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パラリンピック ~足で弓を射るアーチャー~

両腕がなく足で弓を射るマット・スタッツマン。アームレス・アーチャーとして、世界のメディアから注目されているインフルエンサーだ。

マットは、2012年ロンドンパラリンピックで銀メダルを獲得。
「最も遠く正確な射程距離」で射抜く記録のギネス世界記録保持者でもある。今大会で3度目となるパラリンピックは、3回戦で敗れ9位に終わった。

MIY04149マット

(Photo 宮地秀行)


マットは先天的に両腕の無い状態で生まれ、養子に出された。
素晴らしい家族と出会い、幼少期から「何でも自分でやりなさい」と育てられた。

職探しにも苦労し、狩りをして家族の食料の足しにするために、アーチェリーを始めたという。「腕がないからアーチェリーなんてできないと、みんなが笑ったけど、僕は人の言うことはきかないから」と笑う。すでに7,8歳の頃には、人にじろじろ見られても、自分のことをどう思われても気にならなくなった。

運転も足でするし、自動販売機にもコインを足でいれられるし、歯磨きも足を使ってなんでもできる。できないことはないかと問うと、「冗談でいつもいうんだけど、皿洗いかな」と笑った。今のところ、できないことは見つからないという。「僕の足は手なんだよ」


日陰もなくカンカン照りの中、約2時間、ずっと弓をひき続ける選手たち。
障害によっては、体温調節ができないため、体に氷を巻き付けて弓を打つ選手がたくさんいた。マットも氷を体に巻き付け「今日の試合は、選手人生の中で一番暑かったけど、それはそれでいいね。全然問題ない」。ポジティブでいること。マットが心掛けていることの一つだという。

3人の子どもについて質問をすると「いい質問をするね」とパパの顔になった。いつもは、家族は試合に帯同するが、コロナ渦で初めて家族と離れて試合にのぞんだ。「でも、大丈夫。今はいい携帯があるからね。毎日話せているよ」


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(Photo 宮地秀行)


「子どもに障がいがあったとしても、やりたいことはなんでもさせてあげてほしい。親は難しいと思うけれど、サポートしてほしい」と話す。マットが両親に「なんでもできる」と育てられたからだ。「そうすれば、大人になったとき、もっと自由になれてきっと成功するよ」ときっぱり言い切った。

「今日も、腕のない選手が2人も出場している。腕のない選手が腕のある選手と戦える。素晴らしいよね」。腕がないからアーチェリーができない、障がいがあるからスポーツができないという固定観念を変えたいと話すマット。その2人の選手はマットに憧れて競技を始めた。マットの活躍が、選手の心を動かしたのだ。

最後に子どもたちへのメッセージをもらった。「障がいのあるなしにかかわらず、なにかやりたいことがあったら、なんど失敗してもあきらめず、何度も何度もやり続けること。そうすれば、きっと夢は叶う」


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