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【物書き部企画】たむ小の同期にオペラ歌手がいる!

「オンラインサロン、たむ小ってどんなところなの?」って聞かれると

「いろんな人と知り合えるよ、例えばオペラ歌手とか」

と、とねけいさんを例に出していました。

恥ずかしながら、オペラ歌手についてのイメージは膨らむだけで、実際どういうお仕事をしているのか全く知らず、「たむ小でオペラ歌手の知り合いが居るの」という満足感に浸っていました。

なので、みなさんも知らないオペラ歌手という職業。

どうやってオペラ歌手になるの?

どういう風にステージに立つの?

苦悩は?

色々な質問をぶつけてみました。

オペラ歌手になった経緯

元々母親がピアノの先生ということもあって、幼い頃からクラシック音楽が身近にありました。ただ音楽の道に進む気は全くなくて・・歌うことは好きで小学生の頃から合唱団に入っていたのですが、母親が3人兄弟のうち一人は音楽の道に進んで欲しい、という気持ちがあったため、高校1年生の時に歌の先生のところへ連れて行かれた、というのがきっかけです。

そのまま音大の声楽科に入学し、オペラ自体も大学に入ってからしっかり見たり学んだりしました。そこで教えていた先生がドイツの歌劇場で歌っていたような人で、初めて行ったオペラの舞台に圧倒されて、「私もあの舞台に立ちたい」と思ったのがきっかけです。

自分と向き合うことをした大学院時代

大学を卒業後、そのまま声楽科の大学院に進み、短期留学でオーストリアに行き色々学びました。大学院時代はオペラを一本、一年間かけて勉強して披露をするカリキュラムがあり、その時に指揮者の先生、演出家の先生、歌の指導をする先生、ピアニストの先生、裏方のスタッフをする先生、たくさんの人が一緒になって作り上げました。

この時に自分に与えられた役柄に入る、役になりきるために作品の裏側を知り尽くす、という作業が必要になります。Il Campielloというヴェネチアの小さな広場を舞台にしたオペラで、ご近所物語、のような話だったのですが、その中で演じた役が「外部から越してきた、高飛車で変な喋り方をする、ヴェネチア人に憧れを持っているけどうまく馴染めない、少し寂しさを感じている」という役でした。

自分とは性格の全く違うキャラクターを、イタリア語で演じる時に、どうやったら自然に見えるのか、今の歌い方では自然ではないが、何が間違っているのか?どうしたらもっと堂々と舞台に立てるかなど、自分に向き合う時間が多くなりました。役柄で悩む以外にも、声で悩んだり、表現で悩んだり、うまくできない、壁にぶち当たっても自分と向き合うことでその壁がいつの間にかなくなる瞬間があるんですよ。スッと自分の中に役柄が「落とし込めた」という感覚が快感でした。それを二十代前半で体験できたのは光栄に思います。

そして本番、舞台の光を浴びて、見にきてくれたお客さんから拍手をもらうと、麻薬のようにまた舞台に立ちたい!という気持ちがより一層強くなりました。

日本ではどれくらいの人がオペラ歌手として活躍しているか?

日本はオペラ歌手一本で活動できている人はいないと思います。私はもちろん、声楽部の大学院を同期で卒業したメンバーはほとんどが音楽関係の仕事をしていますが、学部でみたらオペラ歌手として舞台に立っているのは10%いるかいないかだと思います。オペラ歌手の収入だけで成り立つ業界ではないので、歌を教えるなど、他の音楽系の仕事をしつつオペラ歌手をやっている人がほとんどです。

オペラは公演が決まった3年前から動き出す

例えばモーツアルトの“フィガロの結婚”をやりますと決定してから、3年前に演出家に話がいきます。そして2年前にオーディションの知らせが出て、オペラ歌手のオーディションが公演の1年半前くらいに行われます。歌のテクニックはもちろん、演出家が描いたイメージに近いか、歌手の見た目や「色の付けやすさがあるか」、もしくはもう持っている要素を演出に組み込むことができるかなどの判断で役柄が決まります。うまいか下手か、というよりは「この演出家のプロダクションにはまるかどうか」という基準で選ばれます。

同じ演出家が他の国で公演をしていたら、それを見ながら自分のやりたい役、というよりはこの演出家が求めている役に一番近いものはどれだろうと予測してオーディションを受けに行くようにします。もし初めての演出の場合はそういった事前調査ができないので、運に任せるしかないですね。

オーディションもコンクールも頻繁に落ちるので、免疫がつきました。辛いと思うことなく、また落ちた、じゃあ次!と役作りに没頭します。

オペラ歌手とパーティー

オペラ歌手と言っても、みんなで居酒屋行ったり、カラオケに行ったりします。声量があるからマイクなしでガンガン歌います。友達の結婚式の時で、音楽関係同士の結婚だったので、讃美歌の聖歌隊がいるのにも関わらずフルハーモニーで、ハモりながら参列者の方が声大きく歌っている事とかありました。披露宴の余興なんかでも歌う事も。

芸能人の方がやっているワインパーティーに呼ばれて参加者として行く人もいますし、コックの格好をして急に歌い出すようなフラッシュモブとか頼まれたりもしますね。

オペラ業界の今後

コロナ中、仕事が一気に無くなりましたが、また動き出した時にオンラインへの動きが一層高まり、SNSなどで宣伝することも新しい動きで始まりました。今まで公演中の写真撮影はできなかったのですが、カーテンコールだけ写真が撮れるようになり、自身のSNSで宣伝に使っています。もちろん色々な人に知ってもらうという点は大事ですが、オペラの敷居を下げる必要はないのかな、と思います。

社交の場としての品格を保って、おしゃれをして「日常ではない体験をする」側面は失ってほしくないなと思っています。クラシック音楽は「大人の娯楽」と言われ、教養があるほど楽しめるので、そういった楽しみをSNS, 本やメディア、発信の仕方を変えて多くの人に届くようになって欲しいです。このインタビューを聞いて少しでもクラシック音楽に興味を持ってくれて、演奏会を聴きに行くなど、身近に感じてくれたら嬉しいなと思います!

「インタビューを受けた人」
【3期生】とねけいさん

「インタビューをした人」
【3期生】Natashaさん


田村淳の大人の小学校では2022年10/18(火) 18:00~
10/23(日)20:00まで10期生の募集をしております!
https://www.atsushi-es.fants.jp