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【植物】入れ替わり

数日前まで桜がまだ少し残っていたけれど、ついにほぼいなくなった。
替わりに藤がいい香りを放ちながら咲き始め、房の長さを競い合ってる。

数年前まで、マンションの駐車場のとある場所にに燕が毎年巣を作ってた。
巣がある間はフンよけの板が設置されて、下にある車も守られていた。
残念ながら、毎年一度は取り壊されていたんだけれど、それでも毎年巣ができ、雛が育ち、旅立つのを見ていた。

そう。ちょうど数年前。
いつもと同じように巣作りにせっせと精を出す親鳥が確かにいたんだけれど。

作りかけの巣が取り壊されて。
それでもやっぱり親鳥はそこに作ろうとする。
でもやっぱり取り壊されて。

猫さんの仕業かと思ったりしたこともあったけれど、猫さんが届く場所では到底ないことに気づいて。

そんなことを繰り返しながらも、燕は粘り強く巣を完成させ、卵を産み、雛が孵った。

そしてある日。
その駐車場の下の車の所有者が巣を壊してることに気づいた。
雛が落ちていた。
雛の上に車が停まっていた。

それからは燕が巣を作りに来なくなった。

すごく待ち遠しかった春の風景。
確かに車も糞で痛むし、餌とかも落ちてくるし汚れはひどくなる。
でも楽しみだった。

いっそ、自分の車の上に作ってくれてたら、ずっと見守れたかもしれないのに。
そう思った。

新しい建物は壁がツルツルしていて、燕の巣作りには向いていない場所も増えてきた。

今日も健気に巣の材料を運ぶ親鳥を見かけた。
まだこのマンション以外にも頑張れる子育て場所があるんだろう。

よかった。

ふとそう思った。

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