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超個性的な家のお披露目の日に、担当設計者は考えた。

「こんな設計でよく施主が許したものだな」


この家を見た方々から、よくそう言われる。
事実、個性的なプランの家を見ると、私自身もそう思う。
 
題して「厨房の家」

 
この家で一番豊かな空間は、キッチン
DKではなくて、キッチン
食事もキッチンでとる
ダイニングテーブルなど、ない
 
このアイデアは、
お客様の暮らしの形と、
町の井戸のような四周囲まれたロケーションから生まれた。
 
住まいに求める機能は数多くあるが、代表的なものとしては
「使う」と「寛ぐ」であろう。
 
多くの住まいはLDK方式をとっていて、
「使う」と「寛ぐ」は互いに重なり合っている。
しかし、今回のお客様は、「使う」のウエイトがとても高い。
使うことに対して、並々ならぬこだわりをお持ちで、現に様々工夫を凝らしながら家を使っていた。
 
さらに、建物の谷間のような閉鎖的なロケーション。
寛ぐにはどこを向けばいいのかと思案してしまう。
 
そこで、日々の「使う」と、
日々のタスクから離れた「寛ぐ」は、別の生活様式だと仮定した。

まずは使う家として考えた。
そこにロケーションから紡ぎだされた貴重な抜けに向かって、リビングを設ける設計。



 
キッチンが中心の家という題目の住まいは時々見かけるが、
その程度を大きく逸脱した、キッチン第一主義のプラン。




ほぼ厨房と呼べる代物である。

10畳吹き抜けのキッチンには、作業台兼ダイニングテーブル。
あくまでもここは作業台。ダイニングテーブルなどではない。
 
吹き抜け空間を介して、二階に配置したリビングは、
お客様に「カーテンなんていらない」と言わしめた抜群のロケーション。

リビングでは日々のタスクから離れ、だらだら、ごろごろ、する。
景色、本棚、テレビ、ベンチ、展望デッキ、などなど。
楽しそうなものはすべてここに詰め込んだ。



 
キッチンとダイニングとリビングは繋がってないと不便とは、誰が言い始めた?
もともと用途が違う3つの部屋だったのだ。


 
私は、お客様の生活スタイルから「使う」と「寛ぐ」をもう一度見直しただけ。
 
これが個性的な住まいと言うのであれば、必然的にお客様が「個性的」という事になる。
個性とは得てしてそう言うものなんだ。

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