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オリックス打者配球分析('23)


1.はじめに

プロ野球界に昔から存在する「2年目のジンクス」。
大ブレイクしたルーキーなどが活躍の翌年に成績を落とす傾向をそう呼ぶが、これは一年間活躍した選手を他球団がオフの間に徹底的に対策を練っていたことが要因の一つであることが推測される。
しかし、データ分析技術が進む昨今では対策に1年も要することはなくなった。
あらゆる球場で動作解析システムが導入され、各球団のアナリストが毎日徹底的に分析し苦手なコースや配球を徹底的に洗い出すことによって、1週間や2週間ほどで"攻略法"を確立することも珍しくない。
そんな時代の中でリーグ3連覇を果たしたオリックスバファローズだが、今季は打線に新たに西川龍馬が加わり、より一層他球団のマークが厳しくなることは想像に難くない。
今回は'23シーズンのバファローズ打者への配球を分析し、そこから他球団が生み出した各選手の攻略法や各選手の今後の課題を探っていく。

2.分析方法

分析には'23シーズンのペナントおよびポストシーズンの一球速報データを使用する。
また、対戦投手の偏りによる球種のばらつきを抑えるため、ストレートやツーシーム系を速球、スライダーやカーブ系を曲がり球、それ以外のフォークやチェンジアップ系を落ち球と定義し球種のグルーピングを行う。
その上で全体と決め球(=2ストライク以降)の左右投手別の各球種の投球割合、スイングにおける空振り率を表すWhiff%、長打率に加え、各打者の球種ごとの長打率を基に図示化した得意/苦手ゾーンや、投球傾向をカーネル密度推定で図示化した投球チャートを活用する。
なお、対象選手は左右投手それぞれで全球種グループを20球ずつ以上投じられた12選手とする。

3.打者別配球分析

1 福田 周平

1 福田 周平

左右どちらも苦手な直球を投げ込まれることが他の選手よりかなり多く、徹底的に力で封じ込めようとされていることがよく分かる。

2 若月 健矢

2 若月 健矢

左投手の落ち球の長打率は良いものの直球や曲がり球はWhiff%も長打率も平均より悪く、直球中心の配球をされている。
右投手に対しても同様に直球への対応が悪く落ち球への対応が良いが、配球は落ち球の割合が高くそれを狙い打ちできていることが分かる。

4 森 友哉

4 森 友哉

左投手の直球に滅法強く、特に追い込まれてからは確実に当てるバッティングで低いWhiff%と高い長打率を残している。
それを踏まえてか落ち球を積極的に使われているが、少しでも浮くと逃さず捉えており隙のなさを存分に見せている。
右投手の直球をかなり得意にしており曲がり球中心に攻められているものの、それもほぼ全てのコースで打ち返しており、追い込まれない限りまず抑えられない打者になっている。

6 宗 佑磨

6 宗 佑磨

左投手の曲がり球を引っ掛けることが多く長打率が低くなっているが、低めに投げ切られない限りは打ち返しており、得意な直球中心の配球をせざるを得ない状況に持ち込んでいる。
右投手の変化球は長打率がかなり低く、追い込まれてからは変化球中心の配球で抑え込まれている。

8 ゴンザレス

8 ゴンザレス

左右ともに徹底的に落ち球で攻められているが、左投手相手の右打席では良いWhiff%および長打率を残しているのに対し、右投手相手の左打席ではかなり悪く、この違いが左右別成績の差に表れている。
また、どちらの打席でも高めのボールゾーンの球は共通して苦手であり、今後も釣り球を多用してくることが予想される。

9 野口 智哉

9 野口 智哉

左投手の変化球のWhiff%および長打率が直球に比べてかなり悪く、変化球中心の配球をされている。
右投手も同様の攻め方をされているが、追い込まれてからは食らいついており、全球種で平均より高い長打率をマークしている。

24 紅林 弘太郎

24 紅林 弘太郎

左投手の低めの曲がり球を大好物にする一方で直球に詰まらされることが多く、外角の直球を中心とした配球をされている。
右投手に対しては打って変わって直球のWhiff%および長打率が良く、配球もそれに応じた曲がり球中心のものになっている。
また、追い込まれてからも空振りすることが少なく上に高い長打率を残している。

30 廣岡 大志

30 廣岡 大志

リーグによる投手の違いが影響してか、これまで得意だったはずの左投手がどの球種でも打てておらずかなり苦手になっている。
右投手に対しては甘めのコースの直球を逃さず打てているものの、追い込まれてからの直球にタイミングを取れておらず、変化球で追い込み直球で打ち取るというパターンを確立されてしまっている。

44 頓宮 裕真

44 頓宮 裕真

左投手は直球を中心にどのコースのどの球種もWhiff%および長打率が著しく良く、追い込まれない限りは抑えられない状態になっている。
右投手に対しても左投手ほどではないものの全球種Whiff%および長打率が良く、外角低めに投げきられなければヒットになる好打者であることが分かる。

61 茶野 篤政

61 茶野 篤政

左投手からは主に変化球で攻められているが、甘いコースを中心に高い長打率を記録した。
しかし、直球に対してはWhiff%も長打率も悪く、直球中心の配球になった場合の対策は必要である。
右投手の直球はどのコースでも打てておらず、追い込まれてからはその直球で仕留められるケースが多くなってしまっている。

67 中川 圭太

67 中川 圭太

左投手の直球や落ち球のWhiff%も長打率も著しく良く、追い込まれてからもその状況を苦にせず結果を残している。
その一方で、左右どちらの投手に対しても追い込まれてからのボールゾーンへの曲がり球に手を出すことが多く、曲がり球中心に攻められている。

99 杉本 裕太郎

99 杉本 裕太郎

左投手の外角直球に強く、追い込まれるまでは高い長打率を記録している。
追い込まれてからは変化球をマークするのか、長打率がかなり良化する一方で直球の長打率が悪化している。
右投手に対しては全球種で良い長打率を記録しており、よく使われている落ち球にもまずまずの対応ができている。

4.おわりに

打者によって苦手な球種で極端に攻められている場合とそれほど得意苦手と配球に関係がみられない場合があり、その違いがどこから生じているかが大変気になるところである。
また、この分析で洗い出される打者の課題については、当然本人たちも理解して克服しようと取り組んでいるはずである。
今季の配球でも同様の分析を行い、今回の結果からどのように変化したか見てみるのも面白いだろう。

開幕まであと1ヶ月半。
打者とバッテリーの熱い対決が再び始まるのが待ち遠しい限りだ。

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