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大公開! これが、ゲーム条例施行後の香川県(高松市)の親御さんが持っている意見だ!

2020年2月期の香川県議会で可決され、同年4月から施行された「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(以下、ゲーム条例、当条例)」。当条例の素案が公表されてからはその内容、パブリックコメントの結果発表がされてからはその工程や集計の方法と、施行後半年が経過しようとしているにもかかわらず、当条例は、それを構成するすべての要素について未だ批判が絶えない。
そんな当条例について、当条例の直接的な影響を受ける香川県民は、当条例に対してどのような意見を持っているのだろうか。

地元マスメディアの1つである四国新聞社が、提携先の共同通信社と一緒に、それを垣間見せる 調査 を行っていた。しかし、調査に応じた人が使った電話の種類や年齢層の散らばりが非公開で標本の詳細情報が不明ゆえ「レポート作成時に作為的なフィルターがかかっているかもしれない」と訝る人もいるのではないかと思わせる内容だった。

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ちなみに、RDD方式による世論調査では、標本として選ばれる固定電話と携帯電話との比重の置き方に配慮しなければならない。そして、調査に応じた人が使った電話の種類に関する情報や回収率は、以下のように、通常は開示されるものである。

RDD方式正しい調査の公表の例

私は、幸か不幸か、香川県高松市を中心に、当条例の規制対象であるゲーム機など、個人向けIT機器をお持ちの家庭を訪問して技術サービスを提供する業務に携わっている。そこで、アイスブレイクや対象機器の処理待ち時間を使い、当条例に対してどのような意見を持っているのか、また、当条例対象のIT機器の使われ方などを簡単に聞き取りしてみた。
なお、ゲーム条例検討委員会委員長だった大山一郎氏は、マスコミからのインタビューに対し、タイトル画像にあるようなコメントを出した。それが「事実」かどうか、今から一緒に見てみよう。

標本の属性など、この調査の実施環境は下記のとおりである。

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高松市統計書「高松市の人口」の入手先は こちら です

質問1-1.ゲーム条例施行後、お子様のビデオゲームのプレイ時間は増えましたか

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補足事項による数値補正(時間の加算)が加わるため、ゲーム条例の施行が、お子様のビデオゲームのプレイ時間に何か決定的な影響を与えたとは「判断しかねる」結果となった。

質問1-2.増えたとお答えの方:どれくらい増えましたか

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こちらについても、ゲーム条例の施行がお子様のビデオゲームのプレイ時間に何か決定的な影響を与えたとは「判断しかねる」結果になった。その理由として、調査実施時期の関係で、補足事項による数値補正(時間の加算)が加わっていることが挙げられる。

質問2-1.ご家庭で、ゲーム機含めた個人向けIT機器の運用ルールを決めていますか

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「決めていない」がやや多い結果になった。それでも、ゲーム条例の有無にかかわらず、IT機器の家庭内運用ルールを決めて実行に移している家庭が4割以上あった点は、技術者目線からは喜ばしい傾向だ。そこで、それぞれの選択肢について、ルール作りの要である「ペアレンタルコントロール機能」についても尋ねてみた。

質問2-2.ペアレンタルコントロール機能についてご存知ですか

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いずれも「知らない」が多くを占めた。技術者目線では残念な結果といえる。ちなみに、フィルタリングだけでは不十分である点を含め、同機能について概要を説明すると、興味をお持ちいただいた親御さんは多かった。

この結果から、啓発者がペアレンタルコントロール機能に対する正しい知見を備え、それに基づいた情報伝達を行うことが、IT業界から見た、個人や家庭における望ましいコンピューターの使い方を促進させる上で、課題の1つになっていることを示す。

質問3-1.ゲーム条例が施行されましたが、効果はあると思いますか

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質問してそれほど間を置かずに「効果はない」「判断しかねる」と答えた親御さんがほとんどを占めた。すべての選択肢について追加で質問をしたので、それぞれの結果を見ていきたい。

質問3-2.効果があるとお考えの方:ゲーム条例にいう「基準」をどのように生かそうとお考えですか

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少数だが、共通している点は「家庭での運用ルール作りに適用するために役立てる」と思われる

ただ、以下の記事で、第一線で活躍している医師や専門家が指摘しているように、この方針は、不登校や引きこもりなど、ゲーム条例が本来志向している諸問題の解決を阻害する要因になりかねないことを忘れてはいけない。

質問3-3.効果がない、判断しかねるとお考えの方:そのように考えた理由は何ですか

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複数回答とした。結果、「既に家で運用ルールを決めているから」以外の項目は、ゲーム条例の制定に主体的に関与した県議や医療従事者、教育関係者にとっては、受け入れがたいであろうものになっている。多かった回答において共通している項目は「一律に規制をかけるというが、その行為自体、もしくは、その方法に少なからぬ疑問を持っているとなる。

ー 以上が、聞き取り調査の結果だ。

「実際の意見」を集めて著者が感じたことは?

家族の皆様方の「実際の」意見は、タイトル画像で大山一郎氏が言っていたものとは違っていた。これは、ゲーム条例の策定過程において、家族の皆様方の実際の意見を反映させなかったことを裏付けている。そして、現行のゲーム条例は、お子様がいらっしゃる家族が望む内容には程遠いものであることについても言及できる。

特に、質問3-3に見られた「ほとんどの親御さんがゲーム条例に対して抱いている疑問」を払拭するには、2021年に予定される当条例の改定で、努力義務や要請を「超えた」領域に踏み込まざるを得ないだろう。それはすなわち、最も手っ取り早く具現化が可能であろう「罰則規定の追加」がされることを意味する。

だが、それを行うと、当条例は、日本国憲法を代表する国内法への抵触や、子どもの権利条約への違反行為をすることになる。言い換えれば、関連法令を踏みにじらない限り、当条例は、施行しても効果はない。私的に行ったこの簡単な調査からも、それが導き出せる。それが今のゲーム条例なのだ。

この疑問の払拭には、公開の場で、香川県や、主体的に策定に関わった県議自身が、条例に定めた時間規制の根拠を含めた詳細を説明することが、本来取られるべき対処ではある。しかし、残念ながら、それを期待することは一切できないだろう。パブリックコメントへの回答ですら、以下の記事でも指摘されているように不誠実極まりない内容を繰り出し、あまつさえ、今もって公式な謝罪がないことを考慮すると、そうみなさざるを得ないからだ。

だから、私には、そんな法令が「まとも」に稼働するとは、とても思えない。

ー 最後までお読みいただき、ありがとうございました -

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