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熊野灘もう一つの古道 桑野淳一著

熊野、吉野、伊勢に関する非常に読みやすい本です。

筆者が友人が週末だけ住む三重県南伊勢町(旧南島町)を訪れる所から本が始まり、その後、南島の町中や自然の描写があり、熊野、吉野、伊勢と南北朝時代の歴史背景を踏まえつつ筆者の謎解き物語が始まるといった感じです。

私自身も熊野や吉野、伊勢の自然には大いに魅了されている人間なので、筆者の描写が非常によく思い起こすことができました。
また、私が熊野で感じた、どこの自然とも違う論理では説明できない不可思議な自然の気配というのも、何故感じられたのか、筆者の文章により理解することができました。

熊野の地には神道と仏教が複雑に融合した神仏集合という思想と日本独自の山岳信仰が物凄く深く根付いていますが、ここには更に神道以前の原始的な信仰、アニミズムがそれらと共に生きているということ。
それがこの不可思議な空間の1つの要因になっているのではないかと思いました。

そのアニミズムは世界が未だに文明化には至っていない時代に共通して自然に対して抱いた畏怖の念と共通するものがあると私は思います。


世界の宗教の変遷をかなり大まかに見ると、

原始宗教、
原始宗教から多神教が生まれる、
多神教を邪教としての一神教が幅をきかせる、

という流れで私は考えています。


また、熊野の自然は非常に複雑なものがあり、その地形や潮の流れ、風土など、どれだけ調べても、その複雑さから全体を把握するのが非常に困難なものがあります。

日本、特に熊野の地では全ての宗教が混じり合い、複雑な自然と共鳴して他に類を見ない不可思議な地になっていると感じました。

また、訪れるのが楽しみです。

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