介護は、「抱え込まない」ことが大切

 50代前半で、自分の両親、連れ合いの両親4人が存命の場合、誰か一人が要介護になる確率は6割、50代後半では9割まで高まる。家族に要介護者がいる社員は、現在すでに1割強いる。特筆すべきは10~15年後に、大半の職場で介護社員の割合は2~3割に高まる。介護は誰にでもやってくると覚悟すべきだ。

 介護に関する費用を捻出するために収入を維持するという面からはもちろん、生活が介護のみにならないという面からも就業を継続することも大切だ。しかし、介護を理由に仕事を辞める人は年間10万人にも上る現状だ。
介護をしながら仕事を続けるには、どうすればよいか。

 介護に直面したとき、「介護をすることになった」と職場に知らせることに不安を持っている従業員が大半だ。「仕事に私情を持ちこむのはよくない」「業務に支障が出るのでは」「人事評価が下がるのでは」などと思い悩む。

 私自身も十年前、実家で一人暮らしをしていた父が認知症と統合失調症を発症し、介護が必要になった時はとても不安だった。すでに母は十五年前に亡くなっており、我が家の長男は当時まだ3歳で、子育てにも手がかかっていた。

 重い気持ちで当時の上司に相談したが、理解ある人に恵まれた。じっくり話を聞いてくれた上で「お父さんのそばにいてあげなさい」と温かく促してくれた。もちろん仕事は続ける前提で、介護に時間が取られることへの理解を示してくれた。そして、上司のお母さんが20代で夫に先立たれた後、いつも口にしていた「運命を引き受けなさい」という言葉を教えていただき、大いに励まされた。

 介護に直面したら、まずは「介護をすることになった」とカミングアウトすることが大切だ。状況を知ってもらうことで職場の理解も進み始めるし、両立も開始できる。「実は自分も介護と格闘してきた」、「今まさにしている」という人は想像以上に多い。見守ってくれる人がいると知ることで、孤立感がなくなる。

 一時期、統合失調を悪化させた父から、罵詈雑言を浴びて辛い日々もあった。しかし、2回の育休経験が介護でいきた。というのも、子育てを経験したことで、父母がさぞかし自分の育児で大変だったろうと気づき、介護は愛情込めて育ててくれた恩返しと思えてくる。介護は「命のバトンリレー」「介互」だとつくづく思う.

 介護をすべて自分でする必要はない。あなただからこそできること、分かることがある。あなたにしかできないことをしっかりやりながら、同時に堂々と人に頼る勇気を持とう。それが、介護をするあなたにとっても、介護を受ける方にとっても大切なことだ。

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