独立していることが、偉いわけじゃない
フリーランスになって丸1年。仕事柄、月に1回はイベントを開催している。最近だとちょっと回数が増えて、月に4〜5回。参加者はfacebookやpeatix経由で来てくださるので、大体の方がはじめまして。
当日の私の役割はファシリーテーターなので、あくまで脇役。だけどたまに、「フリーランス」という働き方をしていることに興味を持って、声をかけてもらうことがある。
ついこの間も、イベント終わりに1人の女性が話しかけてくれた。
「はじめまして!あの、今フリーランスなんですよね?」
「あ、はい!一応そうですが。」
「いやぁ、すごいです!いつかやりたいなって思ってて。私なんか今の会社に5年もいちゃってるんですよ。でもなかなか出る勇気がなくて。」
「いやいや、続けてる方がすごいじゃないですか!私が飽き性なだけで。でも、どうしてフリーランスになりたいんですか?」
「どうしてって・・・なんか、もうそういう時代じゃないですか。会社員続けてても仕方ないというか。別に何したいとかがあるわけじゃないんですけど、自分でやっていけるようにならなきゃいけないのかなって。」
* * *
思い返せば同じような場面が過去にも何度かあった。
久々に会った先輩から
「いや~すごいね!自分で仕事してて。私なんかまだ同じ部署で同じ仕事してるよ」
と言われたり、
一度フリーランスになった後、改めて会社で働きはじめた友人から
「フリー続けてて偉いよ。私なんか途中で挫折して組織戻っちゃった」
と言われたり。
本心だったのかも知れないし、私に気を遣って言ってくれた言葉だったかも知れない。でも、そのどちらにしても、
そんな言葉を言わせたくて、今日会いに来たわけじゃなかったんだけどな
そう思いながら、なんとも言えない気持ちで帰ることが多かった。
その一方で、起業している人から
「いやぁ、やっぱ会社員と自分でやるのとでは全然違うよね!みんなさっさと独立しないと」
と聞いたり、
「結局みんな、なんだかんだ言いながらサラリーマン続けちゃうんだよな。勿体ない」
と聞いたりすることもあった。
でも、本当にそうだろうか。
フリーランスになることや、起業することだけが、偉いことなのだろうか。
そもそも私自身は、誰かに褒めたたえられるような理由でフリーランスになっていない。運良く東京と富山の2拠点で仕事をさせてもらっているけれど、語弊を恐れずにいえば、「富山のために」という熱い想いがあったわけでも、「このビジョンの実現のために」という高尚な理由があったわけでもない。
「富山にいる祖父母が生きているうちに、一緒に過ごす時間を増やしたい」という、どう見ても自分勝手な理想を実現する手段として、フリーランスになることを選んだのだ。何も誇れるものじゃない。
それに、ひとくちに「会社員」と言ったって、いろんな人がいるだろう。
もしかしたら、会社員という枠に甘えて不平不満だけを言っている人もいるかも知れない。
でも、一会社員として、目の前の仕事にプライドを持ってやっている人だっている。本気でその会社の成長を願っていて、この環境でがんばるんだ!と意気込んでいる人もいる。
ただ「独立しているかどうか」という外側だけを見て、すごいだのすごくないだの評価したり、このままじゃだめだと焦ったりすることに、どれだけの意味があるのだろうか。
それよりも、なぜその道を進みたいのか、その先に自分が何を得たいのかをわかっていることの方が、大事なんじゃないだろうか。
* * *
このnoteはもともと、イベントで声をかけてくれた女性に向けて書き始めた記事だった。
でも気づけば、ちゃんと法人化している周りの人たちをみて、「すごいな」「偉いな」と劣等感を抱いてしまっていた自分自身に向けて書いていた。
周りの情報が入りすぎる世の中で、無意識に自分と人とを比べてしまうけれど、「人と比べてどうか」なんてことよりも、きっと大事なことがある。
独立していることが、偉いわけじゃない。
幸せのカタチは人それぞれだ。