葬儀屋のありがたさ!
8年前に父と妻が他界した。二人とも闘病生活が長く、母も私も疲れきっていた。
人が亡くなると、気持ちは落ち込み、激しい悲しみに襲われるが、それに浸っている間も無く、怒涛のようにやらなければいけないことが出てくる。
いつどこで火葬ができて、そのためにいつ葬儀を行うのか。そのために必要な書類を集めたり、お坊さんの手配など。こんなことは滅多に経験することではなく、人生の中で何度もないことであり、最初は戸惑いの連続であった。
父が4月に、妻が12月に亡くなった。几帳面で真面目な父は、自分が亡くなった後のことを具体的に考えきちんと準備をしてくれていた。家族葬であったが、父が葬儀屋を決めていて、自分が亡くなったらここの葬儀屋に連絡してほしいと事前に言われていた。また、エンディングノートも残しており、銀行口座や保険関連などの書類をきちんと整理してファイリングしてくれていた。
父の葬儀でお世話になった葬儀屋の担当の人は、30代の男性社員で、きめ細かい気配りのできる見事な仕事ぶりであった。物腰がとても柔らかく、なんでも気軽にお願いもできる人であった。
8か月後に妻が亡くなった時には、とても急だったこともあり、父よりもショックや悲しみも大きく、どうしていいのか呆然としていた。娘たちもまだ小さく、自分だけが悲しみにくれているわけにはいかず、とにかく父の時にお世話になった葬儀屋の担当者に連絡をした。
深夜に電話をしたが、とても迅速かつ気配りのある対応で、この人が担当で本当に良かったと思った。妻の葬儀では、義兄夫婦と葬儀費用をどう持つかなどで、担当者との打ち合わせでとても揉めてしまった。担当の彼は、ただその諍いを見守ってくれた。1時間ぐらい決まらなかったが、急かされることなく、口を挟まずに、ただ待っていてくれた。
葬儀に誰を呼ぶか、どの宗派のお坊さんを呼ぶか、花はどうするか、など次から次へと決めなければいけない事があったが、彼が自分の様子を見ながら、いいタイミングで聞いて相談にのってくれた。
彼から娘たちと自分から亡き妻へ手紙を書いて葬儀の時に読んでみたらどうか、という話があった。私は何か自分の妻への思いを、亡き妻や家族・親族にも伝えておきたいという気持ちがあった。娘たちにとってもそれは良いことだと思い、それを行うこととした。長女は読んでいるうちに涙が止まらず、ママへの思いをなんとか伝えていた。その時の長女の姿はこの先も決して忘れないであろう。
火葬が終わり、骨を拾い、骨壷を自宅まで運んでくれた。これで葬儀屋にお願いした仕事は最後になったが、彼に心からお礼を言った。「母や自分の時にもぜひお願いしたいので、この仕事を続けていてください」と彼に言った。
これほど人のためになる仕事はなかなかないのではないかとこの2回の葬儀で思った。悲しみにくれる中、とても衰弱している時に、何から何までやってくれて、心の支えにもなってくれる。
葬儀屋に対して、人が亡くなった際にこんなお金を取るなんて! と思う人も多いと思う。もちろん、葬儀屋や担当の人にもよるが、根本的には遺族にとって、なくてはならない、ありがたい仕事だ。
自分も定年後は葬儀や終活に関わる仕事をやってみたいと思うようにもなった。世のため人のために働くことがモットーとしている自分に一番合っているような気がしている。
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