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45 伝えることの難しさ


何度思い返しても、また同じことが起きたなら
私は同じことをして、こうして同じ気持ちになるだろうという
嫌な思い出がある。

過ぎ去ったことをいつも思って、気にしているわけではないけれど、
でも時折思い出しては考える。
やっぱりソワソワして、心がチクチクして、嫌な気持ちになる。
相変わらず折り合いがつかないのが、本音だ。


ものつくりの仕事をしていて、極力避けたいのは
他人様から依頼されて物を作ることだ。
長年の経験からそうしている。オーダーメイドは致しません。

人はわがままだ。もちろん私も人間なので、私だってわがままだ。
オーダーメイドということを完全体勢で受け入れてしまうと、
それが大変なことになる。
正直、できる人を尊敬する。全然嫌味じゃなくて。

相手の希望を全面的に受け入れ、
それでももし、相手からの変更希望があれば
それを受け、また作り直し、、、って、
そんなこと、できるかいぃ!!
その分のお金もいただけるのでしょうか、いただけないんですよね、
なんか普通は。
おかしなことです、まぁ、それは置いておいて。

人との共同作業的な、途中まで相手が製作して、
その残りを私が製作する的な、
そういう仕事もある条件が揃わないとやりたくない。
逆(私が作った後に、相手が作る)の場合はいいんだけど。

というのは、
お互いに『同じ気持ち』で、『同じ本気』で作らないと
良い物が出来ないから。意外とこれが分かっていない人が多い。

✳︎

1度、とあるハンドメイドのお店から依頼があって
散々迷って、こちらの気持ちも希望も伝えた上で、それでもどうしてもと
言っていただき、受けた仕事がある。
その時も、ものすごく時間をかけて、細かなことまで指示をさせてもらった。

そういうことに掛ける時間だって、実は大事な「私の時間」なのだ。

相手からしたら面倒くさい奴にお願いしちゃったなと、後悔もあったかもしれない。鬼教官だと思ったかもしれない。
でも販売価格が私の想像をかなり超えていたので、ちゃんと価格に見合う仕上がりにしないといけないと思った。

理解してもらって製作してもらった物を受け取って
私が製作を引き継いで完成させた。
製作した物を送り返した時に、初めて全てを理解してもらった。


『ちゃんと製作するということ』


ハンドメイドだからゆるくていいとか、ちょっと雑でもいいとか
それはその価格に見合うものなのかということなど、そんなこと。
受け取った彼女はとても満足してくれたし、勉強になったと言ってくれた。
お客様からも好評で、なかなかいいお値段だけど大丈夫かなと思ったけど、完売した。

それから数年後、また彼女から依頼があった。

前回、だいぶ頑張って作ってくれていたので、今回も同じように、、、と
思っていたのだけど、送られてきたものはとても雑な物だった。
その上、とても納期を迫られた。
向こうから送られてきたのは予定の期日をだいぶ過ぎていた、
のにも関わらず、納期はいつか?という催促が続く。


あれ?なんだこれは。

分かったんじゃなかったのか、なんなんだ?
こういうものづくりはしたくない、でも受けてしまった。
やっちまった、、、失敗した。
でも、これは受けてしまった仕事だ。やるしかない。


もう、吐くほどの気持ちで、
彼女の雑なミスも、全部時間を掛けてカバーしながら1つずつ縫い上げた。
ものすごい集中力が必要だったし
1つずつ、ちょっとした変更を交えながら、、、

ん?私、ここまでしなくちゃいけないの?

売る相手は私の客じゃない。何度も頭をよぎる。
それでも私の仕事だ。
いい加減な仕事はしたくないし、言い訳もしたくない。
なによりお客様にはこちらの都合は関係ない。

『プライド』
『意地』

この言葉だけを支えに、私は神経を尖らせて向き合った。
とにかく前回の3倍以上の時間を掛けて完成した頃には
もう泣きたくなった。

彼女の展示会に間に合うように、他の自分の仕事はさておき、
とにかく完成させた翌日はストレスと疲労で寝込んでしまった。


商品を送った後、
言いたくなかったのに、我慢しようと思っていたのに
どうにも納得できなくて、メールしてしまった。

今回のは無いんじゃないか?と。
余りにも雑で、私はものすごい苦労したと。

そしたらお返事で謝まってくれたんだけど
その理由がまた大きなことで。
というのは、2年くらい前に旦那さんが急死されていて
(これは私が商品出荷後に彼女のブログを読んで知った事実)
彼女は体調を崩し、精神的にもとても辛い日々を送っていたそうで
今回の展示会は急遽決まったことで、
そういった重い気持ちや辛い状況から抜け出すための、第一歩なのだと。
周りの人に励まされて支えられて、展示会に向けて立ち上がれたと。
本当に感謝していると。

うぅーーーーーーーーーーーん、そうですか、、、と。

その状況や気持ちや彼女自身のこと、全てにおいては
全面的に辛い気持ちも
今、こうして頑張ろうとしていることも、
応援してあげたいと思うよ、
心から。

でも、それを、説明も理由も無く、雑な仕事をして納期を急かして
貴女の大変を理由に、私が大変になるというのは、間違っていませんか?
え?私の心が狭いのですか?
優しさが欠けているんですかね?こういうのって。

その時も気持ちがぐるっぐるしたけど、正直、今でも分からない。

そうか、、、大変でしたね、
だったら仕方なかったですね、、という気持ちよりも
いや、逆に、ものすごく彼女が自分勝手だと思ってしまった。
雑な仕事をしてきたことよりも、納期を急かされたことよりも、
自分もまだ不安定で、無理をしてでもやりたいと思った展示会に
どうしてそんな無理な状況を他人に負わせることができるんだろうかと。
 

大変すぎる時って相手の気持ちとか、考えられないんだよね、、、とか
そういう時は周りが温かい気持ちで受け止めてあげなきゃ、、、とか
そういうのは重々分かっているし、そうだと思う。
でもそこに第三者の『お客様』が存在する時にも通用するのかな?
お友達じゃ無くて、物の対価としてお金を払ってくれるお客様には
厳しいけど関係ないことなんじゃないかな。
もちろん、私にとっても。
まぁ、私には最初からその言い訳をして欲しかったし、
そうであれば少しは気持ちが違っていたのかなとも思ったけど
やっぱり無しなんじゃないかなと、思ってしまう。

考え方の違いなのか、気持ちの違いなのか
もうちょっとだけ、突っ込んでメールしたら
相手は気分を悪くしたようで、「どうもすみませんでした」という内容の
短いメールで、恐らく今後も含む、全てが終了した。



私はどう対応したら良かったのか。
何も言わずに、ぐっと堪えて、仕事をまっとうした後に
彼女をブラックリストに入れれば良かったのか?
ブロックして、今後は完全お断りをすれば良かっただけなのか?

ただただ自分の不満をぶち撒けたかったわけじゃない。
本当は気付いて欲しかったし、分かって欲しかった。
でも『分かって欲しい』は相手も同じだったかもしれない。
じゃあ、着地点は何だったんだろう?


こんな風だから人が絡む仕事は好きじゃない。
人と絡むとこういうことが普通に起きる。
こうなってしまうと「どっちが責任感があるか」とか
「どっちがより多く気にできるか」という話になってしまう。

でも本当の私は
「自分に出来ることで誰かの為になるのであれば
やってあげたい」という気持ちが大前提なのだ。
でもこういう気持ちになるなら、やるべきじゃないし、
私自身が「やれる器じゃない」ということだと思う。

因みに相方は完全にこういったことが嫌い。
良く分かる。
だって私みたいに未だにぐるっぐるするなんて
馬鹿みたいだからね、そりゃそうだろうよ。



こうやって、こんな歳にもなって、諦めないで戦ってると
時々途方もなく疲れてしまう。
結局やっぱり答えは分からずに、少しだけ悲しい気持ちになる。
いつまで経っても心が痛い。

あーーーーーーー。
ここで吐き出して、もう楽になるかな?
結局着地点は分からない、ってことで、もう考えることをやめにしたい。
ついでにもう2度とコラボとかはしないと決めてしまおう。

久々に思い出しても、こんな気持ちになるなんて
正直自分でも驚いたわ。
この件、これにて終了〜(笑)。


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