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Study85_3.「リンゴ」を一番シンプルで香り良いアップル・バターにするには?(切り方編)

このレシピは、2022年4月12日から5月22日まで東広島市立美術館で開催されている「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」に合わせて配信された「アップル・バターづくりのインスタライブ」で公開されたものです。インスタライブのアーカイブは、東広島市立美術館の公式インスタグラムでご覧になることができます*

これまで「アップル・バター」について知るために、実際に食べたり、書籍からその作り方を読み解いたりして、下調べをしてきました。

これまでの「アップル・バター」の関連記事はこちらから
Study85_1.「リンゴ」を一番シンプルで香り良いアップル・バターにするには?(下調べ編)
Study85_2.グランマ・モーゼスが描いた「アップル・バターづくり」の方法を書籍から読み取る(下調べ編)

さて、いよいよ実際の実験に移っていきます。今回使用したのは「フジ」。

これまでの下調べを元に、6つのリンゴペーストをつくりました。

実験内容

つくり分けたリンゴペースト
A. すりおろし_炒め
B. すりおろし_煮込み30分
C. すりおろし_放置_煮込み30分
D. イチョウ切り_炒め
E. イチョウ切り_煮込み30分
F . ゴロゴロ1/16切り_煮込み30分
※すりおろしは攪拌なし、イチョウ切りとゴロゴロ1/16切りはハンドブレンダーで軽く攪拌あり

Cは、酸化によってリンゴの味は変わるのかどうかを確かめるためすりおろしたリンゴを40分放置してから煮込みます。

香りをなるべく残したいので皮ごと調理。野菜も洗える洗剤でリンゴの表面をよくこすり洗いしてあります。加熱方法は必要以上に香りを飛ばさないためトロ火。

すりおろしたリンゴ
使ったすりおろし器はこれ

おもしろかったのは、煮込みから28〜29分が経過すると途端にリンゴが透き通ること。透き通ったリンゴは持ち上げられないくらい柔らかくなっています。フニャンフニャンです。

透き通った状態の F .ゴロゴロ1/16切り

完成したペーストがこちら、色もそれぞれになりました。

赤みが強い順


赤みが強い順に左から A.すりおろし_炒め、D.イチョウ切り_炒め、B.すりおろし_煮込み30分、F .ゴロゴロ1/16切り_煮込み30分、C.すりおろし_放置_煮込み30分、E.イチョウ切り_煮込み30分

色が暗い順

明度が低い順に左から C.すりおろし_放置_煮込み30分、A.すりおろし_炒め、E.イチョウ切り_煮込み30分、F .ゴロゴロ1/16切り_煮込み30分、B.すりおろし_煮込み30分、D.イチョウ切り_炒め

分かってきたこと

甘さが濃厚になるのは「すりおろし」

はっきりと違いが出たのですが、「すりおろし」はとにかく甘さが濃厚に感じます。加熱前に細胞を壊しているので、細胞内の甘さが舌に届いているのかな、という印象。加熱してから撹拌したリンゴは「すりおろし」と比較してしまうと水っぽさが気になります。細胞がほぐれる状態に近いので、細胞内の甘さが滲み出てきている量が少ないのかもしれません。

蜂蜜みたいな濃厚さが出るのは
あえての「酸化」?

意外な結果も出ました。酸化には「風味が変わってしまい良くない」という悪い印象がありますが、本当にそうなのかな?と試してみた、「すりおろしてから40分放置」のリンゴが思いのほかおいしい…*酸味のあるフレッシュ感は無くなりますが、どことなく「クセ」のようなものが出てきてそれが蜂蜜のような「コク」に感じられます。酸化しないように!と気張って阻止する必要はないのかなと思います。

フレッシュなリンゴジュース感が残るのは
「加熱時間が短い」リンゴ

リンゴジュースを思わせる酸味がありフレッシュな味に感じたのは、炒めだけで済ませ加熱時間が16分しかない「すりおろし_炒め」と、長く煮込まず合計34分しか加熱していない「イチョウ切り_炒め」でした。それ以外のリンゴは合計45分以上加熱しています。グランマ・モーゼスの描いたアップル・バターづくりでは10時間以上も煮込んでいたのではないかと予想しているので、酸味の少ないアップル・バターだったのかもしれません。

舌触りが抜群に滑らかになるのは
「すりおろし」ではなく、「カット」
煮込みも必要

甘さが出て感動した「すりおろし」ですが、舌触りは「イチョウ切り」「ゴロゴロ1/16切り」にはだいぶ劣りました。ざらざらした食感が舌に残ります。一方「イチョウ切り」「ゴロゴロ1/16切り」はとても滑らかで、口に入れた瞬間「なめらか!おいしい!」となります。甘みの強さと滑らかさ、どちらも達成する方法はないのでしょうか… さらに、煮込みの工程がないと舌触りが悪くなる傾向にあります。

香りが良く残るのは
「すりおろし」ではなく、「カット」?

煮込んでいる間に気がついたのは香りの強さの違いでした。「イチョウ切り」「ゴロゴロ1/16カット」は煮込みの最中フライパンのフタから漏れ出てくる香りに「ああ、良い香りだな…*」と気づくのですが、「すりおろし」はフライパンに顔を近づけなければ香りが感じられません。香りがする=香りが飛んでいっているということなので、「カット」の方が香りよく仕上がるのではと単純に結論づけることはできません。

できあがったペーストを味見してみても、味を正確に判断できるよう冷ましているので香りの大きな違いは分かりませんでした。ですが、アップル・バターをこんがり焼いたパンに乗せて食べるシーンを想像すると、せっかくなら温まったアップル・バターから良い香りがしてきた方がいいですよね… 次の実験で、温めた場合の比較もしていければと思います。

決定事項

  1. フレッシュ感ではなくコクのある濃厚さを目指すため、30分はしっかり煮込む

  2. 甘さを濃くするため、すりおろしを入れる

ひとまず1回目の実験を終えましたが、まだまだ不確かなことばかり。この2つは決定事項として、次の実験を組み立てていきます。

次の実験で確かめること

「カット」は滑らかだけど、皮が舌に残る
よく攪拌すれば改善するか?

滑らかさがとても良かった「イチョウ切り」「ゴロゴロ1/16切り」ですが、撹拌し損ねた皮が舌に残るのは少し欠点でした。本来、煮崩して滑らかさを出す料理なのであまり完璧に撹拌しすぎないようにハンドブレンダーにかけたのですが、しっかりと滑らかにした方が良さそうです。

「すりおろし」は濃い甘さがおいしいけど
攪拌しても甘さは保てるか?滑らかさは出るか?

味はおいしかったけど舌触りの悪さが気になった「すりおろし」次回は最後に攪拌をしてみて、甘さを保ちながら滑らかさは出せるのか?試してみようと思います。

酸化は本当に味に関係してる?

40分放置してから調理した「すりおろし_放置_煮込み30分」のリンゴ。蜂蜜みたいなコクが出た、と感じたけど僅かな違いなのでもう一度試してみたいと思います。次回はなが〜く放置してみようと思います。

皮は本当に香りを残してくれているのか?

全てのリンゴを皮付のまま調理しましたが、皮の舌触りが気になってしまったのは事実。本当に皮は香りを残す役割を果たしてくれているのでしょうか?ここまで煮込んでしまったら、もはや関係ないということもあり得そう。次回は皮なしも試してみようと思います。

まだまだ続きそうなリンゴ実験。続きもお楽しみに*








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