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野菜が大好きだけど、お肉もお魚もいただく理由。栄養素や将来的な身体への影響についての研究結果をもとに。

「朝のひとくちめのポタージュは、植物性食品のみでつくっているんです」とご紹介すると、(あなたは)ベジタリアン(もしくはヴィーガン)ですか?と聞かれることがあります。

その度に、「動物性のものも食べますよ〜」とお答えするのですが、その背景にはこれまでにインプットしてきた情報があり、その総合的な判断としてそうしている、というのがあります。

今回は、ちょうど信頼のおけるまとまった情報に出会うことができたのでご紹介してつつ、「何をどれくらい食べるのか?」という選択の参考にしてもらえたらと思います。

まず野菜だけ食べる、ということの身体への影響をみていきましょう。

菜食で摂取が増える栄養素もあれば、不足してしまう栄養素もある

イギリスの肉食者 33,883 人と非肉食者 31,546 人のグループにおけるライフスタイルの特徴と栄養素摂取量について調べた、菜食主義者に関する世界最大の研究の 1 つよると、菜食により摂取が増える栄養素と、不足する栄養素が示されています。

ヴィーガンの飽和脂肪酸の平均摂取量はエネルギーの約5%で、肉食者の平均摂取量(10~11%)の半分未満でした。ヴィーガンは繊維質、ビタミンB1、葉酸、ビタミンC、ビタミンE、マグネシウム、鉄の摂取量が最も多く、レチノール、ビタミンB12、ビタミンD、カルシウム、亜鉛の摂取量は最も低かった。

Davey GK, Spencer EA, Appleby PN, Allen NE, Knox KH, Key TJ. EPIC-Oxford: lifestyle characteristics and nutrient intakes in a cohort of 33 883 meat-eaters and 31 546 non meat-eaters in the UK. Public Health Nutr. 2003 May;6(3):259-69. doi: 10.1079/PHN2002430. PMID: 12740075.

ヴィーガンは肉食者よりも飽和脂肪酸の摂取が半分未満になった、とされていて、これはいいことのように思えます。

飽和脂肪酸は、肉の脂質、鶏皮、乳製品、パーム油などに多く含まれ、体内で生成でき過剰な摂取は肥満の原因となるため、摂り過ぎには要注意な成分です。

また、摂取が増えた成分も多くありますが、減った成分も多くありました。その中でも、ヴィーガン・ベジタリアンは「ビタミンD」が、特にヴィーガンは「カルシウム」も不足しやすいと言われています。「ビタミンD」の不足は本当によく見かける情報です。

ビタミンDは、魚類、きのこ、乳製品、卵に含まれているとされています。きのこ以外は動物性の食品なので、菜食にすると不足しがちになってしまうようです。

余談ですが、ビタミンDは日光を浴びることでも生成されることで有名ですが、日焼け止めを塗ってしまうとその効果は出なくなってしまうようです。美容を気にかける方にとっては、美肌のためには「とにかく日焼けはしないこと!」と第一優先にされている方も多いのではと思うので、悩みどころです…さらに植物性食品オンリーになってしまっては、さらに心配です。

なので個人的には、毎日の日焼け止めは絶対に妥協できないので、動物性の食品を食べない時でも「きのこ」は食材に選ぶように心がけています。

菜食はダイエットのためならよいかも

話が少し外れましたが、では、その摂取成分の違いは体にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

イギリスの肉食者、魚食者、ベジタリアン、ヴィーガンの 38,000 人の食事と肥満指数を調べた研究によると、高タンパク質と低繊維摂取(つまり高タンパクなお肉の摂取の多さと食物繊維の多い野菜の不足)は、BMIの増加と最も強く関連する要因としています。

年齢調整平均 BMI は 4 つの食事グループ間で有意に異なり、肉食者で最も高く(男性 24.41 kg/m2、女性 23.52 kg/m2)、ヴィーガンで最も低かった(男性では 22.49 kg/m(2)、女性では 21.98 kg/m(2))。魚食者(魚を食べる非肉食者)とベジタリアンは同様の中間の平均BMIを持っていました。

魚食者、菜食主義者、特にヴィーガンは肉を食べる人よりも BMI が低かった。高タンパク質と低繊維摂取は、BMIの増加と最も強く関連する要因でした。

Spencer EA, Appleby PN, Davey GK, Key TJ. Diet and body mass index in 38000 EPIC-Oxford meat-eaters, fish-eaters, vegetarians and vegans. Int J Obes Relat Metab Disord. 2003 Jun;27(6):728-34. doi: 10.1038/sj.ijo.0802300. PMID: 12833118.

つまり、魚食者と菜食、特に菜食の中でもヴィーガンは「ダイエットに良い」ということが読み取れます。体重が軽くなるということはわかったのですが、それは健康につながっていくのでしょうか。

長い目で見たとき、病気への影響はあるのか?

肉食者・魚食者・菜食者と病気の発生について論文をもとにまとめた書籍によると、菜食・魚食者は普通食者(肉も食べる)と相対的に「心筋梗塞」「糖尿病」「がん」の発生率が低く、菜食者の「脳卒中」「骨折」の割合は高かったとされています。(佐々木 敏 (著)(2023)行動栄養学とはなにか?)

菜食によって発症率が高くなる病気と、低くなる病気があるのですね。また、ベジタリアンと魚食者が同じような傾向を持っていることにも触れていました。

そういえば、子どもにとって菜食はいいの?

子供の植物ベースの食事についての長期的な傾向、健康への影響、緊急の実践推奨と研究のロードマップ についての研究によると、まだ推奨はできなそうな内容が書かれていました。

雑食動物と比較して、ベジタリアン、特にヴィーガンの子供では骨ミネラル含有量が減少しています。ビタミンB12サプリメントを摂取しないベジタリアンとヴィーガンの子供はどちらもビタミンB12欠乏症を示します。ただし、サプリメントを摂取するとこの問題が解決されます。ベジタリアンとヴィーガンはどちらも、サプリメントを摂取していないと 25(OH)D 濃度が低く、体内の鉄貯蔵量が低いですが、通常、鉄代謝マーカーは正常です。

25(OH)D=ビタミンD
鉄代謝マーカー=鉄代謝の指標となる物質

どちらのグループもヨウ素欠乏症のリスクがあり、これが甲状腺の健康に影響を与える可能性があります。ヴィーガンの食事を摂取している子供たちは、雑食性の子供よりも脂質プロファイルが良好です。ただし、ベジタリアン食の結果には一貫性がなく、結果によって異なります。同じ科学的証拠に基づいて、国内および国際的な食事の推奨は不均一であり、乳児、子供、青少年の植物ベースの食事を支持する国もあれば、推奨しない国もあります。

Desmond MA, Fewtrell MS, Wells JCK. Plant-Based Diets in Children: Secular Trends, Health Outcomes, and a Roadmap for Urgent Practice Recommendations and Research-A Systematic Review. Nutrients. 2024 Mar 1;16(5):723. doi: 10.3390/nu16050723. PMID: 38474851; PMCID: PMC10934552.

推奨している国があるというのは驚きでしたが、リスクもまだありそうです。摂取している脂質の内容は良い傾向がありそうですが、その他のリスクも無視できません。一概に植物性食品を推奨することはできなそうです。

さて、まだまだ話したりませんが今回ここまで。

次回はもう少し具体的に、どんな選び方していけばいいのか?という考え方について掘り下げていこうと思います。次回もお楽しみに*



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