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姫ファンタジーストーリー4⭐︎ボン様の栄光、その光と影

今の立派なボン様の、その子供のころから青年時代

 ボン様は、今はそれはそれは立派な青年にご成長なされました。華麗なる身のこなしで高いところからでも「とん!」と軽いステップで飛び降りることができたり、その際に腰につけた剣の柄がキラリと輝くと城の中の女子たちが「きゃあ!ボン様かっこいい」と婆ばが咳払いをして鎮めなければいけないほど。それはそれで、婆ばも嬉しく誇らしいような気持になるのでございます。

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 お城の窓から顔を出して、きりっとした眼差しで警戒するボン様は、隊長として王様の警護に当たるお姿は、今でいう「尊い」にまさにぴったりでございましょう。

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ボン様の幼少時~大荒れした時代のこと

 それでも今のようにご活躍のボン様の以前を知る者は少なくないのです。ボン様は、いつがしかも申し上げた通り王様の大きな馬車の歯車の中に忍び込んで助けられたいきさつがございました。
 それは嵐の夜、夜じゅう大雨と雷が鳴り響き、婆ばも寝不足になるほどの夜が明けて朝になった時の話です。まだ雨は激しく降っておりましたが、馬車係が数人集まってがやがやと何か騒いでおります。耳をそばだてると「いや、そっちだ」「今度はこっちだ!」と騒々しい。「何事ですか?」と婆ばの威厳をもってその騒ぎに近づくと馬車係の腕に抱かれた小さなボンさまがそこにいたのです。顔は炭や泥にまみれて汚く汚れておりました。


 そこで、婆ばがその小さなボン様を引き取り、下女たちにお湯を沸かさせ婆ば自ら湯につけたのです。すると、泥汚れに混じり不快な虫も湧くように湯の中に這い出てきて、こんな小さなお体でそれはそれは大変なご苦労をされたのだと不憫に思いました。そして何度か湯を変え、身体の水分を拭きあげると輝くばかりの真っ白な身体がふわふわの上等なお坊ちゃまだということが分かりました。「なんと、これは神々しい!」と。
そうこうしておるうちに、王様にこのことが伝わり、「世に見せよ」との命令が下りました。

王様への謁見

 ボン様は(まだその時にはお名前はなかったのですが)危害がないように檻に入れられ、広間で王様の前に立たされました。王様が何とおっしゃるのか?婆ばはドキドキしておりました。しかし、ボン様は全く王様の前でも構うことなく、堂々としておられたのです。
 そして、なんと皆の者の前で、檻抜けの技を見せたのです。下僕頭が檻の戸を開けてボン様を入れなさる、ボン様がスルリと檻抜けをする。また下僕頭がボン様を追いかけて檻に入れなさる、するとまた檻抜けする…。この繰り返しで、下僕頭は顔を真っ赤にしてすっかりへとへとになってしまい、逆にボン様は平気な顔をしてぺろぺろと手をなめておられました。婆ばは途中からおかしくなって、でも笑っては不謹慎だと思い我慢しておりました。
「は~っはっはっ!」一番快活にお笑いになったのは王様で、婆ばも思わず吹き出しておりました。
 「よかろう!この者を教育して国を守らせようぞ。この様子ならきっと良き働きをするであろう。」そして「この者の名前をボンと名付けよう。」と王様はおっしゃいました。「さあ、ボンよ。大いにそなたの力をこの国のために使ってくれ。たのむぞ、ボン。」ボン様はそのまあるい目をキラキラとさせ、王様に忠誠を尽くすことを心に決められたご様子でした。

ボン様への教育、失敗と苦悩

 ボン様はそれはそれは猛々しく、剣術や柔術の技を磨かれました。誰もボン様にかなうものがないほどに、とにかく天性の才能であると感じられました。
 特に、壁を登ったり、大きく飛び上がったりが得意で、婆ばも驚かされることが多くありました。

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 ボン様はご自分の力が余り、発散するために時々お城の城壁に上ってしまわれます。
皆が「あれ~ボン様、降りておいでください!」と一同が上を見上げやんややんやの大騒ぎになったことが何度もありました。

ボン様が城壁の上を歩く、足を滑らせると「きゃ~」悲鳴とどよめきが沸き上がります。しかしボン様はすぐバランスをとり、「どんなもんだい!ここに来てみるがよい!」と得意になっています。

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おっとあぶない!

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ボン様の武勇伝

 ボン様はその他にもいろいろな武勇伝がございます。
高いところに上るのはとてもお得意で、それはしょっちゅうで…。
 そして、最も大変でしたのは「洗濯の間」の排水を抜いてしまわれ、お城の大広間からタヌゥーのいる台所、お城の廊下、玄関までも汚水の大洪水を引き起こしたことがございました。お城の住人たちは右往左往して。なんでもお城の中にそんな洪水が起こるなんて、誰も経験をしたことがないので、「水がきたぞ~!」とお城にある布と言う布を集め水を吸わせ、下僕たちが総動員でことを鎮めたのでした。
 これが2度もあったので、悪臭がお城の中に何日も残り、これにはさすがの王様も渋いお顔をされて、お城の大工頭も床が腐ってしまわないか、お城の床の点検が必要になりました。

 また別の時は、ボン様が広間の鏡に登り「がっしゃーーーーーーん!!」大きな音がお城に響き渡りました。なにごとか?と大勢が集まり見ると、大広間の大鏡が粉々に割れておりました。こんなことをするのはボン様しかおられない…と人々はささやきあい、しかしそんな時にボン様をお叱り申し上げるのは婆ばの役割でございます。今日と言う今日は、ボン様にお仕置きでございます。ボン様はしょんぼりされて、小さく成っておいででした。
 そんなお姿を見ると、強く叱れず。「ボン様、これも成長の一つの経験でございます。でも繰り返してはなりませぬ。」と強く申し上げました。
 しかし、翌日またボン様は大広間の大きな鉢をお割になり、今度は王様から直接お叱りを受けることになりました。そんなこともしょっちゅうございました。

 でも、それはボン様にとっては大事な経験でございました。その後に、ボン様の本領が発揮されるのですから。

ボン様と大ムカデの対決

 あれは大変静かな夜でございました。

ボン様はふと、何かの気配をお感じになりました。一緒に居った婆ばそのただならぬご様子に「どうかなされましたか?」とお尋ねしたのですが、ボン様は何も答えず月の塔の階段を忍び足で、しかもとても早く降りてゆかれました。


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何事かと思い、婆ばがろうそくをつけて見ると、もうそこにはどこから侵入したかわからぬ大きな、ボン様の2倍はあろうかと言う大ムカデとボン様が対峙しておったのです。大ムカデは赤い目を光らせて、100本の足をかわるがわる動かし、猛スピードでボン様に襲い掛かる!ボン様は華麗に交わし、大ムカデの背中を押さえる、大ムカデは怒って全部の足を激しく動かしながら背中をそらせ身体をくねらせボン様に嚙みつこうとする。ボン様は平然と払いのける。
 ボン様は怖いとも思われていない、そういつもの遊びの延長のようなふるまいでしたので、怒った大ムカデはその長い体をのたうちまわして対抗します。
 しかし大ムカデは勝ち目無しと悟って、右に逃げるとボン様が右をふさぐ、今度は左に逃げる、ボン様が左をふさぐ…右・左・右・左!!
 人間には目にもとまらぬ早業でボン様が大ムカデの進路を断つ。大ムカデも行くすべがなく。
 その間に婆ばは「ムカデ封じ薬」を取りに走り、「ボン様お下がりください!」と叫び、「封じ薬」を投げつけたことで、ムカデの大嫌いな煙が発生し、哀れムカデは自分が侵入してきた城の玄関の狭い隙間をもだえ苦しみ引きつりながら這い出ていった。ボン様と婆ばの手柄となりました。

「忍びの者」退治

 もう一つ大きなことがありました。

それは、お城のテラスの壁を伝い、忍びの者が侵入してきたことがございます。忍びは音もなく影もなく、婆ばが気が付いた時には家の中の壁に張り付いて長い尻尾を震わせながら家の中に入り込もうとしていたのです。
 それを目ざとく見つけたボン様は、「がぶり」と忍びの者を噛みついたように見えたのですが、しかし忍びの者は全くの無傷で、しっぽを置いて逃げ去りました。逃げ去ったといっても、婆ばが逃がしたのです。
 何故なら、忍びは国に帰りその主にこう報告をするでしょう。「忍び入りましたが、かの国にはすごい親衛隊長がおり、とても侵入はかないませぬ」と。

数々の手柄

 ボン様はその他、スズメバチの侵入、カメムシの侵入、カナブンの侵入、恐ろしきゴキーブリーや大きなクモの侵入…数え切れぬほどの手柄を立て王様からの信頼を勝ち得てきました。
 「ボンよ、よくやった!」と王様から褒美と勲章を授けられました。この頃にはようやく、城や国中のものどもが王様の選択は正しかったのだと悟り、ますます王様へ畏敬の念を強めたのでした。

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