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Study88_1.【トマトの基本を押さえよう!】トマトは肉の代用にすらなりうる/トマトの香りは、エキゾチックと青葉の香り加熱方法によってバランスが変化

今回のテーマは「トマト」。野菜Laboが販売している、東広島野菜をつかったポタージュスープ「朝のひとくちめ」の2023年夏のレパートリーにトマトポタージュを加える予定です。そのため、今回の最終目標は「おいしいトマトポタージュをつくること!」商品化に向けて進めてまいります。

まずは文献調査

トマトは多くの方にとって馴染みの深い野菜なのかなと思いますが、改めて「成分」「香り」「調理による変化」「保存方法」に項目を分けて根本から理解していきましょう。

今回も大好き「マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで- 共立出版」を手元に情報を集めていきます。世界中で広く使われている野菜なだけあって、これまでの野菜より多くの情報が載っておりとっても長めの記事になりそうな予感。どうぞ最後までお付き合いください。

トマトは肉の代用にすらなりうる(トマトの成分・構造)

アミノ酸の旨味はどちらか言えばタンパク質に富んだ動物性食品の特徴であるが,ある種の果実や野菜にはグルタミン酸が多く含まれる.トマト,オレンジ,海藻などがそうである.

Harold McGee(2008).マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで- 共立出版

トマトの素晴らしいところはなんといってもうま味成分の「グルタミン酸」が多く含まれるというところですよね!昔味の素の工場見学に伺った際、トマトの旨み成分の段違いな量がグラフに表されている展示を見て感動したのを思い出します。

 …… 糖含有量が3%程度と比較的少ないことに加えて,完熟トマトにはキャベツや芽キャベツと同様に旨味成分のグルタミン酸がかなり多く含まれ(重さの0.3%ほど),においをもつ硫黄化合物も含まれている.グルタミン酸と硫黄化合物は果実よりも肉に多く含まれるもので,したがって肉の風味に会いやすく、肉の代用にすらなりうる.

Harold McGee(2008).マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで- 共立出版

ここにきてものすごいことが書いてありました。「肉の代用にすらなりうる」ってすごい強いメッセージですね。日々野菜と向き合いながらも、お肉が感じさせてくれるうま味の強さって本当に強烈だな、と思うことが多くあります。とはいえ、お肉を入れないカレーやスープでトマトを潰して炒め尽くしてから煮込んだときの満足感のあるおいしさは、きっとそういうことなのですね。トマトは偉大です。ポタージュに向けた気持ちも膨らみます。

トマトの構造.果肉には糖,アミノ酸,芳香成分が特に多く含まれ,ゼリー質には糖とのバランスがよい酸が含まれる.

Harold McGee(2008).マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで- 共立出版

トマトの甘味・うま味・香りの多くは果肉に含まれ、ゼリー状の部分には甘味と酸味があるのですね。酸味を取り除くためにゼリー状の部分を取り除いてしまう、なんていうレシピもありますよね。今回は丸ごと使いたいので、それぞれの成分構成を理解した状態でどう向き合うか、ということを頭に置いておきたいと思います。

トマトの固形分は,約3分の2が糖や有機酸などの風味成分,20%が何らかの粘性をもつ細胞壁炭水化物(セルロールが10%,ペクチンとヘミセルロースがそれぞれ5%)である.

Harold McGee(2008).マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで- 共立出版

有機酸は、梅干しやレモンに含まれる「クエン酸」やお酢の主成分である「酢酸」などのこと。ちなみに「有機」という言葉は炭素(C)を基本とする化合物につくワードです。ペクチンは、混ぜると牛乳をプルプルにしてしまう「フルーチェ」を、フルーチェたらしめている成分ですね。セルロースとヘミセルロースはどちらも細胞壁に含まれる繊維質です。

トマトの香りは、エキゾチックと青葉の香り
加熱方法によってバランスが変化

トマトの香りを構成している2種類の香りが紹介されていました。

トマトの香り1
種類:「青葉」刈草の匂い
化合物:アルコール類,アルデヒド類(炭素数6)
発生の仕組み:切る,潰す,酵素が細胞膜不飽和脂肪に作用
特徴:繊細,調理すると弱まる(酵素の失活,化合物の変化)

トマトの香り2
種類:トロピカルフルーツ,エキゾチック,麝香(じゃこう)
化合物:硫黄化合物,複合体
発生の仕組み:事前に合成
特徴:持続性

Harold McGee(2008).マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで- 共立出版

こう分解して説明してもらうと、確かにそんな香りがする!と気づきます。フレッシュトマトの「青葉」刈草の匂いってありますよね。「朝のひとくちめ」は小さなお子様によろこんでもらえることが多いのですが、もしかしたらこの「青葉」の香りは苦手な子も多い可能性があります。一方でこの「青葉」の香りをつけるため、より香りの強い葉っぱの部分を香りづけに使うシェフもいるそう。好みによりそうですね。この辺はしっかりレシピづくりの過程で意識していきたいところです。

「香りの消し方」についてもヒントが書いてあり、加熱すると弱まるとのこと。そしてトロピカルフルーツ,エキゾチック,麝香(じゃこう)の香りは持続性がある様子。こちらの香りを残しつつ、「青葉」の香りとどんなバランスで仕上げるかがポイントになりそうです。

トマトの酵素と風味
トマトの酵素には,トロミに影響するもののほかに,風味に影響するものもある.風味に関して言えば,最初からある程度の酵素活性がある方が望ましい.完熟トマトの風味に重要となる新鮮な「青葉臭」の成分(ヘキサナール,ヘキサノール)は,鍋や口の中で果実組織がつぶされることにより脂肪酸が酵素分解されて生じる.早く加熱して沸騰させるとこの新鮮な風味は最小限に抑えられ,一方,生のピューレを室温に置いたりゆっくり加熱したりすれば,風味分子は多くなる.家庭では,トマトを半分または四つ割にして低温のオーブンで水分を飛ばしてから,比較的短い加熱時間でトマト・ソースを作ることも多い.この方法だと酵素と標的分子があまり混じり合わず,細胞が比較的そのままの状態に保たれるので,青葉臭もあまりでない.

Harold McGee(2008).マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで- 共立出版

またしてもおもしろいことが書いてありました。要点をまとめると、

1、潰さないまま早く沸騰させると風味が最小限に抑えられる
2、ピューレにしてから室温放置orゆっくり加熱で風味分子が多くなる

ざく切りにしてフライパンで強火加熱と、ペーストにしてからフライパンで弱火加熱、どのくらい差が出るものなのかやってみたいですね。

つづいての記事では、トマトと加熱温度の関係性についてまとめていきます。お楽しみに*



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