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牌を全て裏返した老夫婦

週末の某日俺は息抜きのために大手優良チェーン店に来店した。
最近は4麻ではなく3麻も増えている。

俺は夕飯前に気分転換の1局を打てればそれで良かった。

大手優良チェーン店は金曜日19時を過ぎると仕事帰りのサラリーマンやOL、そして主婦などがこぞって訪れる地域住民に根付いた大衆店であった。

卓につくと定年退職前の65歳前後のご老人とその奥様が卓についていた。
どうやら会社勤めされている旦那が帰宅前に奥様と合流し、牌を握りたいと思ったのか駅前で待ち合わせて店に来たようだ。

卓につくと卓に並べられた牌の美しさに俺はうっとりした。
お店の店員が綺麗に牌を磨いて、手垢一つ見つからない程の美しい輝きを放っていた。

卓に整理整頓され綺麗に並べられた牌の美しさ。。

試合が始まり初老の男性が不意に奥様に喋り出した。

爺さん「牌が美味しいのは赤いのじゃろう?」
婆さん「そうじゃな。赤く輝いている牌が旨いのじゃ」
俺(・・・どうやら赤ウーピンのことを言っているらしい。)

爺さん「私の所には、無いの~」
婆さん「私の所にも無いの~」
俺(・・・ さっさと選べ!)

ふとそのような話をしていると何を思ったが、婆様が綺麗に並べられた河の牌を裏返し出した。

婆さん「牌は裏返しにすると分かるのよ」
爺さん「そうじゃの」

二人の老夫婦は、私や周囲の人をお構いなしにおもむろに赤5ピンを探し始めた。

婆さん「牌を触って中央に寄っているのが美味しいの」
婆さん「ちゃんと裏返しして触ってみないと分からないでしょ」
爺さん「そうじゃの~」

二人の老夫婦が綺麗に整列した牌山をランダムに捲りだし、捲った牌を卓に放置しだした。

爺さん「これかの~」

俺(・・・確かに赤い。)
爺さん「これは赤く無いから駄目じゃな」

2ピン、4ピン、8ピンは赤く無いので全て放置された。

爺さん「感触的に婆さんこれじゃろ」

俺(・・・惜しい。それは赤5ピンでは無く4ピンだ。4ピンと6ピンは盲牌のときに赤5ピンと錯覚し易くぬか喜びし易い牌だ。)

このようなやり取りを婆様と爺様がやりだしてしまいには全ての牌をヒックリ返して赤5ピンを見つけようとした。

私の怒りは沸点に到着し、何も言わずにその卓を離れ店を後にした。

そして、店員にこう告げって帰った

「本日の目玉商品である店頭に綺麗に陳列された3コ198円の新鮮なトマトを汚い老夫婦が全てひっくり返したり、袋から出してベタベタ触っていたよ。野菜や肉類などの生鮮食品は触ると痛みが早いので注意した方がいいよ。未だコロナ禍で衛生的にも良く無いのだから。忙しい中御免な。」

そして俺は地元の大手チェーン店スーパーを後にしながら思った。

俺が地元の大衆店に行ったのが間違いだったのか?それとも老夫婦がおかしかったのか?

道を歩きながら雀士達の事を考えた。麻雀を打っている雀士達は皆、1回の選択を綺麗にできる人種だ。このケースであれば目視で確認して手にした牌(トマト)をストレートに手牌という買い物カゴにストレートに迷わず入れられる。それが例え相手の当り牌でも赤5pやドラでなくても。

あ、そうか。麻雀を打つことで決断力結果に対する受け入れを自然と学んでいる人種なんだ。

河に一度切った牌を戻したり、鳴き直しをしたり、優柔不断からくる不快な所作を取る雀士達には、これからは「このトマト野郎」と言う事に決めた。

老夫婦が盲トマトをしていなそうなトマトを購入して家で冷やして食べたけど1ピントマトでも十分美味しかった。

そんなスーパーでの出来事であった。

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