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『ガールズ&パンツァー 最終章 第4話』感想 みぽりん不在で大洗が勝つ方法

私を含む全世界のガルパンおじさんたちに衝撃を与え、奈落の底に叩き落としてくれたあの第3話からはや2年。待望の4話が公開された。継続高校の地の利を活かした攻撃、見え隠れする謎の腕利きスナイパーの存在、何より軍神、西住みほ不在という大ピンチの中、大洗女子学園に勝ち目はあるのか。

私は生まれてこの方、スポーツ観戦というものに全く楽しみを見出せなかった人間だ。やきうを見ながら怒ったり喜んだりなどして興奮している大人を見るたび、(一体何が楽しいのだろう)と呆れていたが、ガルパンを見ていると、あぁもしかしたらスポーツ好きな人の気持ちというのはこういうことかもしれないと思ったりもする。それを戦車道で見出してしまう私もどうかしている気もするが。気がつくと大洗と敵チーム、どっちもがんばれがんばれと応援しているのだから。それほど過去のガルパンの試合はいずれもそれほどまでに熱く、素晴らしいものだった(特に劇場版)。

で、肝心の本作の試合内容だが、意外や意外、タンク映画にあるまじきスピード感で、今夏の異常な暑さやこのほどの物価高ですっかり弱りきったガルパンおじさんの視力を破壊すること間違いない。特に試合のクライマックス、戦車というかもはやワイスピに出てくるスポーツカーみたいな速度が明らかに出ており、敵のフラッグ車をめぐるカーチェイスに発展する! ちなみに、なんでそういうことになるかは映画を見てのお楽しみ。どうでもいいが、あまりに迫力ある演出のためか、破壊された戦車がどっちの高校なのか判別できなかったという気の毒な感想がネットにアップされていたりもしたが、その気持ち凄くわかると思った。

というか、終盤は戦車しか画面に映っていないのが、作り手の戦車道に対するなみなみならぬこだわりを感じさせる。女の子はほんの1秒のカットで「あ」という台詞とともに一瞬映るくらいで、あとは撃墜される戦車にフォーカスされる。ガールズアンドパンツァーなのに、パンツァーしか映ってねぇ。ガールどこ行った? 先のワイスピ演出にせよ、ほかの試合にせよ、ぶっ飛んでいる演出にも関わらず、こういう環境でこう重たい戦車が戦闘したら当然こうなるよね、という論理というか筋を通しているのがガルパンの良い所。ガルパンはSFなのであり得ないっちゃあり得ない描写ばかりなのだが、不思議と納得感もあったりもする。

本作の素晴らしい点はそれだけはない。私は、ガルパンという作品は一貫して、自立や独立を描いてきた作品だと解釈してきた。このお話でもそのパーパスは一貫していて、試合を通して描かれるのはみぽりん率いるあんこうチームのワンマン体制からの脱却なのだ。

なんだかんだあっても、西住みほが何とかしてくれる…という甘い幻想をぶち壊した前作から、それを見守る私を含むガルパンおじさんたちは2年間、ずっと考えていたのである。「みぽりんがいない大洗が勝つ方法は何だ?」と。それは観客があっと驚く奇策なのか、それとも…おじさんたちの思念が渦巻く中で作り手が選択した答えはシンプルかつ、最も合理的な答えだった。つまるところ、西住みほの代わりを立てること、後継者の存在を作ることなのだ。それは人事変更という新陳代謝によって、そっくり人員が根こそぎされることもありえるが組織なのであり、絶対的に必要なことだったりする。勿論、それは高校の部活動にも当てはまることである。いつかはみんな卒業していく訳だ。ガルパンはそうした世間の当たり前や常識をお話に落とし込むのも良いところだ。

で、本作の西住みほの後継者は誰なのか、という答えだが、これ以上の回答は無いだろう。TV版では聖グロの圧倒的な力の前にぶざまに逃げ出したあの女の子が、こんなにも立派になって、と久方ぶりに甥とか姪っ子に会った親戚のおじさんのような気持ちになりながら、劇場を後にしたのだった。

自分の書いたものを読み返してみると、ガルパンを知らない人にはなんのこっちゃわからないような内容で笑った。まぁ、とりあえず未見の人にも自信を持っておすすめしたい、ガルパンはいいぞ、と。



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