争いではない解決の模索『3びきのかわいいオオカミ』
図書館でお勧めしていた『3びきのかわいいオオカミ』という絵本がよかったので、ネタバレ含みますが紹介させてください。
『3びきのこぶた』と似て非なる物語
大きな物語の流れとしてはこんな感じです。
3匹の狼達が家を作ります。
しかし、乱暴な豚にことごとく壊されてしまいます。
レンガで作っても、コンクリートで作っても、鉄で作っても。
そこで狼達は考えて、今度は花で家を作ります。
すると豚は花の香で心が癒され、優しい豚になり、狼達のよき友達になる、というお話です。
この流れから、この物語は『3びきのこぶた』を元にしていることがわかります。
でも、配役は逆です。
いつもは怖い狼たちが主人公で、いつもは優しい豚が乱暴者になっている、それだけで子ども達はワクワクしていました。
家の壊し方が本当の暴力!
僕がこの物語を気に入ったのには2つ理由があります。
そのどちらも、『3びきのこぶた』でもやもやしていた事に真っ向から挑戦をしてくれていたからです。
1つ目は、家の壊し方です。
『3びきのこぶた』では、末っ子の豚がレンガで家を作ったところ、狼は息を「ふー!」と吹きかけます。
それでもレンガの家は壊れず、狼は諦めてしまい、お話はそこでめでたしめでたしで終わります。
でも、『3びきのかわいいオオカミ』の乱暴者の豚は違います。
息を吹きかけてダメなら、あらゆる手を使って家を壊そうとします。
その本気度がすごい。
暴力の力、怖さをまざまざと見せてくれるのです。
武器には武器を?
そして、2つ目の好きなポイントは、1つ目と関係しています。
豚の本気の暴力に対して、狼達はさらに頑丈な家を作ります。
それに対して豚はさらにすごい暴力に訴える...
これって、戦争や軍拡競争を想起しませんか?
強力な武器に対して、対抗兵器を配備すれば、相手はさらに強力な武器を開発しようとする。
今の世界で現実に行われている、終わることのない戦争と軍拡の連鎖。
それに対して、この『3びきのかわいいオオカミ』は別の道を提案したんだと思います。
人々を不幸にする目的の兵器ではなく、人々が幸せになれる何かを作ることで、世界から戦争をなくせないか、そんな提案だと思います。
タイトルの意味
この物語の主人公は『3びきのこぶた』と同じ豚たちでもよかったはずです。
でも、あえて豚と狼の役割を逆にして、『3びきのかわいいオオカミ』としたは、単に奇をてらったのではなく、『3びきのこぶた』とは逆のことを訴えたかったからだと思います。
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