ワークワークで、ワクワク上司

 私が「ワークライフバランス(仕事と生活の調和、WLB)の研究に取り組みたい」と会社に申し出たのは今から30年近く前、入社2年目だった。当時の上司は鼻で笑った。「おまえ、バカだなぁ。日本企業はワークワークで大成功をおさめてきたんだ。WLBなんてやるわけないだろう。欧米企業は…とおまえは言うが、だから欧米はダメになったんだ。何がWLBだ。俺なんか、ワークワークでわくわくしちゃうぞ、ワッハッハ!」

 研究禁止命令を出されたので、仕方なく私は、自分の時間を使って海外の論文を読んだり、有給休暇を使って、国内外にヒアリングに出かけた。20数年の研究期間のうち半分以上が自分の時間を使って、私は研究をしてきた。趣味みたいなものだ。

 しかし、17年ぐらい前から風向きが変わった。日本を代表する優良企業グループもどんどんWLBに取り組むようになり、私への講演依頼やコンサルティングの依頼はずっと、増えてきた。

 「たまたま当たった」と思われるかもしれないが、社外にネットワークを張り、自分のアンテナに引っかかったことを自分なりに追及した結果が、自分のキャリアにも結び付いたし、会社にとっては新規ビジネスに結びついた。会社の机にしがみついていたら、中長期的に伸びるビジネスのニーズやシーズ(種)に気づくことができない。

 私が業後の時間を使って、ずっと研究してきたのは、両親から「一芸を極めるように」と言われて育ったからだ。また、2回の育児休業は男性で第一号取得者だったので、男性上司や同僚から、いろいろとネガティブなことを言われたが、自分の考えを貫いたのも、ある意味で発達障害でKYだから良かったと思っている。

 私の寄稿を読んでおられる読者の中には、もしかしたら何らかの障害をもっていたり、コンプレックスをもっている人もいるかもしれないが、いずれ自分の持ち味であり強みでもあると気づく日がくる。ぜひ障害やコンプレックスから逃げずに向き合ってほしい。

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