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遠いところ

 私の母は沖縄で生まれた。私も何度か沖縄へ行ったが、美ら海水族館やニライカナイ橋などの観光地には行ったが、沖縄の「現実」に触れる事はなかった。

 沖縄市コザでキャバクラで働く17歳のアオイ(花瀬琴音)は夫マサヤ(佐久間祥朗)と息子の健吾(長谷川月起)と3人で暮らしていた。マサヤは働いていた建設会社を辞め、アオイに遊ぶ為の金の無心をくりかえしていた。断れば平気で暴力を振るう。ある夜、アオイが働くキャバクラにガサ入れ(家宅捜索)が入り、彼女達は逮捕されてしまう。これ以降、アオイはキャバクラでは働けなくなる。そんな折、マサヤが飲み屋で暴力事件を起こし、被害者に示談金を払わなければならなくなる。金が無い。二進も三進もいかなくなり、アオイは我が身を売る事を決める。

 沖縄の「現実」という事だが、かの地の「血」を受け継ぐ私でも関東に住んでいるので、これを知ったり実感するのは難しい。なぜ沖縄でこのような複合的な問題が起こっているのだろうか? 他の地域でもあるのだろうが、沖縄は際立って多い気がする。南国特有の楽天的な考え方が悪い方へ作用しているのだろうか?劇中でもマサヤが「また働けばいいさ」と口走る。これは楽天的を通り越して、能天気過ぎないか?

 驚いたのはキャストの殆どがヤマトンチュ(沖縄以外の出身者)であり、ウチナンチュ(沖縄出身者)はほんの数名だという事。主人公アオイを演じた花瀬琴音は東京出身である。この事実を鑑賞後に知って驚愕したくらい、皆ウチナンチュに見えた。演技力と想像力の賜物である。特に花瀬琴音は過酷な運命を生きるアオイを壮絶に演じ切った。

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