真正ノマドワーカー

 喫茶店など職場以外を転々と渡り歩いて仕事をしている人たちをノマド(遊牧民)ワーカーと呼ぶ。

 私自身、30年近く前から、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)やダイバーシティ(多様な人たちが活躍できる企業・社会)を研究してきたが、典型的な「足で稼ぐ」ノマドワーカーだった。

 これまでコンサルタント以外でも、仕掛け人とか、プロデューサーはそういう働き方をしてきたが、人口減少社会では、あらゆる職種で、ノマドは増えるはずだ。

 これまで日本企業の強みは、OJT(オンザ・ジョブ・トレーニング、職場での教育訓練)と言われてきた。私の最初の職場は長時間労働の極致だったが、業後に上司や先輩から学んだことは多い。しかし、最近では、中間管理職の多くは、自ら成果を挙げることも期待されている「プレイイングマネージャー」となり、OJTをする余裕はなくなっている。

 しかし、これはチャンスでもある。本来の遊牧民とは、おいしい牧草地を目指して移動する民だ。知識労働では、おいしい草=情報であり、情報は職場ではなく、いろいろな意味での「現場」に転がっている。

 私は、企業に出向き、現場に転がっているダイヤモンドの原石のような情報を発掘してきた。経営者の他に、社員や労働組合などの話を聞き、様々の角度から情報をチェックし、磨きあげる。すると、さらに「情報が情報を呼ぶ」という正の連鎖を体験してきた。自分のライフのアンテナに引っかかったことを追求した結果、私のキャリアになり、会社にも新規ビジネスで大きな貢献ができるようになった。

 今後、企業は鵜飼の鵜匠になると割り切るべきだ。社員が職場以外のネットワークを張り巡らすことで、もともと所属している企業にも多くの還元があるといった「WIN-WINの関係」を期待するのだ。そういうふうに、職場以外の顔を持つ1人3役が広まっていくと、人口減少社会でも社会活力は維持できるのみならず、企業にも大きなメリットをもたらすはずだ。

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