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Study81.ズッキーニの最適なアク抜き時間は?

生のままでは苦味や渋みが残ってしまう野菜に対しアク抜きを行います。しかし、水には栄養成分なども溶け出してしまうため、長時間アク抜きを行うとアクだけでなく栄養成分や味も損なわれてしまいます。

前回の実験によりズッキーニのアク抜きには塩水が最適であることがわかりました。そこで今回はアク抜きのために塩水につける最適な時間の長さを検証していきたいと思います。

前回の実験はこちらから「Study74.「ズッキーニ」のアク抜きに最適な方法は?」

※この実験は、冷凍ポタージュスープ「朝のひとくちめ」の開発に向けて行っています。

この記事は、地元の農家さんのことをみなさんに身近に感じてもらうことを目指して活動する学生団体「Kitchen Worcar(キッチンワーカー)」のまゆ・あやなが、野菜Laboと共に実験から執筆まで行っています。同じ東広島で「食・農業」というキーワードで地域を盛り上げているパートナーです。Kitchen Worcarの活動について知りたい方はこちらのリンクから

今回は以下の4つの条件に分け、違いを比べてみました。

A:アク抜きなし
B:アク抜き  5分(1%塩水)
C:アク抜き10分(1%塩水)
D:アク抜き30分(1%塩水)

また今回は前回の反省を活かし、ズッキーニ全体が塩水に浸かることに注意して取り組みました。

用意した材料はこちらです!

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今回は前回の黄色ズッキーニとは異なり、緑色のズッキーニを用いました。

まずはズッキーニ160gを輪切りにし、アク抜きをするものは時間通り1%の塩水につけていきます。油5gを引いたフライパンで透き通るまで炒め、写真の様な見た目になったら水100g、塩1.4gを加えます。十分火が通ったところで火からおろし、ハンドブレンダーで撹拌(かくはん)すれば完成です!

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完成したものがこちら!

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(左:アク抜きなし、 中央左:アク抜き 5分、 中央右:アク抜き10分、 右:アク抜き30分)

今回は前回よりもズッキーニ本来の味がわかりやすい様に豆乳は足していません。

とろみに大きな違いなし

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全体的にスプーンから落とした感触に大きな違いはありませんでした。

粘り気をもち、スプーンで持ち上げたり落としたりした時には8分立ての生クリームの様に表面に形が残っていました。今回はハンドブレンダーを用いたため、前回のミキサーで攪拌したときと比べて粗い仕上がりになっていました。

火が通るほど滑らかな舌触りに

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実験中に、実は「アク抜き5分」のフライパンには間違えて2回水を入れてしまいました…。そのせいで、水分を十分飛ばすのに時間がかかってしまいました^^;

結果的に加熱時間が長くなった「アク抜き5分」は、他の条件と比較して滑らかな舌触りになっていました。このことから火を通すほど滑らかな食感を生み出すことができることがわかりました。

一番アク抜き時間の長い「アク抜き30分」は他の条件と比較して火が通りやすく、透き通るまでの時間が15分ほど短かったです。また舌触りもよく、アク抜き時間が長いほど滑らかになることもわかりました。これは塩水につけていた時間が長く、浸透圧により水分が抜けたことが理由だと考えています。(水分が抜けることで質量が減少し、火が通りやすかったのだと思います)

最も味の調和がとれていたのはアク抜き10分

今回用いたズッキーニはアクが少ないものであったため、条件ごとの味の違いはそれほど大きくありませんでした。しかしそんな中でも微妙な違いがあり、アクの苦味が舌に残らず味の調和がとれていると感じたのは「アク抜き10分」のものでした。「アク抜きなし」のものは微量ですが、後味に苦味を感じました。一方で30分アク抜きをしたものは味も水に流れたためか、塩味が強くなってしまいました。そのため10分がベストなアク抜き時間だと考えられます。

加熱を長くすることでズッキーニ本来の香りが飛んだ

「アク抜き5分」は2回水を加えてしまったため、加熱時間が倍になりました。その結果、ズッキーニを切ったり炒めたりしている時に感じたウリ科特有の香りが飛んでしまいました。これはウリ科の主な香り成分であるアルコール類・アルデヒド類 ※1)が加熱により揮発し、減少することが原因であると考察しています。ウリ科独特の香りを楽しみたい方は20分ほど煮込むことを、香りが苦手な方は30分以上煮込むことをお勧めします。

次回の実験に向けて

今回の実験結果から「1%の塩水に10分漬けておく」というのが最適なアク抜き方法であることがわかりました。
他にも塩水につける時間が長いと火が通りやすく舌触りが滑らかになることや、加熱時間を長くすることで香りが飛んでしまうことがわかりました。

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また、今回試作するにあたり、ポタージュ完成後の総量の目安を設定していました。しかし全体的に水分を飛ばしすぎてしまい、想定より少ない総量になってしまいました。そのためハンドブレンダーで撹拌する際、想定の総量に合わせるため水分を約30g加えています。次回の実験では飛ばす水分量に注意して実験を行いたいです。

今回の結果を踏まえ、次の実験ではズッキーニのポタージュに合う食材の分量比を求めていきたいと思います。

次回もお楽しみに*

<参考文献>
1) 川上美智子, 田所優子, 日水教子, 小林彰夫:キュウリとニガウリの調理塩揉み工程における香気の変化, ソルトサイエンス研究財団平成 14 年度助成報告書, 231‒244 (2004)

<ズッキーニに関する過去の記事>
Study76.「ズッキーニ」をポタージュにするときに合う食材はなに?
Study74.「ズッキーニ」のアク抜きに最適な方法は?
Study49.ズッキーニの和え物に合う切り方

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