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Study80.「塩麹」で野菜はそれぞれどう変化する?

今回は、ポタージュづくりに塩麴を使用するにあたって、「塩麴による野菜への効果」を調べる実験を行いました。野菜を条件ごとに塩麴につけて食べ比べる実験です。

※この実験は、冷凍ポタージュスープ「朝のひとくちめ」の開発に向けて行っています。

この記事は、地元の農家さんのことをみなさんに身近に感じてもらうことを目指して活動する学生団体「Kitchen Worcar(キッチンワーカー)」の岩﨑・三輪・山本が、野菜Laboと共に実験から執筆まで行っています。同じ東広島で「食・農業」というキーワードで地域を盛り上げているパートナーです。Kitchen Worcarの活動について知りたい方はこちらのリンクから

食材をおいしくする調味料として知られる塩麴。実は塩麴が食材をおいしくするのには、塩麴が持つ2つの特性が関係しています。「❶塩麴自体に旨味成分がある」+「❷食材に何らかの影響を与えて、食材自体をおいしくする何かが起きている」この2つが合わさって、料理がおいしくなります。

❷が起こる原因は、塩麴に含まれる消化酵素の力!

・タンパク質を分解する「プロテアーゼ」
・デンプンを分解する「アミラーゼ」
・脂質を分解する「リパーゼ」

という3つの消化酵素が含まれています。

タンパク質が分解されるとアミノ酸(旨味成分)になります。つまり、食材の旨味が増します。
デンプンが分解されると糖になります。つまり、食材の甘みが増します。
脂質が分解されると脂肪酸とグリセリンになります。つまり、食材の脂っこさが減り、さっぱりとします。

塩麴レシピでお馴染みのお肉はタンパク質・脂質が多いので、より❷の効果が出やすいのです。

でも、お肉ほど「タンパク質・脂質」が多くない野菜はどうなるんだろう?

そこで、3つの消化酵素がそれぞれ働きやすい可能性があると予想した4つの食材に、塩麹をつけてみて、その効果を確かめることにしました!

・タンパク質が多い野菜「ズッキーニ
・デンプンが多い野菜「ジャガイモ
・脂質が多い野菜「枝豆」「アボカド

実験内容は、「塩麴につける時間によってそれぞれの野菜にどのような違いが出るのか?」です。

この実験のために用意した条件はこちらです。
A.塩麴なし
B.漬け30分
C.漬け3時間
D.漬け6時間

Vege-1.
ズッキーニ(タンパク質の多い食材)
【野菜の旨味を出すには3時間漬け?】

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(上:塩麴なし、右:漬け30分、下:3時間、左:5時間、中央:アク抜きも塩麹漬けもしていないもの)

ズッキーニを水で洗った後、5㎜程度にスライスし、塩水でアク抜きをして、各条件で塩麴に漬けたものを弱火で炒めて、試食してみました。

見た目▶︎漬けるほどシナシナに

塩味のある液体(アク抜きをしたもの、塩麹漬けしたもの)に漬ける時間が長いほどシナシナになりました。漬けたはものはみんなシナシナになりましたが、アク抜きなしはシナシナにはなりませんでした。

香り▶︎漬けるとなくなる

アク抜きなしだけズッキーニの香りでした。漬ける時間による変化はありませんでした。塩麴に漬けないとズッキーニの香りを残すことができるようです。

食感・舌触り▶︎漬けるほど柔らかく

「塩麹なし」はズッキーニの香りが強かったです。6時間はよぼよぼとしていましたが、「アク抜きなし」は歯ごたえありました。塩麴につける時間が長いほど水分が出て、柔らかくなりました。

味▶︎3時間がおいしい

漬け時間が長いほど塩味が強くなりそうでしたが、一番短時間の30分と長時間の6時間がしょっぱく感じました。そして不思議なことに、中間の3時間の塩味がちょうど良く、同時に旨味も感じられる結果となりました。

30分は野菜表面に塩麴の成分が多く残っているためか塩麴の味が強かったです。6時間は塩味がとても濃く、野菜の芯まで塩麴が浸透している感じでした。

つまり、30分ではまだズッキーニのタンパク質が分解仕切れておらず、旨味に変わっていなかった可能性があります。逆に6時間では旨味も増していましたが、それと同時に塩が浸透しすぎて辛みが勝ってしまったと考えました。

Vege-2.
ジャガイモ(デンプン質の多い食材)
【ジャガイモも漬け3時間が一番おいしい?】

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(右上:塩麴なし、右下:漬け30分、左下:3時間、左上:6時間)

2cm角のサイコロ状に切り、茹でたものを各条件で塩麴に漬けて、食べ比べてみました。

見た目▶︎漬け時間が長いほど白くなる

塩麴に漬ける時間が長いジャガイモほど白く変色した部分が多くなっていました。塩麴によりジャガイモのデンプンが分解されたことが関係してそうです。

香り▶︎塩麴の香り

塩麴に漬けたジャガイモはどれも漬け時間に関係なく塩麴の香りになっていました。

食感・舌触り▶︎茹で加減による

今回の実験では、塩麴によるジャガイモの食感の変化はわかりませんでした。(実は、茹でる際に竹串で火の通りを確認して湯で終わりを決めたところ、硬さに差が出てしまったので、次回からは茹で時間を決めて行おうと思いました…)

味▶︎漬け3時間がおいしい

30分はジャガイモの中まで塩麴が浸透しておらず、ジャガイモと塩麴に一体感がないという感じでした。しかし、3時間は30分よりも塩気が少なく、まろやかな味になっていました。漬け6時間は長く漬けた分、ジャガイモの奥まで塩麴が行き渡っている感じがしましたが、少ししょっぱかったです。

Vege-3
アボカド(脂質の多い食材)
【塩麹とは合わない…】

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2cm角のサイコロ状に切り、各条件で塩麴に漬けました。

見た目▶︎漬け時間が長いほど緑が濃い

漬け時間が長いほど、表面が柔らかくなり緑色が濃くなっていました。アボカドの脂質が塩麴によって分解されたことが関係してそうです。

香り▶︎塩麴の香り

塩麴に漬けたものはどれも塩麴の香りになっていました。漬け時間による違いはありませんでした。

食感・舌触り▶︎漬け時間が長いほど柔らかくなる

もともとねっとりとした食感のアボカドですが、塩麴に6時間漬けるとさらに柔らかくなりました。脂質が分解されたことでねっとり感がより増したようでした。

味▶︎6時間はアルコールみたいな味⁉

これまでの野菜と同様、30分はアボカドの表面にだけ塩麴が浸透しており、アボカドと塩麴の一体感はありませんでした。3時間は30分より塩麴の塩味がマイルドになっていました。ところが、塩麴に6時間漬けたアボカドはアルコールのような味がしました。なぜそうなったのかはまだ見当がついていません。

しかし、塩麴につけたアボカドはどれもあまりおいしくなく、アボカドと塩麴は合わないのではないかと思いました…。

Vege-4
エダマメ(脂質の多い食材)
【塩麹との相性抜群!】

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(上:塩麴なし、右:漬け30分、下:3時間、左:6時間)

塩ゆでした後、さやから出して、各条件で塩麴に漬けました。

これまでの食材では見た目や香り、食感などに変化があったのですが、塩麴による見た目や食感の変化は特にありませんでした。

味に関しては、どれもおいしかったです。その中でも一番おいしかったのは「3時間」。塩味がまろやかになり、甘みとエダマメのおいしさを感じることができました。とはいえ、他の食材と比べて圧倒的に塩麹との相性が良かったです。

<まとめ>
塩麹を存分に活かせる時間は【漬け3時間】が良さそう

塩麹を漬けて一番おいしいと感じたのは、今回扱った全ての野菜において3時間となりました。「漬け3時間」は、30分では食材の表面にしか浸透していなかった塩麹が食材の内側まで浸透し、塩麹の味がマイルドになるとともに、野菜の旨味も感じられました。

塩麹と最も合う食材は【エダマメ】

塩茹でして食べることが多いエダマメは、塩麹との相性も抜群でした。漬け30分・6時間では少ししょっぱくも感じましたが、どの条件でもおいしかったです。

<参考文献>
1) 川上美智子, 田所優子, 日水教子, 小林彰夫:キュウリとニガウリの調理塩揉み工程における香気の変化, ソルトサイエンス研究財団平成 14 年度助成報告書, 231‒244 (2004)

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