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定年後の夫の育て方(11)実父の遺品整理・・・かみ合わない気持ち

定年後の夫の育て方、第11回です。
2020年2月くらいのお話です。

以前の話はこちら

第10回の簡単なあらすじ
理科系夫が毎日欠かさず書いていた「その日の3つのいいこと」
メモから見えてくる
退職後半年間(2019/9~2020/1)の夫の姿とは。

理科系夫の本音「つぶやき回」
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(忙しい人のために)第11回の簡単なあらすじ
実父の遺品整理。
ようやく業者を呼んだものの。
理科系夫の言葉に、悲しさが止まらない。
(2020年2月くらいの話です)


実父の遺品は

あつこの父は、学者肌で他人にやさしかった。
書道が得意で日展で賞をとったこともある。

遺品は、書道道具。
端渓の硯をはじめとして、筆は大小含めて50本以上。

中国で買い付けてきた大量の半紙。

墨はきれいな縫い取りの箱にひとつひとつ納まっていた。

下敷きは3畳ちかくの大きさ(大型の作品を書くため)。

書道のお手本の書籍多数。

硯に水を足す水滴(水差し)は、陶器でちょこんとしていた。

しかし、あつこは書道には縁がなかった。
父の部屋の半分以上を占める道具たちに途方に暮れた。


業者を呼んだ

逃げているうちに、月日が流れた。
そして、家のリフォームが決まった。
リビングのリフォームだが、この際、いろいろなところを片付けなくては。

父の遺品の片付けも重い腰を上げて始めた。
どうしていいかわからないから、業者に買い取ってもらうことに。
ネットでいくつかの業者に当たりをつけて、その中の1つに申し込んだ。


こんな整理で良かったのか

業者は2人連れでやってきた。
父の遺品をくまなく調べて、
「他にまだありませんか」と何回も言った。

一言で言えば、温かみのない対応だった。
父が愛した品物たちは、ある程度のお金になった。

私が買取業者に慣れていないこともあったのだろう。
値段について高いとか、安いとか考える心の余裕もなかった。

1番高く売れたのは、中国から買ってきた紙だった。
古い紙は、墨の染み込み方に味があるので、人気があると後で知った。


夫の言葉に思わず・・・

片付いた部屋を見て、夫はぽつり。

「ようやく片付いた。もう少し早くやってもよかったね」
悪気はなく口にしたことはわかる。

が、その言葉に思わず涙ぐむ。

硯に水を差し
墨をすり
筆を選んで
作品を何枚も書く父の姿。
墨の香りに包まれるその部屋の空気感が
ありありと思い出された。

こんなやり方でよかったのだろうか。
あの品物たちは、これからどうなるのだろうか。
優しかった父を思い出す。
お父さん。あまり良い娘じゃなくてごめんなさい。

仕事で忙しかった。
母の施設でも細かな問題が起きて対応が必要だった。
そこにこの買い取り事件。

わたしは寄り添ってほしかったのだ。
重い固まりがずっと胸の奥に陣取っているような。

その日から、夫との会話がまた減り始めた。
ーーー

ひとつだけ手元に残した水滴(水差し)。
中央の穴から水を入れて
急須みたいに硯に水を足す。
父は「大福」と呼んでいた。

「大福」
横の模様は梅の花

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