔の違い」を楽しんでいました。小学生でも区別できるくらい、毎週キャラの顔に特徴があって、何週かに1度、ずば抜けて好みの顔が巡ってくるんです。
この「顔の違い」には、エンディングで出てくる「作画監督」という肩書きが関係ありそうだな、と思ったものの確かめる術はありません。それでも「この人の仕事に違いない!」と勝手に納得して、作画監督や原画担当スタッフの名前を確認しました。

複数のスタッフによって描かれた1話分の原画を全てチェック・修正して、全体の品質や絵柄を統一するのが「作画監督」の役割だと知ったのは、それから数年後のことです。

私にとって「好みの顔」の回で作画監督を担当されていたのは、香川久さんというアニメーターの方でした。香川さん担当回は、瞳の中で一番面積の大きな白いハイライトが特に大きくて、どのキャラも表情豊かに見える。そして安定して可愛い。
今あらためて観ると、全体的なスタイルやアクションにも見入ってしまうけど、当時の私は顔を愛でるだけで精一杯。
香川さんはセーラームーン以降、「フレッシュプリキュア!」のキャラクターデザインを手がけるなどさまざまな作品に参加なさっています。最近はリメイク版「ダイの大冒険」で、総作画監督としてお名前を見かけます。当時追いかけたアニメーターの皆さんの、現在のお仕事を観ると嬉しいです。

そんな香川さんご担当分のうち、特に印象的だった回をシリーズごとにまとめました。

無印 第20話「夏よ海よ青春よ! おまけに幽霊もよ」

普段の舞台である麻布十番を離れ、海に出かける夏休みバカンス&心霊回。初期の推しである亜美ちゃんが特に可愛い。対照的な冬のバカンス編である38話も香川さんのご担当です。このほかネフライト初登場&セーラームーンがテニスボールの着ぐるみと化す14話、まこちゃん初登場の25話、なるちゃんを守る海野がむちゃくちゃかっこいい32話など、たくさんあってキリがないな。

R 第24話「愛の炎の対決! マーズVSコーアン」

マーズと、敵の1番手であるコーアンの炎対決。レイちゃんと雄一郎の微笑ましいラブもあります。レイちゃんも、敵ながらコーアンも美しくて、対決のあとの2人の関係性も微笑ましい。当時のアニメ版には、原作と異なるオリジナルの設定や展開がたくさんありましたね。Rは特に、1話完結が大きな流れを作っていた。闇落ちしたちびうさがブラックレディとなる39話では、美しかわいいブラックレディの動きにも釘付けでした。

S 第3話「素敵な美少年? 天王はるかの秘密」

「S」以降、私の推しにウラヌスことはるかが加わりました。歩けばバラが舞うわ発言はスカしてるわと我が道ゆく佇まいにツッコミを入れながらも、はるかの変身シーンと強さが大好きだった。この回は、はるかの素性をリサーチしようと画策するうさぎ&美奈子の表情もコロコロ変わって良いです。なお、「S」における香川さんご担当回は、なんとこの1話のみです。

SuperS 第14話「恋の嵐! 美奈子のフタマタ大作戦」

美奈子の可愛さはもちろん、彼女を取り合う敵・タイガースアイとホークスアイのコミカルなにらみ合いが印象に残っている回。タイガースアイがまことを狙う20話も、ダンスシーンの動き含めて大変よいです。
タイガース、ホークス、フィッシュのアマゾントリオが好きだった。人の夢の鏡を覗き込むという下世話な手口ながら、ジェンダーレスで、三者三様に伸び伸びしていて。ジェンダーレスなキャラクターはシリーズ全編に数多く出てきますが、いちばん心を掴まれた敵キャラはフィッシュアイ。女子だとばかり思っていたので、演じていたのが石田彰さんと知ってさらに驚きました。

SuperS後半からスターズにかけて、作画監督ご担当回がありません。残念。

そして劇場版!

劇場版にも参加なさっています。特にSとSuperSではキャラクターデザインも担当しているので全編幸せだった。
Sはルナの恋物語ですね。

SuperSはオリジナルのお話。このポスタービジュアルも好きだったな。

おまけで劇場版Rもリンク貼っておきます。大人にこそ響く名作。
香川さんは原画で参加されています。

「大人が作っている」ことが支えだった

ここではお1人の担当回に絞りましたが、ほかの方々が作画監督を担当された回のお顔も、それぞれ特徴がありました。
さらに言うまでもなく、作品の魅力はお顔のみならず、作画だけでもない。ストーリーや演出や背景、音楽に色彩など、さまざまな要素が混ざり合って魅力につながるのです。
全編配信に映画公開と鑑賞環境が充実している今こそ手を出すチャンス。ちょっとでも気になった,または思い出したらどうぞ。

テレビ放送されていた5年間のうち、特に後半2年間、私は親や近所の大人から「中学生にもなってセーラームーン見てんの?」となかば呆れられていました。実際、好きな自分をはずかしく感じることもあった。あんまり人前で言えなかったし。それでもエンディングでスタッフのお名前を眺めては「その『子どもたち向けの作品』を作るために、これだけの大人が仕事してるんだよな」と勝手に励まされていたんです。働くこと、仕事を意識したできごとの一つでした。
好きなものについて人前で語るか、という話はまたあらためて。自分のなかで育てる「好き」もあるよね。

なお、「Eternal」前編についての概要と感想はブログに書きました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?