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となりのトトロ

 2024年2月29日(木)、新所沢パルコは惜しまれながら閉店した。店じまいを惜しむ人々で店内はごった返した。新所沢レッツシネパークでは【さよなら興行】として、『となりのトトロ』が上映された。満員の映画館を久しぶりに見た。

 とある田舎町、松郷(所沢に実在する)におとうさんと姉妹が引っ越してくる。お姉ちゃんがサツキで妹がメイ。来た早々、マックロクロスケを見つけたりして、大変な騒ぎ。幼いふたりにとっては毎日がキラキラした冒険だ。
 サツキが学校に行っている間にメイは不思議な生物を見つける。そのかわいいやつを追いかけて森を抜け窪みに飛び込むと、そこには巨大な生物がいた。メイは無意識にそれを、トトロと呼ぶ。

 トトロやマックロクロスケ、ネコバスは姉妹にしか見る事ができない。「特定の人にしか見えない」という設定は『フィールド・オブ・ドリームス』や『シックス・センス』などに見られる。本作では無垢なるものにしかそれが見えないと言うことだろう。ではなぜ大人になるとそれが見えなくなるのは何故か? それは見たくなくなるからである。「見えるものと見えないもの」があるのではない。そこには「見たいものと見たくないもの」があるのみである。

 トトロとメイ、サツキが祈りを捧げると、芽が出て店に向かって枝を伸ばしぐんぐん大木になるシーン。アニミズムともとれる場面である。過剰な科学万能主義への解毒剤のようにも思える。
 
もう誰かが書いているのかもしれないけれど、この話はルイス・キャロル『不思議の国のアリス』に似ている。メイとサツキがアリスで、トトロがハンプティダンプティで、ネコバスがチェシャ猫…。現にネコバスが消えて、笑いだけが残る場面がある。また、ヒロインが森に迷い込むという設定も似ている。そして、アリスにも姉がいる。

 ラスト、七国山病院(東村山市の八国山緑地にある新山手病院がモデルか?)のおかあさんにトウモロコシを届けた後、姉妹はネコバスで帰ってゆく。そこに主題歌『となりのトトロ』がかぶさる。自然に涙がこぼれた。

 新所沢レッツシネパークで観る最後の映画が『となりのトトロ』で本当に良かった。

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