我が家にあたらしい椅子がやってきた
いままで家具にこだわったことがなかった。
ある程度心地よく寝れればいいや、仕事ができる環境があればいいや。
そんな風に思って暮らしていたので、お気に入りの家具なんてなかったし、どうしてもこれが欲しい!と思うものに出会ったこともなかった。
そんな考えがぐるりと変わった。
我が家にあたらしい椅子がやってきたのだ。
在宅勤務のサポートの一貫で、オフィスの椅子を届けてもらえることになったのは、つい先週のこと。
noteで働きはじめる直前にフリーランスをしていた私にとっては、そもそもオフィスがあったり、PCを支給してもらえること自体が新鮮で、「会社ってすごいなぁ」と思っていた。
それに加えて、在宅勤務へのサポートがあることを知ってあらためて、「会社ってありがたいなぁ」と感じた。
届くまでは、部屋にあうかな、大きすぎないかな、と少し不安だった。でもそんなは心配はいらなかった。意外にも部屋にぴったりだし、なにより、座り心地がとっても良い。
今までは、ずっと座っていると腰が痛くなって、クッションを敷いたり、仕事をする場所を変えたりしていた。だけどもうその必要がない。ずっと座っていても疲れないし、むしろどんどん何かをしたくなる。
椅子ひとつでこんなに変わるんだ。
そんな感動をおぼえながら、そういえば彼女たちもそう言ってたな、と思い出した人たちがいた。フィンランドのご夫婦だった。
フィンランドでホームステイをしたのは、社会人二年目の頃。
仕事にのめり込みすぎてヘトヘトになっていた私は、日本とは全く異なる環境に身をおきたくて、逃げるようにフィンランドに飛び立った。(といっても、一週間だけだけど。)
フィンランドでは、夏になると森の中にあるサマーハウスで暮らすことが多く、私はとあるご夫婦のおうちにお邪魔させてもらった。
彼女たちは、おうちの中で過ごすのがとても上手だった。
外食をすることは少なく、食べたいものは自分でつくる。自分の好きなお花を、お部屋の至るところに飾る。夜にはキャンドルを灯して、ゆっくりくつろぐ。
なかでもひときわ存在感を放っていたのは、椅子だった。
絵本や映画でしか見たことのないようなこんな椅子が、部屋の中に普通にあった。ホストマザーは、よくここに座って本を読んでいた。
その姿を不思議そうに眺めていると、こう教えてくれた。
「フィンランドは、暗くて厳しい冬がつづくからね。おうちで過ごす時間が長い分、自然と一つひとつの家具にこだわるようになったのよ。」
おうちの中にある家具には何となく買ったものはなく、全部お気に入りなのだそう。その証拠に、「どうしてこの家には時計がないの?」と聞いたら、「気に入った時計に出会っていないからよ」と返された。
そんなにこだわらなくても・・・と、当時は思っていた。でも、我が家に届いたあたらしい椅子に座ってみて、少し考えが変わった。
彼女たちは今、どう過ごしているんだろう。
もともとおうちで過ごすのが上手だから、きっと今も楽しくやっているんだろうな。
届いた椅子には、こんなメッセージが添えられていた。
外に出て、人と話して、近くで笑い合えることが
こんなにも大切だったなんて。
みなさまのかけがえのない日常が
一日も早く戻ってきますように。
さりげない気遣いに、心がほっとやわらいだ。大変だったのは、重たい椅子を届けてくれたKaggの人たちのはずなのに。
誰かのおかげで、おうちで過ごせている。
そのありがたみを感じながら、明日からも、あたらしい椅子に座ろうと思う。