薬局にて学んだこと9 泣くことのすすめ

棗(なつめ)がたくさん入った漢方薬、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)は、子どもの夜泣きやひきつけ、興奮、ヒステリーなどに効果があります。これは泣かせるお薬でもあり、泣いてばかりいるのを収めるお薬でもあります。

漢方医学には、汗吐下(かんとげ)という治療法があります。汗吐下は、読んで字のごとく、汗をかかせたり、吐かせたり、下痢をさせることで、体の中にたまった余分な気を出させる方法です。この場合、水と一緒に排出させます。気が体の一か所で滞ってしまうと、それは気だけでとどまらずに、一緒に動いている水や血液の流れを滞らせてしまうので、その排出を図るのです。人の体を動かしているのは、体の中や表面を流れている気なのですが、体を動けなくさせてしまい病気を作り出すのも同じ気なのです。

私たちは、納得がいかなかったり、いやな話を聞いたりして、よく胸に気をためてしまいます。それを、気持ちがわかってもらえる人に聞いてもらうなどで、一時的にでも気を晴らすことのできる時は問題ないのですが、それができなくて、胸にためる気の容量がいっぱいになってしまうと、女性でしたらヒステリーの発作を起こされる方がみえます。ヒステリーは、怒ったり泣いたりして激しい感情の起伏を起こしながら、気を外に放散させようとしているのです。その放散がうまくいかないと、頭痛や手足のしびれなどの症状を出してきます。

以前、うちの薬局にお加持に通われていたある女性が、「お加持を入れてもらうと、いつも家に帰って大泣きする。そのあと、すごくすっきりする。」と言われる方がみえました。泣くことを忘れてしまっている体に、お加持が泣くことを思い出させるのでしょう。
いくら胸に気がたまりすぎていても、気があまりに落ちてしまっていては泣くことができません。泣くことは、胸にたまった気を放散させる体に備わった治療法です。

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