書きたい小説がある。描きたいイラストがある。
「アタック25」最終回の放映日(2021年9月26日・日曜日)の午前3時、眠れなくて、思わず「ソードアート・オンライン」の最終回を見た。
そこで思った事が幾つか。
・キリト(桐ヶ谷和人)とアスナ(結城明日奈)の様な両親の元に生まれてきたかった。
優しそうで、仲良しで、夫婦喧嘩や仲違い、意見の食い違い、対立が少なそうで、その分、意思疎通がしっかりとしていそうな二人。
私の両親と比較して、羨ましいなと思ってしまう。
・キリトの技「スターバースト・ストリーム」は、ひょっとしたら「アタック」の早押しで活かせるのでは?
「アタック25」の解答席には、左右1つずつに早押しボタンがある。
その為、右手でボタンを押しがてら左手でボタンを押す事も出来る。
如何に早く押して解答権利を掴めるか。
そう考えると、キリトの代表的必殺技である剣術「スターバースト・ストリーム」を応用する手が「アタック25」を制しやすいのではと思う。
・もしも、「ソードアート・オンライン」の世界の中に「パネルクイズ アタック25」があり、キリトとアスナのリアルの同級生に「アタック25」のパーフェクト達成者がいたとしたら…どうストーリー展開になるのか?また、その際の「アタック25」の司会は誰?
「ソードアート・オンライン」の第1期は2012年に放送された。
その時の「アタック25」司会者は、朝日放送テレビアナウンサーの浦川泰幸さん、出題者は同じく朝日放送テレビアナウンサーの加藤明子さん(注)。
(注:翌年の3月末をもって産休に入り、朝日放送のアナウンサーだった角野友紀さん※が、出題者として参加。物語として成立する場合で、青年が参加した時は退院してすぐ(2013年3月中旬収録、3月の末に放送された分。=角野アナウンサーが入る前の回)として設定。)
(※2015年2月に結婚・翌月にABCを寿退社・フリーアナウンサーに転身をした為、浦川アナウンサーと共に2015年3月28日放送分をもって卒業。)
しかし、作品内での設定は「西暦2022年」なので、「アタック25」の地上波放送が終了し、BSで復活版である「アタック25 Next」が放送開始。
その場合、司会者は谷原章介さん(5月第1週から7月31日放送分まではフリーアナウンサーでCBCテレビ「ゴゴスマ」のメインキャスターの石井亮次さんが代役を務める。)、出題者はフリーアナウンサーの沢木美佳子さんになる。
…等。
何故、今、その事を思い出しながら考えているのか…。
それは、以下の2つの事が進行しているからだ。
・「劇場版 ソードアート・オンライン-プログレッシブ-星なき夜のアリア」円盤発売&「劇場版 ソードアート・オンライン-プログレッシブ-冥き夕闇のスケルツォ」公開。
昨年秋に公開された「劇場版 ソードアート・オンライン-プログレッシブ-星なき夜のアリア」が、遂に7月8日(金)に円盤のリリースが決定。
また、続編の映画「劇場版 ソードアート・オンライン-プログレッシブ-冥き夕闇のスケルツォ」が9月10日(土)に全国公開される。
→2022年8月22日、劇場公開の延期が決定。改めて後日、公開日を発表する。
→2022年10月22日に延期が決定。
・BS Japanext(BS:263チャンネル)開局&「パネルクイズ アタック25 Next」放送中(7月10日から全国3会場で予選会開催。)
総務省等の認可を受け、2022年3月27日に開局したジャパネットたかたグループのBSチャンネルである「BS Japanext」。
そのチャンネル開局日に、11時間生放送された開局記念番組にて、「アタック25」が復活を果たす。
以後、「パネルクイズ アタック25 Next」として、毎週日曜日午後1時(本放送。再放送は翌週土曜日の午後1時から。)から1時間に拡大したパッケージで放送再開※。
(※8月7日放送の本放送分から、毎週日曜日午後1時30分〜(再放送枠は前日の8月6日(7月31日放送の再放送)から毎週土曜日午後1時30分〜)に変更。放送尺は1時間で変更無し。)
→2022年10月2日(日)放送分から毎週日曜日午後1時25分〜午後2時30分(土曜再放送枠(字幕込み)は土曜日午後1時30分〜午後2時30分)。
それに合わせ、7月10日(日曜日・参議院選挙投票日)に東京で開催される予選会を皮切りに、東京、大阪、福岡の3都市で夏の予選会が開催される。
その為か、脳裏では、最終回の裏側で幾つかの「こんなストーリーの主軸」が思い浮かんだ。
(※以下はゲーム内では「西暦2022年」とあるが、リアルでは「2012年」という設定で記載する。)
執筆するに当たり
なお、この妄想小説類は個人で楽しむ為に執筆する作品である為、商業的な意図で執筆する作品類ではない。
また、場合により、以下の団体や個人に許可申請をした上で作品の執筆をするものとする。
・「ソードアート・オンライン」シリーズ著作者の川原礫先生並びにKADOKAWA電撃文庫等の関係者
・アニプレックス、Sony Music等で構成される、TVアニメ「ソードアート・オンライン」シリーズ製作委員会
・「パネルクイズ アタック25」シリーズ制作著作担当の朝日放送テレビ株式会社、企画制作先の株式会社エー・ビー・シーリブラ(ABC Libra)
・BS Japanextの運営と番組制作等に携わる株式会社ジャパネットブロードキャスティング
等
・ストーリーの主軸①「青年が、リアルでも一人で立ち向かう。」
ストーリーの途中からキリトとアスナと共に、黒髪の青年がチームに参加。
また、精霊王と名乗る敵アバターからアスナを救出する作戦では、キリトとリーファがアスナを助けている間、その青年のアバターは
「親の仇、今、此処で討たせて戴く。そして、この怨み…、晴らしてくれようぞ。」
と言い放ち、容赦なく滅多打ちにし、結果、一人でラスボスのアバターを倒す。
そして、アニメ1期最終話の冒頭にある、あのシーンに繋がる。
何かを悟ったのか、ナーヴギアを外して自宅のマンションを飛び出し、急いで自転車を漕ぎ、リアルのアスナ(結城明日奈)がいる病室に向かう。
青年がダッシュでリアルのアスナが収容されている病院に向かっている途中の道で、リアルのキリト(桐ヶ谷和人)と合流する。しかし、収容先である病院の駐車場に付いた瞬間。
突如として現れた、「精霊王」と名乗るラスボスのアバターを動かした男(須郷と名乗る男)が二人を目掛けて発砲。
しかし、リアルのキリトが男にダメージを与えて、それ以上のダメージを青年が男に食らわせて、男はまるで殺虫剤を掛けられて弱まるゴキブリの様に、自らのワンボックスカーのドアの前に倒れ込む。
しかし、弱まる男の姿を見ても、青年の男に対する攻撃は止まらない。いつまでも止めない。
どころか、リアルのキリトに対して
「早く、嫁(アスナ)のいる病室に行け!!キリト…お前は、アスナの旦那だろ!?早く、アスナの元に帰りなさい!!」
と叫び、キリトを病室に向かわせる。
急いでリアルのアスナがいる病室に向かうキリトの代わりに、その青年のリアルが「精霊王」と名乗るラスボスのアバターを動かした男に対して、幾度と無くとどめを刺して、同時に、男の護衛や仲間達を始末して、男の仲間達の変わり果てた姿と合わせて着火・焼却し、放浪。
リアルのキリトとアスナが合流して、二人が病室の窓から外を眺めた時には、既に駐車場に青年の姿はなく、代わりに、銀のワンボックスカー付近で燃え上がる火柱と、その火柱の中で息絶えて燃え上がる男達の変わり果てた姿だった。
以後、部屋を飛び出しては事件の首謀者を調べては始末し、調べては始末し…を繰り返す。
そして、マンションに戻ってはレトルトの味噌汁とご飯、僅かなおかずを食べ、緑茶を飲み、残さずに食べ終えると横になり、頭にナーヴギアを装着し、必ずゲーム内の世界に潜っては一人で最高難易度のクエストを攻略し、攻略しては魔物の討伐を行い、討伐を終えては(その魔物を)残さずに捕食して、魔物を捕食しては筋トレや激しい運動でカロリーを使い果たし…を繰り返していた。
リアルのアスナとキリトこと明日奈と和人が青年に注意を注ぎ始めたのは、青年が入院する数週間前。
切欠は、青年の両親の通夜の1週間前の正午過ぎ、後に和人等と手を組む菊岡誠二郎(総務省に属する「総務省総合通信基盤局高度通信網振興課第二別室(通信ネットワーク内仮想空間管理課)」に在籍する総務官僚で、和人達の事情聴取を担当する。)が同僚を連れて青年の両親の遺体が安置された斎場(設定上は都内にある湘和会堂町田(東京都町田市森野1丁目11-14)の様な、縦長の建物。)に向かい、青年の両親の弔問を行いがてら、青年に
「青年の両親が菊岡の同僚である」
という旨と
「青年が所属するサークルのメンバー全員の所在地と個人情報を把握しているだけでなく、そのメンバー全員から「弔問に伺いたい」とオファーを貰ったので、弔問者のリストに加えて欲しい」
という旨に加え、更に、
「青年の両親の職場が全面的に負担をする(引き出物、葬儀ホール・公営火葬場の会場使用料、お布施、霊柩車・寝台車・送迎車利用費(ガソリン代を含む)、精進落とし用ケータリング料理の代金、その他の処理費用全てを含む額を菊岡の職場が全額負担する)形で通夜と葬儀、職場限定のお別れの会を実施したい」
という旨、
「明日奈が退院した頃合いを見計らって、リアルのエギルが運営する飲み屋でオフ会を行うので、青年も来て欲しい」
という旨を話し、青年が渋々ながらも、両親の通夜と告別式にサークルのメンバー全員を参列する事を了承した事だった。
本来の青年の予定では、菊岡達が弔問に伺う前までは、青年は両親の通夜と葬儀に、後述する唯一の親戚と両親の職場の人間、マンションの管理人以外は呼ばない(呼んだとしても、香典等を固く辞退する)「近親者のみで行う密葬型家族葬」の安価なスタイルで行おうと考えていた。
その為、菊岡から条件と優遇措置を突き付けられて、悩んでいたのだ。
そして、青年の両親の通夜の前日。
式場内の通夜の会場(和室タイプの控室兼遺体安置所)に菊岡と共に和人と明日奈、和人の妹・直葉が弔問に訪れる。
なお、明日奈は、この時点では「一時退院」という形だった為、和人達と同じタイミングで病院に戻り、退院準備を進める。
直葉は青年の友人兼「SAO」での青年のサークルのメンバーである、リーファのリアルの姿。
そこで、直葉は和人が語る青年の姿を生で見て、彼の背中から漏れ出て、摩天楼の様に蠢く様々な想いを感じた。そこから、直葉は青年の事を注目する様に。
翌日の午前11時30分。
青年の両親の通夜の日を迎え、青年は喪服姿で祭壇の前に敷かれた布団で、安らかに眠る両親の遺体に寄り添っていた。その様子を、入口から心配そうに眺める明日奈と和人、直葉の3人。
しかし、青年はそんな3人に気付いていなかった。どころか、青年は自らの両親の遺体と向かい合い、声を殺しながら大粒の涙を流していた。その姿を目の当たりにした明日奈と和人、直葉の3人は、あまりの状況に言葉を失いながら、背後で青年を見守っていた。
数十分後。
正午を過ぎても青年の動きに変化はない。
あまりにも青年がそのままの状態でいるので、痺れを切らした明日奈と和人が青年の元に突撃。すかさず、青年を抱き締めながら慰める。
同じタイミングで、直葉が
「独り身なので、喪主である青年に(精進落とし用の料理を提供する)厨房スタッフのご厚意でお昼ご飯を用意するから、精進落としの間に来るように伝えた筈なのに、来ない。何かあったのでは?」
と話しながら困っている葬儀場の運営をする葬儀社の社員兼葬祭ディレクターの男性と合流し、青年がいる通夜会場兼控室ヘ。
その日のお昼…心痛な状態の青年を連れてきたお礼に葬儀社からの厚意で厨房スタッフから明日奈と和人、直葉の分もお昼ご飯を提供。
(因みに、喪主が未成年である事と、式場内に厨房や会社直営のケータリングサービスがある事、会社内の敷地や管理スペース等で(その葬儀社の子会社またはその会社が)飲食店の経営をしている等の理由から、無料兼特例で提供。)
そのタイミングで、菊岡から預かっていた「ある物」を青年に渡す和人。
気まずく感じる青年に、明日奈と和人が青年の耳元で優しく説得する。
二人に説得されて、青年は和人から「ある物」を受け取った。
その「ある物」は、両親が持っていたキーホルダー付USBプラグだった。
中には、両親からの遺言データがビッシリと詰まっていた。
昼食後。
控室で両親からの「遺言」音声データを聴き、青年は静かに落涙しながら目を閉じた。
そして、数時間後。
僧侶が定刻通りに来ては読経が始まり、予定通りに、無事に青年の両親の通夜が終わり、青年は未成年ながらも丁寧に振る舞った。
通夜が終わり、青年は葬儀社の人と共に、僧侶と話をして、明日の日程に関しての打ち合わせをしていた。
そして、明日奈と和人、直葉の3人は、青年の両親の亡骸が入った棺と青年がいる式場を後にして、3人のそれぞれの家に戻った…筈だった。
翌日の午前5時55分。
青年は納棺された両親に寄り添いながら眠っていた。しかし、青年が目を覚ますと…式場内の控室にいる筈が、式場内のベッドルーム(棺が安置されている控室から歩いて数分の距離)に寝ていて、青年は困惑していた。
併せて、青年は、自らが身に纏っていた服(喪服)が寝間着に変わっている事、知らない内に風呂に入っていた事に気付いた。
併せて、青年が目覚めると、青年が眠っていた寝室のベッドの隣のベッドで、明日奈と和人が仲良く抱き合いながら眠っていた。
勿論、青年の周囲には両親の遺体が入った棺が無く、代わりにカピバラさんのぬいぐるみを抱き締めながら眠る直葉がいた。
何でも、和人が一時退院中の明日奈を同伴して青年の両親の通夜と葬儀・告別式に参列する為か、明日奈の身を案じて付きっ切り状態になる事と、今回の参列が
「保護プログラム対象者である青年を見張る(自殺に走らなくさせる)為の行動」
の目的を持っている為、告別式直後の出棺(霊柩車が火葬場に向かって出発する)までは離れないとか。
その為か、青年は、朝から桐ヶ谷兄妹と結城明日奈の3人と共に過ごす羽目になった。
青年が手元と足元を見て、自分の手足が鎖でベッドの足に繋がれている事を理解して、再度眠る。
午前6時30分。
和人と明日奈、直葉が揃って目を覚ます。
直葉の隣で眠る青年に群がっては、まるで、スヤスヤ眠る我が子を見守る両親の様に青年の寝顔を見ながら微笑む3人。
スマホでスヤスヤ眠る青年の顔を撮影しては子守唄を歌い、青年の身体を優しく撫でる明日奈と和人。
直葉に至っては、自らの太腿の上に青年の頭を静かに寝かせて、優しく青年の頭を撫でていた。
その後、朝7時までに、4人が起床して、ホール内の精進落としブース(厨房ブースの隣にある)へ。
朝食はバターロールパン、コーンクリームスープ等のホテルの様な洋風メニュー。葬儀社の社員曰く
「料理長(厨房スタッフのトップ)が(葬祭ホールを運営する葬儀社の中にある結婚式担当の部署が)直営する結婚式場の料理長を兼任している関係で、朝食を設定。たまたま、和人と明日奈のオーダーと料理長の想い、式場スタッフの提案が一致した為、オーダーの一つをも言えない精神的状況である青年に代わって、明日奈と和人、直葉が決定打を出した為、メニューを決定した。」
とか。
午前9時。
身支度を整え、青年の両親が眠る棺が安置されているホールへと向かう青年。しかし、二人の棺の前で合掌して焼香をする青年の後ろで、青年は視線を感じた。
青年の後ろには、身支度中だった明日奈と和人、直葉と、打ち合わせの時に出会った菊岡の姿が。
本来は喪主である青年が一人で受付に立ち、参列客の一人一人に挨拶をして、ホールに向かうのが当たり前だが、青年が要監視対象と見做されている為、4人が同伴する形になってしまった。
1時間後。
遠方から唯一の親戚である女子大生が一人、車椅子に乗って式場にやって来た。彼女の手に持たされた帛紗の中に、数十万円が入った香典袋があった。
併せて、彼女の腿の上には青年に送る3億1000万円が入ったジュラルミン合金製のケースバッグが。
彼女は、明日奈と和人の姿を見て、在りし日の青年の両親を思い出し、涙を流しながら、声を上げて泣いていた。
その姿を見た明日奈は、青年の両親が自分とその彼氏である桐ヶ谷和人に外見や中身がそっくりである事を推測しながら、青年の観察続行を決意した。
午前10時30分。
式場に参列者の姿が次々と弔問に駆けつけて来る。
喪主である青年は、不慣れながらも喪主としての振る舞いを行っていた。
参列者達の中には、3人と同じギルドの仲間であり、和人と明日奈、青年の同級生である篠崎里香(ゲーム上でのハンドルネームは「リズベット」)と、同じくギルドの仲間で3人の同級生である綾野珪子(ゲーム上でのハンドルネームは「シリカ」)が入っていた。その為、軽くオフ会状態になり、青年は困惑した。
明日奈と和人の仲良し具合を見せつけられ、激しく嫉妬する里香。直葉と珪子、明日奈は苦笑い。
ただ、和人の周辺が、あまりにも、ドロドロと悪化の一途を辿る三角関係と化していた様に見えてしまい、耐えられなかったのか、青年は、気配を消しながら、その場を離れようとする。
しかし、青年がいざ逃げようと静かに足を動かして、後退りしつつ歩こうとすると、里香にバレてしまい、逆に青年は周囲からの餌食になってしまう。
午前10時55分。
参列者が式場のホールに全員揃い、祭壇の前に着席。最前の列には青年と青年の唯一無二の親戚である女子大生、明日奈と和人、直葉が座り、僧侶が来るまでの間を待っていた。
午前11時00分。
僧侶達数十人が式場に入場して、告別式がスタート。
2時間30分後。
最後に喪主の挨拶を行う青年だったが、あまりにも酷だったのか、親を失った悲痛さと現実を受け入れない拒否の反応に近い反応と、放心状態等で言葉が出ず、涙が止まらず、感情が崩壊し、マイクを当てても声が小さく、途中で無言になり、発作に近い激しい震えが止まらない中、一人で時間を掛けながら挨拶を済ませようとするもままならず、途中で和人と明日奈が介入して、挨拶を代読した。
喪主の挨拶から30分後
僧侶が退場して、残すは出棺と荼毘(火葬場にて行う火葬。)のみとなった。
青年は、両親の遺影と位牌を持ち、静かに、安らかに眠る両親の遺体が納められた棺がホールを後にして、霊柩車が待つエントランスホールに向けて移動するのと同じタイミングで、葬儀社のスタッフと共に、葬祭ホールを後にした。
そして、出棺。
黒い2台の霊柩車がホール正面入口に静かに停まり、霊柩車の扉が開く。
二人の棺が霊柩車の後方部に乗る。
青年が纏めの挨拶を行なう。
両親二人の遺影と位牌を其々持って、一礼をした後、青年は葬列の先頭を走る霊柩車(青年が父親の遺体が納められた棺が載る)の助手席に座り、連なって走る霊柩車(青年の母親の遺体が納められた棺が載る)の助手席には青年の唯一の親戚である女子大学生が同じ様相で乗り込み、其々が車のドアを閉めた。
午後2時05分。
一礼する参列者全員に見送られながら、2台もの洋型霊柩車が、ホーンを長々く鳴らしながら、ゆっくりと火葬場に向かって前進。
勿論、あまり隙間を空けず、黒い護衛車輌達(黒色の6人乗りTOYOTA製クラウンが12台)に囲まれ、更にその周りを警視庁のパトカー20台、警視庁内にある交通警備隊の白バイ数十台に囲まれての出棺だった。
午後2時25分。
沢山の護衛に囲まれて、2台の霊柩車が火葬場に到着した。車から降りる青年と親戚の女子大学生。
しかし、青年は驚いた。
出棺の際に
「親族以外の方は、ここまでで御座います。どうぞ、お気を付けてお帰り下さい。本日はご多用の中、遠路遥々から御足労戴き、故○○○○(青年の父親の芳名兼名前)、故○○○○(青年の母親の芳名兼名前)儀告別式兼総務省総合通信基盤局高度通信網振興課第二別室内、通信ネットワーク内仮想空間管理課・○○家合同葬に、御参列を賜りまして、誠に、有難う御座いました。」
と葬儀社スタッフがアナウンスをし、引き出物を参列した者全員に渡して、解散させた筈なのに、解散時に帰ったと思われる和人と明日奈と直葉、里香、珪子が火葬場の正面入口の自動ドアの前で、横一列に並んでいたのだ。
其々の手には引き出物の箱※と御会葬御礼が所狭しに敷き詰められていた紙袋が。
(※引き出物の詳細は以下の通り。
・ニコニコのり「味の極」他の詰め合わせセット
(味付け海苔、海苔茶漬け、焼海苔、海苔ふりかけ、もずくスープの素の詰め合わせセット)
・今治謹製バスタオル、フェイスタオル、ハンカチ
・カタログギフト10万円分
・ネスレ日本「ネスカフェ」ギフトセット)
青年が和人に
「何で…。何で…、桐ヶ谷君達が、ここにいるの…?親戚でも、血縁関係でも無い皆が…、どうして…?」
と聞くと、和人は強く青年の肩を掴み、力一杯、声を振り絞りながら説得。
「君が、全部を背負っていこうとしているからっ!!霊柩車の助手席に座る君を見て、明日奈が
『キリト君…、昨日から、○○君の事を見守ってきたけど、○○君…何か、私達に内緒で独りで抱えている感じがするよ。』
と言って、心配だから付いて来たんだ。○○、君には無理かもしれないが、独りで抱え込んだり、背負っていこうと考えたりするな!!出来たら、俺達に隠している事があったら、何でも言ってくれ。」
この一言が、青年の心を駆け巡り、青年は葛藤した。
併せて、明日奈からも一言を言われてしまい、青年は困惑する。
午後2時40分。
火葬場兼公営斎場で親族だけの本葬を執り行い、斎場左奥の葬祭ホールから徒歩で炉前ホールへと移動する青年達と青年の両親の遺体が納められた棺。
そして、火葬炉の扉の前で棺に向かい、黙祷と合掌を行い、火葬炉の扉の前に集結した僧侶達による読経を聞きながら、焼香を行い、火葬炉の扉が開くのを待機した。
5分後。
重々く赴く火葬炉の扉が開き、二人の屍が納められた棺が火葬炉の中に、まるで吸い込まれていくかの様に納められ、扉が施錠された。
火葬中、僧侶達の読経と焼香が済んだにも関わらず、焼香と読経を行いながらも、炉前ホールから離れない青年。
唯一の家族を亡くした青年だからこそ、青年は一歩も炉前から離れようとはしなかった。
顔をクシャクシャにしながら、声を上げ、大粒の涙を流し、炉前に跪く青年。その姿を、青年の背後から、明日奈と和人、読経していた僧侶達が見守っていた。
午後3時00分。
控室に戻ろうとするが、青年が火葬炉の扉の前に直立不動のまま跪いていた姿を見て、僧侶達は青年の背中から滲み出る哀しみと手を掛けた者達への怨恨が滲み出ていると判断し、見守りながら喝を入れる。
僧侶の代表曰く、
「君は、全てを抱え込まない方が良い。君の背中を見ていたが、ご両親に手を掛けた者達への怨恨と、両親への想い、守れなかった事への悔しさが滲み出ていて、それらが侵食して身を滅ぼしかねない状態だ。必要以上に抱え込んではいけない。適宜に開放しないと、破裂する。」
この一言を、青年の背後で聞いていた和人と明日奈。直葉に至っては、青年と親戚の女子大学生に近付き、二人の背中を摩る。
午後4時35分。
火葬やお骨拾い・骨壺への納骨が終わり、青年達7人は告別式を行った斎場に戻ってきた。
そこで、青年と唯一無二の親戚である女子大学生は、明日奈と和人の二人だけに、青年が隠している「有る事」を打ち明ける。
それは、青年が結城明日奈の救出の一件以降、SAOの運営関係者の不可解な死が相次いでいるという事である。
結城明日奈が桐ヶ谷和人の手によって救出された次の日から、青年はその女子大学生に対して、連絡を寄越さない・電話を掛けても、電話に出ない、いざ、電話に出たとしても「奴を始末しないと」と意味深な発言をしているから、その女子大学生は青年が何か事件を起こしているんじゃないかという事を思っていたのだ。
しかし、事件のニュースを見ても青年の名は書かれておらず、青年の名前をネットで検索してもヒットせず、路頭に迷っているとか。
話を聞き、和人と明日奈は青年の尾行と身辺調査、青年の住処の立入検査を行い、たまたまその話を耳にした直葉、里香、珪子が力を合わせて聞き込みを行い、その結果をその女子大学生に対して公表する旨を伝えた。
以後、青年の唯一無二の遠縁である女子大学生は下宿している先の愛媛県松山市に戻り、SAO事件で負った怪我の治療とPTSD(心的外傷後ストレス障害)等の治療をしながら学業に勤しみ、怪我の治療の目処が立った頃合いを見て、都内の国立大学に編入。
都内の国立大学卒業後(「アリシゼーション編」終了直後)に結婚。結果として、青年は親族もなく孤立無援で過ごす事に。
そして、リアルのアスナこと結城明日奈が退院し、リアルのキリトこと桐ヶ谷和人と共に、タクシーで帰路へ向かっている最中に、所々が赤く染まった※1ダウンジャケットを身に纏いながら、路上※2で衰弱しながら放浪する青年を発見。
(※1:青年が刺されて出血した訳ではない。)
(※2:細かい設定上は、新宿西口のヨドバシカメラ新宿西口本店の周辺にしている。)
タクシーから降りた明日奈と和人がふらつく青年に触れた途端、静かに青年は倒れ、青年が瞼を閉じて落涙しながら意識を失い、救急車で病院へ。
…こんな感じである。
・ストーリーの主軸②「キリトとアスナが青年の内側に潜む過去に迫り、青年を保護。」
青年が入院した直後、青年が住むマンションの大家さんが明日奈から電話を貰い、病院へ。
そこで、明日奈は大家さんから青年の部屋の合鍵を受け取り、同時に部屋の今後を相談。
大家さん曰く「青年が住むマンションの部屋の購入用ローンが既に完済しており、それとは別に、修繕費、管理費等の毎月の支払いを、大家さんが提示した額の10倍を青年の両親が支払ってしてくる為、青年の両親から預かったお金があと数年分残っている。出来ればこのまま、青年を住み続けさせたいのだが、首都高速湾岸線等の拡張工事で土地を受け渡したいと国や役所諸々に言われ、受け渡しをしなければいけない状態。可能ならば、青年に預かったお金を返金して引っ越しさせた上で土地を国や役所諸々に献上したい。」との事だった。
併せて、青年が住むマンションの他の住人は既に別の場所に引っ越して行った為、マンションの住人は青年のみとなった。
そこで、大家さんに頼まれ、和人と明日奈は青年が住むマンションの一室に立ち入り、荷物の整理と調査を行う事に。
青年が入院中、リアルの青年の住居(マンションの一室)を物色する和人と明日奈。
すると、明日奈が「ある写真」を見つける。
その写真に映っていたのは、幼き頃の青年と、その青年の両親。
しかも、驚いた事に、青年の両親の若い頃の写真がキリトとアスナにそっくり(青年の父親がキリトにそっくり(瓜二つ)で、且つ青年の母親がアスナにそっくり(瓜二つ)。)だった。
二人が調べていくに連れて、青年の家族環境や実態から、青年の心の闇を知る。
→青年の両親はラスボスとその関係者達により既に始末された為、憎悪に燃え、憎しみを抱いた青年がラスボスのアバターを動かした男と、その関係者達(ラスボスのアバターを動かした男の仲間を指す。指名手配。)の全員を残さず始末しつつ、突入したアジトの床の全域を真っ赤に染めて、跡を去る事が後絶たず、場合によってはアジトの爆破処理も行いながら、突撃・始末開始から1時間足らずの間に一人で複数の組織を破壊した理由が判明。
また、今の青年に身寄りや親戚が居らず(殆どがSAO事件等の被害に遭ったり、ラスボスのアバターを動かした男に襲われたりして、亡くなったり入院して治療中になったりして、親戚全員と音信不通になっている)、一人っ子で収入がなく、生活がままならない状況(注)。
(注:通帳や定期預金、定期貯金はある。また、その被疑者を確保し、政府から事件を解決した報奨金を貰い、総貯蓄額は8桁。)
一方、青年は自我を失い、表情も失っていた状態で搬送された為か、リクライニング機能を使いつつ、病室のベッドの上で一日を過ごす日々が続く。
しかし、搬送から丸2日は意識不明で半ば昏睡状態で眠り、青年が搬送されてから意識が戻り、上の様な状態になるまで一週間掛かった。
目も見えず、トラウマや心の傷が消えず、髪が白くなり、病院でのご飯を食べても味を感じない状況が続く。
しかし、ラジオ番組やWEBニュース記事の音声読み上げ機能等を使い、終始、情報を耳から取り込んでいた。
ある日、青年の病室を訪れた看護婦と主治医から、青年の主治医が「アタック25」本戦に出場する旨を聞かされる。
きっかけは、こんな事だった。
ある日曜日、青年と同じ病床で入院した患者さんが病室で「アタック25」を観ていた時、問題文を耳で聴いただけで青年が無意識で、出場者よりも早くに回答して、正解を叩き出す姿を目撃。
たまたま巡回していた看護婦が、青年のその様子を目撃し、衝撃のあまり、録画。
そして、番組の放映終了と同時に、青年の主治医にその映像を見せ、翌週にもう一度、主治医と共に、病室で青年の様子を見て、主治医の心の中に隠れていた闘志が再燃。
また、そのタイミングで、青年の主治医が青年の「ある事実」※3を知り、出場を決意。
いざ、予選会に出てみたら…一発合格を果たし、本戦進出の権利を勝ち取ってしまった、との事。
(※3:後になって、和人と明日奈からカミングアウトされるが、青年は幼少時代に父親と「アタック25」親子大会に出場して、パネル18枚獲得で優勝・海外旅行問題も正解。また、青年の両親も独身時代に「アタック25」に複数回出場し、出場した回全てでパネル20枚以上を獲得(内、父親が2回、母親が1回パーフェクト達成)し、全ての回で海外旅行問題に正解して、エールフランス航空で行く・パリ旅行を獲得。また、二人共が「年間チャンピオン大会」に進出し、進出した年全ての「年間チャンピオン」の座に就いた事もある。)
病院での診断により、青年の主治医と唯一の親戚(入院中)、和人と明日奈の指示により、青年は精神障害者保健福祉手帳等を申請して、取得。
そして、青年の唯一の親戚(青年の母方の遠縁で、都内の国立大学に通う大学2年生の女性とその旦那)から、和人と明日奈の二人を「青年の法定相続人兼親族外保護責任者」として認められ、任命される。
身体が平常に戻るが、心の傷が癒えぬまま、退院の日が近付くある日、和人と明日奈が義理の娘ユイと和人の妹・直葉を連れて青年の病室を訪問。そこで二人から「ある提案」をされる。
その提案とは、以下の通り。
①桐ヶ谷和人と結城明日奈が、青年の保護責任業務(保護責任者としての責務)を負う。
②桐ヶ谷和人と結城明日奈の二人が法定上の年齢に達して結婚・入籍・同棲したと同時に青年を義理の家族(義理の息子)として迎え入れ、同居する。
③暫くは高校内、外を問わず、二人の監視下で生活する。また、青年が二人と同じクラスの為、お昼や校内移動は同伴で移動する(体育の時間等は和人が青年を同伴する。)
提案を飲むも、答えが出ずに、考えながら退院の日までを過ごす青年。
そして、青年が視力回復手術やリハビリ、メンタルトレーニング等を経て退院。
しかし、青年が入院前の住処に戻ると、家財道具が全て無くなっていた。
蛇口を捻っても水が出ず、電気も点かない。
あまりにも突然の出来事に、青年は言葉を失う。次第に、青年の呼吸が荒くなり、気付いたら自身の両手で自らの首を締め付けていた。
混乱する青年の姿。その姿を追いかけていた桐ヶ谷和人と結城明日奈が、青年の肩を掴み、全身で抱き締めながら、青年を部屋から引き離す。
そして、無意識で自らの首を締め付けている青年の両手を首から剥がし、その手を自らの手に繋ぐ二人。
その段階で、二人が青年に提案した事を実行に移す旨と、桐ヶ谷和人と結城明日奈が入籍・結婚して、明日奈の名字が「桐ヶ谷」になったタイミングで、青年の名字を「桐ヶ谷」に変える旨を和人の口から明らかにされ、青年は了承する。
そして、青年を車に乗せ、桐ヶ谷家と結城家の間の位置にある一軒家に向かう。
新築、2階建ての一軒家で、無くなっていた家財道具一式が全て揃っていた。
「ゆくゆくは桐ヶ谷和人と結城明日奈のリアルでの「愛の棲家」兼青年の実家にする」と青年に向けて明日奈が語り、青年が「一向に事態を理解できない状態」で、同居計画がスタートした。
その日から、半ばリモートで二人に逐一監視される形で、青年の新生活が始まった。
勿論、二人から監視されている状態のままなので、家の窓に石を投げ付ける子供と落書きをする子供が青年の家を標的にしようものならば、その子供達を一人残らず泣かして帰し(一時、石を投げて青年の家の窓ガラスを壊そうとする子供が目一杯で投げた小石を、ガラス窓に当たる寸前の辺りの位置で強くキャッチして、投げた子供の頭目掛けて投げ、その子供の頭スレスレの位置で小石が砕け散り、その破片が子供の頬を擦り、流血させては、小石を投げた子供を泣かす事案が発生。その悪戯がエスカレートする毎に、青年は行為に走る者の頭を目掛けてその石を投げて、99.9%もの高い確率で命中。)、青年の家の前にゴミを投げる人や落書きをする人、根拠がない悪評を流布する人、その他の心無い行動をする人には容赦なく武力行使を行って、制裁を行おうとする姿が明日奈と和人の二人にすぐに開示されて、二人が介入に入る事が日常茶飯事だった。
また、大人達からの嫌がらせや犯罪勾の器物損害に激昂し、手を出した人達全員に対して修羅の表情と地獄を見せようとする青年の姿を、モニター越しで毎度見ては、必ず明日奈と和人が飛んで来る事も。
場合によっては、明日奈が警察に証拠映像と事情を説明する傍らで、和人が青年を叱りながら加害者(この場合は青年に手を出した相手)に怒る場合もある。
一方で、青年が人助けをしたり、道端等で急病人を介抱したりすると、必ず明日奈と和人が助太刀する事があり、ゲーム内外問わず、数百人を助けた。
・ストーリーの主軸③「そして、青年は夫婦(仮)二人の手によって覚醒・進化をして、クイズ王兼最強剣士として生まれ変わる。」
ある日の午後、お昼ご飯を食べに行きがてら、3人とユイがリアルワールドのショッピングモール行き、買い物をしていると、明日奈と和人が青年の「潜在能力」を見つける。
それは、お茶を飲みがてら4人が木陰のベンチで休憩していた時である。
たまたまショッピングモールの大型液晶モニターに映っていた番組が、こんな番組だったのだ。
「パネルクイズ アタック25」(現在はBS Japanextにて、後続番組「パネルクイズ アタック25 Next」を放送中。)
1975年4月6日〜2021年9月26日まで延べ2280回放送され、大阪にある朝日放送テレビが制作していた、視聴者参加型クイズ番組の代表格だ。
青年は「アタック25」を観ながら、モニター越しに映る出場者よりも早く、多く、問題に答え、正解を出して、和人と明日奈、ユイを驚かせてしまう。
そして、最後のクルーズ旅行を懸けた最終問題で、VTRの途中で正解を叩き出す青年の姿を見て、ある事を思い出した明日奈。
それは、青年の家に飾られていた、複数枚もの記念写真と、その隣に鎮座されたトロフィー類と、記念写真に書かれた日付を見て、勉強の合間に観ていた番組が、たまたま「アタック25」の青年家族出場回であったのを思い出した事だった。
写真に映る大きなパネルボードと、真白く点灯している25枚のパネル、そして、そのパネルの前で、横一列に並び、映る故児玉清さん(「パネルクイズ アタック25」シリーズ初代司会者)、出題役の女性フリーアナウンサー(設定だと、相馬宏美さん)、出場者の全員。
その出場者達の中に、幼い男の子を抱っこしているスーツ姿の男性がいる。
その人は左手で旅行の目録パネルボードの中央部を掴み、右手で賞金の目録(金糸と白糸の結び切りの熨斗がついたご祝儀袋。熨斗の上側に筆書き楷書で「パーフェクト賞」、熨斗の下に「アタック25」と書かれている。)を掴んでいる。そして、その人の左手側にいる女性が花束とネームカード(解答席の上部に挟むプレートがある。)を持っている。
明日奈は、写真に映るその男と周辺を見て、青年がクイズ王とクイズ女王の血筋を継いでいるのではと推測し、ある事を思い付く。
それは、青年と和人、明日奈の3人で「アタック25」予選会の出場をして、クイズ界でも最強になる事。
そして、モニターに映る「アタック25」の最後で、予選会開催のお知らせが映り、明日奈は咄嗟の判断でスマートフォンを取り出し、「アタック25」公式スマートフォンサイトで複数のエントリーをした。
個人の部では、3人其々の名義(桐ヶ谷和人の名義、青年の名義、桐ヶ谷(旧姓:結城)明日奈名義)でのエントリーをし、夫婦ペア大会では、桐ヶ谷和人・明日奈名義でエントリー。
そして、親子ペア大会では桐ヶ谷和人と青年名義、結城明日奈と青年名義でエントリー。
数日後、予選会開催の葉書が3人に届き、3人は予選会場である朝日放送株式会社東京支社(当時は朝日新聞東京本社・新館10階。現在は文化放送メディアプラス等の真向かいの日本生命浜松町クレアタワー18階。)へと向かった。
実際に3人が受けた予選は、以下の大会の予選。
青年:一般(個人戦)
和人:一般(個人戦)、夫婦ペア大会
明日奈:一般(個人戦)、夫婦ペア大会
→いずれも筆記試験・面接試験で合格。
筆記試験に至っては、3人共に30問全問正解。
和人と明日奈に至っては、スタッフから「新婚さんいらっしゃい!」の予選会エントリーを斡旋される始末。
そして、予選通過から1ヶ月後。
青年が高校生大会に出場。
キリト仕込みの「スターバースト・ストリーム」な俊敏さと二刀流早押し、アスナ仕込みのパネル選択戦略と閃き、閃光の如く答えを導き出す脳内のフル回転、そして、二人から受け継いだ「究竟に耐え、リスクを恐れず、諦めない、不屈の精神」が本戦で遺憾なく発揮し、他の出場者や司会者(設定上では浦川泰幸アナウンサー)、出題者(設定上では加藤明子アナウンサー)を圧倒。
結果、浦川時代・唯一無二の、パーフェクト達成(パネル25枚獲得)を果たす。
青年は、浦川アナからパーフェクト達成の50万円の目録(御祝儀袋)を受け取る。
高校生が単独でパーフェクト達成を果たすのは、2009年8月16日放送の「高校生VS高校の先生大会」以来、約3年半振りだとか。
海外旅行を懸けた最後のフィルムクイズも、冷静に正解を当てて、見事、地中海クルーズの旅行(その当時は、JTBのグループ会社である株式会社PTS提供「豪華客船リバティ・オブ・ザ・シーズ号で行く、スペイン・フランス・イタリアを巡る、地中海周遊クルーズ・ペア10日間の旅」。)を掴んだ。
家族も彼女も相手もいない青年は、エンディングで浦川アナに終始弄られる。
しかし、観客席から「聞き慣れた男女二人の声」がして、カメラが二人に向けられる。
和人と明日奈だった。
感極まり、涙が溢れる青年。その青年の背中を強く叩き、青年にエールを送る浦川アナ。
そして、母親の様に3人を見つめながら、総評をする加藤アナ。
収録後。
青年が年末開催の「年間チャンピオン大会」の参加権利を掴んだ事をスタッフから聞かされる。
そして、和人と明日奈が出場する、同時収録の夫婦ペア大会でも、大事件が起こる。
桐ヶ谷和人・明日奈夫妻、25枚獲得・パーフェクト達成で、最後のフィルムクイズも正解。
見事、賞金50万円と地中海クルーズの旅を獲得。
ただ、和人と明日奈は夫婦ペア大会での優勝である事から、個人戦である年末の年間チャンピオン大会への進出が叶わない結果になってしまった。
収録から数ヶ月後。
3人が挑んだ大会がそれぞれ放映され、刮目していた桐ヶ谷直葉(和人の義妹)等が半ば嫉妬しながら、半ばヤキモキしながら、テレビの画面に齧りついていた。
放映翌日。
和人と明日奈は、同級生達から祝福される一方で、双方の友人兼同級生である篠崎里香(ゲーム上でのハンドルネームは「リズベット」)と、綾野珪子(ゲーム上でのハンドルネームは「シリカ」)が、二人のイチャつきに嫉妬。
そして、青年は同級生達から祝福と応援をされて、一躍「時の人」と化した。※
(※その上、明日奈、和人と同じく、クラス内で数人しかいない成績優秀者で皆勤記録を持つ為か、少し周囲から浮いていた。)
それでも、青年は謙遜し、努力をし続けて、年末の年間チャンピオン大会の収録までの期間に、山程のクイズ番組で優勝や完全勝利(パーフェクト達成)でのトップ賞獲得、ゲームでのチャンピオン獲得、そして、様々な番組・ゲーム等での獲得賞金総額が億を超えて、徐々に青年の様々なスキルが高まり、青年の実力が強くなっていった。
また、青年は和人と明日奈を連れて(二人が勝手に応募。)「高校生クイズ」に出場し、見事優勝。
また、「高校生クイズ」の収録終了後、荷物整理の為に一時帰国し、すぐに出国し、夏季休暇の残りを「アタック25」で貰ったクルーズ旅行で消化する。
クルーズ船に乗り込み、旅行代理店から指定された部屋に向かう青年。
しかし、青年は予想していなかった。
部屋に向かうと、既に誰かがいる。しかも、部屋のシャワールームから、聞き慣れた二人の声がする。
ベッドに荷物を置き、「アタック25」のスタジオで撮影した記念写真を眺めて、収録を思い出している青年。
(ここで、青年は背後からの物音に気付いて、バスローブ姿の和人と明日奈を目の当たりにして、目の遣り場に悩み、混乱するが、省略。)
そして、12月某日。
大阪市福島区にある朝日放送(ABC)本社内にあるAスタジオで行われた「パネルクイズ アタック25」の年間チャンピオン大会に、青年の姿があった。
高校生でありながら、他の出場者(大人達)を圧倒させ、予選の早押しクイズの冒頭で、いきなりFinalステージへの切符を掴み、赤の席へ。
ちなみに、2012年と2013年の年間チャンピオン大会では、開催年の前年12月頭から開催年の11月最終週までにトップ賞を獲得した方の中で、パネルの獲得枚数が15枚以上(年によって、出場資格となる最低枚数が異なる。)の人が集い、一斉に3問先取早押しクイズに挑み、3枠を埋めて、最終一枠をサバイバル○×クイズで確定させる、というもの。
勿論、誤答のペナルティも厳しく、最初の3枠争奪の早押しクイズでは言い直しや漢字の読み間違い、5秒近い沈黙等で誤答・お手付き扱いになり、バツが1個付いて、2個バツが付いた時点で失格・退場になってしまう。
○×クイズの場合は問題に間違えた段階で失格・退場というサバイバルゲーム。
この場合、青年は前哨戦の早押しクイズで誤答する事無く先に3問先取して、一番乗りで決勝戦の椅子の一つを勝ち取った。
あまりの速さに怯える周囲。そして、あまりの特攻振りにテンションが上がる浦川アナ。
ただ、青年の応援で観客席に座る和人達は、青年の隠れた才能に驚きと感動を隠さなかった。
そして、決勝。
他の出場者が緊張感を過剰に抱き、空間内に緊張が走る中、青年は落ち着いて深呼吸をしていた。
決勝戦は「アタック25」のルールで行う難問揃いの早押しクイズ。
その為、青年はスムーズにボタンを押しては答え、パネルを掴み、またボタンを押しては答え、的確な位置のパネルを掴み、他の出場者が解答する問題を出さない様に、残さず答えまくる。
因みに、チャンピオン大会の予選を一番乗りで通過した為、青年が座った席は赤。
その為、決勝に進める資格を持つ4人の出場者が再び見るであろうスタジオの端(観客席入口の付近)に置かれているパネルボードが見辛いハンディが周囲から危惧された。
けれど、青年は周囲からのそんな危惧なんてお構い無しだった。
青年の脳内の半分で、25枚ものパネルボードが映像として映し出されていた為か、脳内のパネルボードでゲーム展開を楽しんでいた。
そして、アタックチャンスに突入した瞬間、青年の音速早押しのスキルが花開く。
スターバースト・ストリームの如く、問題文の単語10個だけで早押しをして解答をし、パネルを掴み、収録の会場を騒然とさせる。
そして、収録開始から1時間45分後。
全てのパネルを赤く染め上げ、周囲がザワつく中、青年が年間チャンピオン兼パーフェクト達成者に。
そして、そのまま「スウィートルームで巡る地中海クルーズ・ペア10日間の旅」をも射止めてしまい、スタジオ中を震撼とさせる。
そして、数年後。
「ソードアート・オンラインⅡ」の最終話直後から「ソードアート・オンライン-アリシゼーション-」のスタートまでの間、5年のブランクを消化した青年は再び「アタック25」の予選会と本戦に向かう。注
(注:「アタック25」では、一度本戦に出場すると、「年間チャンピオン大会」出場資格保持者※を除き、次回以降の丸5年間のブランクを空けないと予選会のエントリーと再度の本戦に出場をする事が出来ないという暗黙のルールがあるが、この場合は元々いた学校から和人、明日奈、青年等の高校生プレイヤー達が政府管轄の高校に転入して、SAOの世界に監禁された日数分の教育指導過程を必修科目として修了する必要がある為、高校生の状態でブランクを消費したと考えて欲しい。)
(※出場資格はその開催年によって異なる。青年が参加した時は、前年12月頭から翌年11月末までの出場者達の中で、パネル獲得枚数14枚以上の総勢12名が出場。)
そこでは、GGOでキリトと善戦したリアルのシノン(朝田詩乃)が青年を迎え撃とうと待っていた。
楽屋フロアの廊下で、詩乃はスタジオに向かおうとする青年の肩を掴み、こう囁いた。
「『アタシが最強だ』という事を、君に目一杯見せ付けてあげる。でも、前から思ってたけど、改めてよく見たら…、君は…キリトとアスナを足して、2で割った様な顔だわ。まさか、あの二人の子供…な訳は無いか。どういう事か、後で説明して。」
リアルのシノンこと朝田詩乃は、かつて故児玉清が司会の時の史上最年少のパーフェクト達成者を輩出した「高校生VS高校の先生大会」に、青年は「夏の高校生大会」に出場。
結果、詩乃は21枚獲得で最後の問題も正解。見事、地中海クルーズ・ペア10日間の旅と、賞金21万円を手にした。
そして、その後。
青年はそんな詩乃ですら届かなかった、ある記録を打ち立てる。
正答率100%、超音速早押し、そして、ボード上での狂い無き戦略。
結果、あれよあれよと言う間に、青年は番組史上初である「3度目のパーフェクト達成」を成し遂げる。
賞金50万円の目録を持ちながら、最後の問題に正解し、青年は「※豪華客船クイーン・ヴィクトリア号とクイーン・エリザベス号で行く、地中海クルーズ・ペア10日間の旅」を射止めた。
(※2014年4月頭〜2015年3月29日放送分まで、JTBクルーズデスクが提供した「アタック25」の優勝者限定旅行。)
パネルだろうが、旅行だろうが、関係無く、一品も逃さずに射止める青年の姿を直で目の当たりにした詩乃は、その青年の姿とGGOでの青年の姿を照らし合わせ、咄嗟に手で顔を隠して、顔を赤らめながら動揺を隠せずにいた。
青年が答える度に、赤面して悶える詩乃。
その隣で青年の勇姿に目を輝かせる和人と、和人に苦笑いするも、青年の勇姿に感動し、まるで母親の様に涙を浮かべて微笑む明日奈。
その様子を見て、明日奈と和人、詩乃を観客席から青年が立つメインフィールドに招いて、青年達へのウィーニングインタビューを敢行する、司会の浦川アナと出題役の角野アナ。
収録終了後。
詩乃は、明日奈と和人から青年の秘密を告げられ、困惑しながらも理解した様子を見せた。
また、同じタイミングで、詩乃の中で持っていた、青年に対してのイメージ※が変わった。
(※以下の通りに変わった事を指す。
変化前
「アスナとキリトの其々の血が繋がった様な顔をしている男の子」
→変化後
「何も言わないと、アスナとキリトの間に出来た子供と勘違いする人がわんさか出やすい顔。」)
因みに、青年と詩乃は同年の12月初旬収録の「チャンピオン大会」にも出場して、決勝で対峙。
結果は、パーフェクト達成(25枚獲得)で青年がその年の「年間チャンピオン」の座に輝き、最後の旅行※を懸けたクイズにも正解して幕を閉じる。
(※その当時は、JTBクルーズが提供する、「豪華客船クイーン・エリザベス号&クイーン・ヴィクトリア号のスウィートルームで巡る地中海クルーズ・ペア10日間の旅」)
目の前で己の無力さを痛感する詩乃。そんな詩乃に青年は獲得した旅行を譲ろうとするが、落涙し、泣き叫びながら蹲る詩乃に
「アンタが行きなさいよ!!アタシは、他人(ひと)が獲って、譲ろうとする旅行になんて行かないし、行こうとも思わない!!自分の道は自分で決める。」
と一喝されてしまい、勝利の達成感よりも後悔に近い感情を覚えた。
収録後、青年と詩乃の様子を観客席で見た明日奈と和人が青年を落ち着かせつつ、詩乃を宥める。
明日奈を介して語った詩乃の本音は「自分の無力さと実力の低さに絶望。今日こそ青年に勝って、和人とバチバチに戦いたかった。なのに、青年はゲーム内での和人(キリト)の様な戦術でありながら、明日奈(アスナ)の様な戦術もしながらも、出された問題の一問は愚か、一問内の単語の平仮名一文字ですら逃さず、残さずに平らげ、正解を物にした。勝てると思ったアタシが浅はかだった。」だった。
その様子を見た司会の浦川泰幸アナと角野友紀アナが介入し、二人をフォロー。
浦川アナ曰く「二人は、今回いらっしゃった皆さんの中でも、群を抜いて凄まじく強かった。一際目立つ強さ。だからこそ、朝田さんにとって「アタックチャンス」前の一問の緩みと取り逃がしが大きく響いてしまった。でも、今回を教訓に次へと繋げたら、必ず「年間チャンピオン」の座に立てると思いますよ。」とか。
角野アナに至っては「朝田詩乃さん・・・負けず嫌いで、意地でも〇〇〇〇(青年の名前)さんに勝ちたいという一心で挑んできたからこそ、決勝戦の途中、パネルボードの状況を見て「勝つかな」と思っていました。二人が挑んだ予選ラウンドの「アタック15」は、二人が其々の組で15枚全てを奪い取ったが為に、青の席となるワイルドカード枠が埋まらず、地獄絵図と化していて、ドキドキハラハラな展開で息を呑んでしまいました。優勝した〇〇さんも凄まじく素晴らしいけど、彼を追いかけようとする朝田さんも流石です。」と語り、試合中の詩乃の健闘を讃えた。
そして、物語はアリシゼーション篇へと進み、「アタック25」の司会者が朝日放送の浦川泰幸アナウンサーから俳優・谷原章介さんに※、出題者の角野友紀アナウンサーが朝日放送を寿退社して、産休明けの加藤明子アナウンサーが現場復帰。
(※2010年から担当してきた「おはよう朝日です」のキャスターを卒業し、「キャスト(現「newsおかえり」)」のメインキャスターに抜擢されたが為の卒業。)
・ストーリーの主軸④「アリシゼーション篇が完結し、「アタック25」地上波版も終焉へ。青年は、キリトやアスナ、シノン、自身の父母をも超える「史上最強のチャンピオン」へ
アリシゼーション篇の最終章で、ラスボスのガブリエルを討伐した反動で、キリトとアスナはアナザーワールドに幽閉されてしまう。
同じタイミングで、アリスをリアルワールドに転移させた上でアナザーワールドに幽閉されてリアルワールドに戻ってくるまで200年(ゲーム世界上での時間。リアルだと5分近く。)を過ごす羽目になった青年。
青年の中で「孤独で200年を過ごす覚悟」は固まっていたものの、次元も言葉も段違いの異国の地で自らの父母の亡骸に祈りを捧げられぬまま、200年を独りで過ごすのは、コミュ障がまだ残る青年にとって、幾らなんでも…と周囲が思う程に過酷だった。
しかし、そんな青年のアバターが見たのは、見慣れた黒ずくめの剣士と、桃色の戦女神だった。
その姿は、最後まで戦い抜き、アンダーワールドからアリスを救出する傍らで、戦い抜くアスナとキリトを守りながら、進んで戦い抜き、200年を孤独で過ごす覚悟をしていた青年の目に、色濃くも優しく、明るく映っていた。
アンダーワールドでの200年は毎日が充実していた。そして、200年の間に、アスナとキリトの間には何百人(四捨五入したら約1000人)もの子供を設けており、アスナとキリトは国務をこなしながら子育てに奮闘。青年も切磋琢磨しながら子育ての手伝いと国務、経済の活性化と国民・政治間の連携の強化を行なってきた。
200年の間、アンダーワールド内では多くの新たなる生命が産声を上げ、アスナとキリトの間に産まれた子供は500人を超え、間もなく1000人に到達しそうな状況になった。更にその9.5割が子を設け、孫、ひ孫、玄孫・・・と、アンダーワールド内のキリトとアスナの子孫は数万人に到達した。
しかも、キリトにはもう一人の配偶者であるロニエとの間にも子供を設け、キリトは数万人の子孫の頂点に立った。
一方の青年は、天才的な感性と溢れ出す知識等を駆使して、様々なサービスを作り、人々の生活を円滑にして来た。
因みに、アンダーワールド内にいる時、青年は星王・キリトと星王妃・アスナの直属の補佐官を行いながら、二人の同居人(正確には「二人が青年の保護責任者」である。)として生活。
その功績と、二人からの信頼が強かったのか、アンダーワールドに来て数十年後、青年はキリトとアスナの間に出来た長女(第一子)と結婚。
キリト達と一緒に暮らしながらも、自らの妻と二人三脚で子供を育てながら、キリトとアスナに尽くし、自らの妻と子供を愛しながらも、国の為、家族の為、そして、守護する星王・星王妃の為に、命懸けで過ごして来た。
そして、リアルワールドに戻ってきた翌年の初夏。
青年は、地上波版の「アタック25」放送終了の報せと、最終回にて放送する「史上最強のチャンピオン決定戦」参加出場者募集の報せを耳にする。
呆気に取られながらも、「史上最強のチャンピオン決定戦」の東日本地域予選のエントリーを行い、気持ちを立て直そうとする青年。その姿を見た和人と明日奈は、青年を「ある場所」へと誘導する。
東京都中央区銀座。
アブラゼミがジリジリと鳴き始め、道路から登る熱気がウネウネと波打ち、人混みがまるで止め処がなく流れる河川の如く続く銀座の街で、和人と明日奈が青年を連れて、銀座の某百貨店へ。
明日奈曰く「(青年は)制服以外の服が黒系の暗いトーンばっかりで、併せてお洒落に無頓着。折角、最後の「アタック25」に出ようとしているんだから、少しお洒落にいかないと。それに、私達・・・家族だから。一緒にショッピングしたいと思っていたの。」
その一言の通り、和人と明日奈は青年や自身の衣服をセレクトしては試着し、厳選をし、購入※。
(※その費用の殆どは、和人と明日奈が「GGO」や「SAO」等のゲームや「アタック25」等のクイズ番組で稼いだ賞金や、青年の「アタック25」等のクイズ番組でパーフェクト達成兼優勝をした時の賞金。)
そして、迎えた「『史上最強のチャンピオン決定戦』東日本ブロック予選」。
浜松町の日本生命浜松町クレアタワー18階にある朝日放送テレビ株式会社東京オフィスの大会議室に、キリッとした黒のスーツで臨む青年と、夏らしく涼やかだが露出少なめで学生らしい衣装の明日奈と和人の姿があった。
筆記試験は通常の予選より数段難しい問題が数多に散りばめられ、過去に優勝をした者達に容赦なく襲いかかる。しかし、SAOで数々の修羅を乗り越え、数多の敵を薙ぎ払い、数多の敵を倒し、困難を打ち砕き切って来た3人にとっては余裕だった。
試験開始から約数十分後。
試験終了の合図が鳴り、答案用紙が運営スタッフ全員に渡され、休憩時間へ。
その間、採点と西日本ブロック予選の全出場者の成績を照らし合わせての本戦進出者選別を行う「アタック25」スタッフ陣の全員。
スタッフ全員が退出した後、青年は和人と明日奈と共に会場の外(大会議室から出てすぐの廊下)に向かい、お手洗いと自動販売機での飲み物の購入を済ませてから廊下で仲良く番宣ポスターを観覧。しかし、その3人の姿を見て「アタック25」スタッフの一人が3人を呼び、ある事を伝えた。
「3人がパーフェクト(全問正解)を果たし、成績の面では本戦に進出が出来るのだが、正答率が会場1高かった青年の特殊過ぎる経歴や、和人と明日奈の二人が普通の夫婦とは桁が違う等の理由から、本戦進出後に取材させて欲しい。」
この一言に、青年は言葉を詰まらせた。密着取材を受ける事、即ち、全世界に青年の様子を晒すという事になるのだ。
唯でさえ、アリシゼーション篇では外国の兵士から命を狙われながらも倒しまくり、キリトの後で怨念と嫉妬と怒りと憎悪のオーラを全部纏って、一撃必殺の殺戮神と化した青年が一瞬で全滅させてしまった敵が外国籍の兵士だった事もあり、全世界に青年の姿が晒されてしまったら、より狙われてしまう。そうしたら、和人や明日奈、直葉、青年の同級生達やその家族達に迷惑が掛かってしまう。
しかも、取材された映像はYouTubeのABCテレビ報道部オフィシャルチャンネルにて配信されてしまう。
今までは「アタック25」の映像配信が無かったので、青年はただの「クイズ好きの学生」として参加が出来ていたのだが、密着取材を込みで出場・・・となると、アリシゼーション篇で命を狙って来た敵達のアバター主に身元を明かしてしまい、最悪の場合は、国すら巻き込みかねない事に発展してしまう。
けれど、「和人と明日奈がアシストする」という理由で取材と密着を受ける事になった。
そんな3人の様子を、背後から眺めていた一人の出場者がいた。
自身の優勝後、青年がパーフェクト達成を果たす様子を目の当たりにし、赤面を見せた、シノンこと朝田詩乃である。
余談だが、詩乃は「GGO」での事件直後に出場した後、和人と青年がアンダーワールドで事件に巻き込まれている時※に出場し、パーフェクト達成で優勝・地中海クルーズを獲得。更に、その年の年間チャンピオン大会でもパネル獲得枚数23枚で優勝し、スイートルームで行く地中海クルーズの旅も射止めてしまい、「史上最強のチャンピオン決定戦」出場資格を有する事に。その為、詩乃は、3人に内緒でエントリーしていた。
(※その時の司会は第3代「アタック25」司会の谷原章介さん、出題者は朝日放送アナウンサーの加藤明子さん。)
詩乃は、朝日放送テレビのスタッフからグイグイと取材の依頼をされ、悩む3人の姿を、3人に気配を悟られない様に見ていた。
しかし、承諾し、スタッフが捌けた数秒後。
アンダーワールドから帰還し、和人を入院時から看病して以降、和人の隣を一歩も離れずに寄り添いながら、和人の隣に自分以外の女が近寄り難いオーラを漂わせる明日奈のレーダー的察知能力が詩乃の姿を捉えたのか、詩乃は3人に捕まってしまう。
試験終了から数十分後。
試験を受けた全員が席に戻り、答案用紙と本戦進出権利取得者の一覧が書かれた機密文書が入った封筒を持った「アタック25」の採点スタッフ全員が試験会場に入場して、本戦進出が決まった出場メンバーの名前を公表。
東日本ブロック予選の数百名の中から、晴れて本戦進出への切符を掴めるのは、僅か10名※。
(※実際の「パネルクイズ アタック25・最終回1時間スペシャル『史上最強のチャンピオン決定戦』」では、東日本ブロック、西日本ブロック其々の予選から6名ずつ計12名が本戦進出決定となるのだが、これはあくまでも「もしも「ソードアート・オンライン」の世界軸に「アタック25」があったなら」を考え、妄想するフィクション作品である為、敢えて10名に。)
その10名の中に、青年、和人、明日奈、詩乃の名前があった。
9月某日、朝日放送テレビ株式会社・本社Aスタジオ(大阪府大阪市福島区福島1丁目1番30号)。
遂に、「パネルクイズ アタック25・最終回スペシャル「史上最強のチャンピオン決定戦」」本戦収録日を迎えた。
朝9時丁度。
朝日放送テレビの本社・入口前に予選通過を果たした4人と、前日午前から和人、明日奈、青年の3人の密着取材を行っている朝日放送テレビのドキュメンタリー番組制作班の面々が到着。
収録開始3時間前。
本戦出場者の20名とその家族がスタジオに登場。
観客席に座る出場者の家族達。その中に、和人達3人の同級生で、リズベットこと篠崎里香、シリカこと綾野珪子、和人の義理の妹でリーファこと桐ヶ谷直葉が、ユイを搭載した小型ロボットとユージオの遺影を持ったアリス=シンセシス=サーティを連れて登場。
更に、青年の名を覚えていた浦川泰幸アナウンサーが自身の冠番組「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオにて毎週月曜日〜木曜日午後3時00分から生放送中。)の収録を終わらせ、急ぎ足でスタジオへ。
一方、青年は黒のスーツで固め、キリッとした表情でスタジオに入り、本戦に臨む。その姿を、まるで結婚式でバージンロードを歩く数秒前の新郎新婦の様な格好をした和人と明日奈が、まるで我が子の晴れ舞台を固唾を呑んで見守る両親の様に、背後で見ていた。
まるで結婚式に参列する新婦の友人の様なドレスで登場する詩乃に至っては、緊張の余り、和人と明日奈の手を握りながらも、怯えていた。
緊張で涙が出そうな表情を見せる詩乃。その姿を見た明日奈と和人は青年を呼び、円陣を組みながら抱き合い、緊張を解していた。
因みに、余談ではあるが、座席順は横一列。視聴者目線で記載すると、以下の通りである。
朝田詩乃 青年 桐ヶ谷和人 桐ヶ谷(旧姓:結城)明日奈 その他出場者① その他出場者② その他出場者③ その他出場者④ その他出場者⑤ その他出場者⑥
そして、4人が、其々の席に置かれた左右1個ずつの早押しボタンに両手を掛けて、東日本ブロックの本戦である4問先取のサバイバル早押しクイズがスタート。
ここで10人の中から2名が決勝戦の「アタック25」ステージへと進められるのだが、2問お手付きをした段階で失格・即退場となってしまう。
また、問題の難易度も通常の「アタック25」が扱う問題に比べて数段難しくなっている為、会場全体が重々しい空気に包まれる。
第1問が読まれて数秒後。青年の右手が誰よりも早くに円形のボタンを強く押し、青年の席が点灯&点滅。
周囲からの視線が縦横無尽に青年の方を向く。しかし、青年は怯まず、問題の答えを叫ぶ。
青年の解答から2秒後に、谷原さんから「お見事です!!」とコールが飛ぶ。そこで、青年は今までに「アタック25」で経験した事がない、強靭な緊張感に襲われてしまう。
緊張のあまり、硬直する青年。おまけに、隣の席に座る和人、詩乃との其々の間には衝立とアクリルボードが立っていて、青年は獣の様に襲い来る緊張感と、周囲に助けがいない孤立した状況の中で、第二問を迎えようとしていた。
そんな青年を見てか、司会を担当する谷原さんが青年の名を呼び、気を鎮めようと「ある事」を行う。
その「ある事」とは、青年の癪に触らないけれども、青年の心を解しながら鼓舞する為の会話と深呼吸の提案だった。
突然、青年に話しかけてくる谷原さんに驚きながらも、谷原さんに心を預けながら落ち着き、集中力を取り戻す青年。
その姿を見た明日奈と和人は安堵の表情を見せる。しかし、青年と谷原さんの姿を見た詩乃は、より緊張感に襲われている様子だったのか、胸に両手を当てて、隠しきれない動悸を押さえ込もうとしていた。
そして、第2問以降、青年の勢いが止まらず、出題されるや否や、青年は誰よりも早くボタンを押しては答え、また出題されるや否や、誰よりも早くボタンを押しては答え・・・を繰り返して、×を付けずに点を重ねる。
迎えた第4問目。青年に決勝進出のマジックナンバーである1が点灯し、落ち着いて問題を聴き、分かったタイミングでボタンを押す青年。しかし、青年より早くボタンを押した者がいた。
青年の隣に立つ、桐ヶ谷和人だった。
しかも、その問題を正解し、青年の心の中で焦りが生まれようとしていた。
続く第5問目、第6問目も青年に押し勝って正解し、決勝戦進出にリーチを掛けた。
しかし、青年の心の中にいた焦りは自然消滅していたのか、青年は不思議と落ち着いていた。
第7問目。今度は二人が押し負ける一方で、閃光の如く明日奈が押し勝ち、正解を叩き出す。
そんな明日奈も、第8問目と第9問目にて押し勝ち、正解を重ね、和人や青年と同じ様に×無しでリーチを掛けてきた。
節目の第10問。
目を閉じて集中し、問題以外の情報は頭に入れずに構える青年と和人、雑念を無になりながらも集中して構える明日奈。
そして、ボタンを押す出場者全員。点滅したのは、青年だった。
谷原さんから名前を呼ばれて直ぐ、勢い良く答えを叫ぶ青年。息を呑む周囲。
数秒後。
「その通ぉぉぉぉりっ!!!!!!!!」
谷原さんの叫びがスタジオ中に響き、青年は晴れて一人目の決勝戦進出枠を掴んだ。
青年が勝ち上がる姿を見て、悔しがる詩乃。
その後、和人と明日奈、詩乃は、青年が抜けた後の本戦で、ある状況を目の当たりにする。
それは、第11問目以降、押した出場者が「アタック25」の問題文の特徴である「独特の言い回し」に引っ掛かり、中には「ですが」問題に躓き、正解数が2問に満たない状態でお手付きを2回してしまい、失格・退場判定を受ける出場者が増えて来た事だった。
その為、落ち着いた時には勝ち抜けした青年を除いた9人の中で和人、明日奈、詩乃以外の生き残った者の姿が誰一人共おらず、予定していた東日本ブロック用の問題がそろそろ尽きるかもしれない状態にまで陥った。
東日本ブロック本戦・早押しラウンド用問題上限まで、残り10問。
ここから、シノンこと朝田詩乃の猛攻が始まる。
問題文の途中で押す人が多い中、詩乃は問題文の「何でしょう?」の「う」が聞こえたタイミングを狙い、的確にボタンを押して解答権利を掴み、答えていく。
残り7問。ここで、和人と明日奈、詩乃が×を1個も付けずに3問正解。
遂に、キリトとアスナ、シノンの3人による、最後の一枠を掛けての一騎討ちになった。
スタジオ内に緊張感が走る。そして、「SAO」で共闘した「夫婦」と「GGO」で共闘した「ペア」が個人として対峙する瞬間。
閃光の戦姫・アスナこと桐ヶ谷(旧姓:結城)明日奈、漆黒の敏腕ソロプレイヤー兼二刀流の騎士・キリトこと桐ヶ谷和人、そして、拳銃だけじゃなく弓矢までも使い熟すオールラウンダー型天才スナイパーにして、百発百中の狩人・シノンこと朝田詩乃。
青年が勝ち抜けして、多くの猛者が2回お手付きの失格・即退場処分に遭い、生き残った3人の試合の行方が、この一問で決まった。
「「2020東京オリンピック」のフェンシング男子団体で金メダルを獲得したのは、フルーレ、エペ、サーブルの内どれでしょう?」
問題文の「団体で」で勢い良くボタンを押す3人。しかし、解答席の電飾が点灯・点滅したのは、和人だった。
そして、「スターバースト・ストリーム」をお見舞いするかの如く、勢い良く「エペ」と解答して、正解判定を貰った桐ヶ谷和人が、二人目の決勝戦進出枠を掴み、東日本ブロック本戦・早押しラウンドの幕が閉ざされた。
東日本ブロック本戦・早押しラウンド終了後。
青年の勢いと和人の強さに圧倒し、無力な自分と越えられなかった壁に叩きのめされる自分の情けなさに、思わず泣き崩れる詩乃。
そんな詩乃を隣で慰めながらも、決勝戦に進む和人と青年にハグを交わして、和人と青年の二人をまるで自身の息子の様に愛でながらエールを送る明日奈。
そんな4人の姿を、朝日放送テレビのドキュメンタリー番組制作班(「キャスト」や「テレメンタリー」等を担当する。)が密着し続ける。
そして、西日本ブロック本戦・本戦も序盤から失格やお手付き2回での脱落者が相次ぎ、予定していた問題全てが無くなる寸前まで早押しクイズが続いて、残る決勝戦進出2枠が埋まり切ったのは問題上限まで残り1問の状態だった。
決勝戦の「アタック25」ステージは、席が決まった順に座る事になり、以下の通りになった。
赤:青年
緑:桐ヶ谷和人
白:西日本ブロック・本戦早押しラウンド 1抜け
青:西日本ブロック・本戦早押しラウンド 2抜け
オープニングの問題では、青年がVTRスタートから2秒後にボタンを押し、正解を叩き出す。
しかし、流石の青年も冒頭で押し負けを連発し、13番が他の色に変わってしまう。
でも、青年の持ち運が良かったのか、西日本ブロックの2人(白と青の席)が立て続けに誤答して立たされていた為か、青年が押して答えた時が其々、1、5、21、25の角を取る事が出来る絶好のタイミングだったからか、青年が答える度に、青年の眼中に其々の角のパネルの外枠が黄色く染まり、角を取っていく。
残るパネルが10枚の段階で白と青が0枚、赤が11枚、緑が4枚だったが、残るパネルが8枚の段階で青年が角のパネルを4つ全て取った時、青年の中で「アタック25」でパーフェクトを取った時に感じた「もう一人の青年」が覚醒。
直様、青年の本領が発揮して、連続で早押しをしては答え、正解を掴み取り、パネルを取りまくる。
併せて、緑も果敢に答えていく。しかし、緑が答えた後直ぐの問題で青年が答え、残り5枚の「アタックチャンス」時には、まるで「活火山の溶岩池に微かな地面(冷えた溶岩)が顔を見せる」様な状態に。
ところが、試合モードの状態だったのか、「アタックチャンス」前に谷原さんに会話を振られても青年からの返答が無い。
と言うのも、青年の感覚だと、浦川アナウンサー時代の「アタック25」以降「変わっていない」(一応、谷原さん時代も観ていたとは言え、観て直ぐに「アリシゼーション」篇に突入したが為に、「アタックチャンス」前の会話パートに全くと言って良い程に、慣れていない。)
いきなり谷原さんから「「アタックチャンス」以降、どうしていきたいか」と聞かれ、困惑する青年の姿を、緑の席で会話をアシストする和人。徐々に青年と和人、谷原さんの会話が広がるも、青年からのオーラが凄まじく、更なる緊張感がスタジオ中を包み込む。
クイズに挑む青年とは違い、クイズの合間の会話に慣れがなく、辿辿しい様子を見せる青年に、流石の谷原さんも青年に深呼吸を促す事態に。
一方の明日奈は朝日放送テレビのドキュメンタリー番組取材班の密着を受けながら、青年と和人の雄姿を見守っていた。
併せて、和人に会話が振られた時には、本戦で一緒に戦った明日奈にも話題が飛び、明日奈と和人の二人が距離や立つ舞台、環境をも関係なく、仲睦まじく谷原さんと談笑する。これには谷原さんも「ご馳走様で〜す。」と答える始末。
そして、迎えた「アタックチャンス」でも、青年の勢いが衰える事が無く、青年は立て続けにボタンを押しては答えてパネルを掴み、また押しては答えてパネルを掴み・・・を繰り返す。
一方、明日奈と詩乃は参加者専用ブースで、直葉と里香、珪子、アリスは観客席で、浦川アナは機材席側にて、青年と和人が挑む決勝戦を息を飲みながら見守る。
「アタックチャンス」から3分後。
パネルボード上、残るパネルは・・・あと1枚。
緊張感が漂い、赤・緑・白・青の4席其々に座り、左右其々の早押しボタンに其々の手を掛けて、いつ押して答えても良い様に構えて、今か今かと最後の問題にならんとする問題が加藤アナウンサーから読まれるのを待つ4人。
「アタック25」のフィールドが、4人の回答者の緊張感と真剣さと周囲からの臨場感で冷たく張り詰め、一触即発と化している。
まるで、某国際的陸上大会の男子100m走・決勝に挑もうとして、クラウチングの状態でスターターに足を掛けて号砲を待つ選手達の様である。
遂に、その時が来た。
「小説などの始まりの部分を「プロローグ」・・・」
「プロローグ」の「ー」の辺りで右手の手根部(掌の下の辺りで、手首の付近)でボタンと接触し、「グ」の辺りで勢い良く押す青年。
和人や他の2人もほぼ同じタイミングで押していたが、青年よりも0.01秒以上遅かったのか、青年が座る赤の席の電飾がけたたましく点灯し、席の背後のボードが点滅。司会の谷原さんが
谷原さん「赤!!」
青年「(一息置いて)「エピローグ」っ!!!!」
青年の顔を見る和人。他の出場者と明日奈達、あまりの速さに「状況の『じ』の字」も飲み込めず、フリーズ。
スタジオ隅の機材席に座る浦川アナに至っては、頭を抱えながら
「そこで押すのか・・・。でも、推測が出来るから押すんであって、ね。じゃなきゃ、リスクを恐れて押さないだろうよ。さぁ、吉と出るか、凶と出るか。」
と、息を呑みながら実況。
青年が答えてから3秒後。
「その通りっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
三代目司会者・谷原章介渾身の叫びがスタジオ内を轟かせ、会場が歓声と拍手で盛り上がる。
因みに、問題文と答えは以下の通り。
問:小説などの始まりの部分を「プロローグ」というのに対し、結末のことを何というでしょう?
答え:エピローグ
感極まり、くしゃくしゃになりながらも涙を流す詩乃と、涙を流しても母親の様に笑顔を見せ、詩乃を抱き締める明日奈。
和人に至っては、隣で凛として、死力を尽くしてまで「史上最強のチャンピオン決定戦」に挑む青年の姿に
「参った。」
と頭を下げて、青年の強さを証明する始末。
そして、谷原さんからの「ラストコール」の指示を貰い、埋まっていない最後のパネルの番号をコールして、「アタック25」史上最後の勝負である「史上最強のチャンピオン決定戦」のメインが幕を閉じた。
しかし、青年は喜びの表情を見せなかった。
彼(青年)にとって、「アタック25『史上最強のチャンピオン決定戦』」は「旅行を掛けた最後のVTR(フィルム)クイズを制してこそ」と考えているからだ。
数分後。
トップ賞(史上最強のチャンピオンに贈られる)の商品※1と参加賞※2の紹介を終わらせ、カメラがスタジオを写す。
※1:以下がトップ賞。青年以外は貰えない。
・ACEの旅行スーツケース「ウォッシュボードZ」ペアセット(約9万円相当。)
(提供:ACE(エース株式会社))
・フォーエバーマークの大北オリジナルペンダント(ダイアモンド付き)(約10万円以上相当だが、正確な価格は不明。)
(提供:ダイヤモンド大北)
・CITIZEN「EXCEED」の腕時計(約11万円以上相当。)
(提供:シチズン時計株式会社)
※2:以下が参加賞。本戦進出を果たした全員が獲得出来るが、青年(史上最強のチャンピオン)は獲得出来ない。
・「GOLD PFEIL」長札入れ、小銭入れ、ベルトの3点セット (約6万円相当)
提供:プレリーシミズ株式会社
・CROSS製ボールペン「Century Ⅱ メダリスト」(約1万2千円相当)
提供:株式会社クロス・オブ・ジャパン
青年が座る赤の席に近付く谷原さん。
パーフェクト達成の賞金100万円の目録(50万円の目録と同じ)が谷原さんから青年の手に渡り、旅行を掛けた最終問題前の談笑タイムへ。
青年は谷原さんからの問いに対して、若干のぎこちなさを出しながらも答えていく。勿論、会話の矛先が和人(明日奈と詩乃の介入有り)、西日本ブロック制覇の2人にも飛び、青年は硬直していた身体と心を少しだけ楽にして休める事が出来た。
青年の自然な笑みを見た谷原さんが、透かさず「ある提案」をする。
それは、最後の問題に青年が正解した場合、本来「ペア」でのみご招待の旅行(この時は沖縄県宮古島のシギラセブンマイルズリゾート「ホテル シギラミラージュ」プレジデンタルスイートで泊まる「沖縄・宮古島 ペア2泊3日の旅」)に、獲得者の青年、青年の両親、和人、明日奈、直葉、詩乃、里香、珪子、アリス、ユイの11人(注)を招待出来る様にするだけでなく、併せて、その前に提供した日本航空(2019年4月頭から2021年3月末までの「アタック25」の旅行が「「JALパック」※提供・JAL・日本航空直行便で行くハワイ島&オアフ島・ペア6日間の旅」だった。)から宮古島までのファーストクラスの往復チケットを10人分用意するという物だった。
(注:ユイも一人として数える。)
(※2019年4月頭から2020年4月頭までの表記は「お陰様でブランド誕生55周年「JALパック」」)
併せて、谷原さんは青年の両親(父・母共に故人)が「アタック25」優勝経験者で、「史上最強のチャンピオン決定戦」東日本、西日本の予選会の参加者の一部が口を揃えて
「(青年の名前)さんのご両親には、敵わない。どう足掻いたって、あの二人には勝てない。出来たら、もう一度戦いたかった。SAO事件の犯人のせいで、それが叶わなくて悔しい。」
と想いを吐露しつつ、青年に対してエールを送っていた旨を話しながら、ある物を青年に贈呈した。
「今回、〇〇(青年の名前)さんがパーフェクト達成で「史上最強のチャンピオン」になった訳ですが、実は、彼のご両親が「アタック25」の優勝経験者だった事もあり、亡くなられたご両親に何か出来る事は無いかと考え、番組から細やかですが、記念品を作りましたので、記念にお受け取り下さい。」
谷原さんから手渡されたのは、青年の名前と青年のご両親の名前、そして、これまでの優勝者の名前が書かれたリボンが付いたトロフィーと優勝旗だった。
拍手がより強くなり、会場が一気に暖かくなる。それに併せて、青年の目から大粒の涙が零れ落ちる。
更に、「アタック25」に出場した経験を持つ似顔絵師(本戦出場時に谷原さんと加藤アナウンサーに似顔絵を送った方。)から、青年の両親其々のウィーニングシーンのイラストと青年のウィーニングシーンのイラストを25枚のパネルみたく並べて作成した作品が贈られる。
そこで、谷原さんが青年の両親の顔を見ながら、和人と明日奈の顔を見て、二人がまるで両親の様に青年の様子を見守る理由を理解したのか、ある言葉を青年に伝えた。
「○○(青年の苗字)君、君は「アタック25」の中でキリッとして問題に挑む姿が印象に残るんだけど、収録前のプライベートな時間や面接の時の映像を見たり、初めて会ってみたりした時に、意外とね、まだまだ幼いんです。しかも、進路だ、進学だ・・・っていう時に、ご両親を亡くされてしまい、桐ヶ谷和人君・明日奈さんご夫婦に保護されるまで一人で全部抱えて、随分と苦労されて、さぞ辛かったんじゃ無いかと思います。そんな大変な時(和人と明日奈に保護されてすぐ)に「アタック25」に出会って、ご両親と同じクイズ王の称号を掴み、今日の大会で「史上最強のチャンピオン」の称号を掴んだ。ご両親以上の頑張りと活躍をされたんです。私も、君と同じ歳の子を持つ父親だから、痛い程よく分かります。しかも、一緒に戦った桐ヶ谷和人君、明日奈さん・・・姿や態度、クイズに挑む姿勢も全て君のご両親にそっくりでね。事前にお二人にお話を聞いて、更に「あぁ、成る程な」と思ったんですが、お二人がSAO内で憔悴し切った〇〇君と合流した為に、共闘してラスボスを倒して、SAOクリアを果たした直後で起きた病院の駐車場での暴動では、明日奈さんがいる病室に急いで向かう和人君を庇って、〇〇君が襲撃した犯人に果敢に攻撃しまくった。そして、〇〇君は犯人やその関係者全員をノックアウトさせて、二人の再会を陰で見守りながら失踪した。でも、失踪する前の〇〇君に
「リアルの世界でも、仲良くね・・・。キリトとアスナ、否、桐ヶ谷和人君と結城明日奈さん・・・守りたいんだ。殺された僕の父と母にそっくりだから、可能な限り、二人の事を守っていきたい。」
と言ったから、二人は失踪した〇〇君を追いかけ、〇〇君の事を深くまで知った。だから、お二人が〇〇君を自身の子供の一人として見守っているんじゃなかろうかと思うんです。〇〇君、二人と仲良くね。」
この言葉に、更に感極まる3人。釣られて涙が止まらない詩乃。周囲も涙が止まらない。
十数分後。
青年の両目の涙腺から一頻り涙を流し切った後、青年は落ち着いて「最後の問題」に挑もうとする。それに併せて、再びスタジオ中に緊張感が張り詰め、スタジオがより冷たくなる。
そして、「アタック25」としての「最後の問題」へ。
モニター上のパネルが全て外され、青年の眼中に映像が流れる。
独特のBGMと共に流れるVTRを見た青年の目はいつも以上に鋭さを増していた。
そんな青年の姿を見守りながら、両手を合わせて祈る明日奈と里香、珪子、直葉、アリス。息を呑みながら、青年の背中を優しく摩る和人。
VTRの途中、青年は余りの難しさに焦っていたが、和人が背中を摩っていたが為に落ち着きを取り戻し、息を整え、より目を見開いた。
VTR終了直後。谷原さんからの問いに、時報のカウントが鳴る前から、勢いよく答える青年。
谷原さん「その人物とは?」
青年「(解答席のマイクを掴み)秦の始皇帝っ!!!!!!!!!!!!!!!」
青年のシャウトに食い入る様に時報のカウント音・一つ目が鳴り、時報のカウント音・二つ目が釣られて鳴った。
そして、カウント音が三つ鳴った瞬間。
谷原さん「その通りっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
谷原さんの魂が籠ったシャウトがスタジオ中を駆け巡り、スタジオ中に張り詰めていた緊張感が一気に解けた。
スタジオ中に拍手と歓声の嵐が巻き上がり、スタジオ中がより熱く盛り上がり、まるで、ABCが全社を挙げて応援する阪神タイガースがセントラルリーグとクライマックス・シリーズ、SMBC日本シリーズの全てを制したかの様に、ABCテレビ本社の社屋の全てのフロアが歓喜に湧いた。
一気に感情が爆発し、感極まり、涙が止まらない青年。そんな姿の青年を、まるで特攻してくるかの様に一目散に青年に駆け寄り、強く抱き締める明日奈と和人。
この盛り上がりは正解兼「宮古島旅行」獲得のファンファーレが鳴り終わっても終わらず、その盛り上がりに司会の谷原さんや出題担当の加藤アナウンサー、機材席で見守っていた浦川アナウンサーと沢木さん(沢木美佳子さん)も乗っかり、場が収拾するまで数分掛かった。
そして、谷原さんが問題VTRの解説をし終え、青年の手に「アタック25」特製のクリスタルトロフィーが届いた後、挨拶と共に谷原さん、加藤アナウンサーの
「アタックチャンス!!」
コールで桜吹雪が舞い、「史上最強のチャンピオン決定戦」は大盛況の内に締め括られた。
数年後。
青年は、開局して間もないBS Japanextで復活した「アタック25」の進化系である「パネルクイズ アタック25Next」に出場する。
・・・こんな感じです。
何か、途中から「概要なのか、物語なのか、わからない。」と言われそうですが、骨組みを強くしたらこうなりました。
もし、皆さんが書き手だったら、どの様に妄想しますでしょうか?
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