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見せ(たく)ない名札

なっちゃん(あつこの次女)が新入社員だった頃の話である。

なっちゃんの会社では、全員が名札をつけている。
事務仕事だが、接客をすることも多い。

なっちゃんの苗字(あつこの苗字)は、よくある漢字で構成されている。
同姓の人もときどきいる。
なっちゃんが、最初配属された支店でも、同姓の人がいた。

すると、後から入ってきたなっちゃんはどうなるか。
苗字とその下に名前の一文字がついた形の名札となる。
例えば
『山田(な)』という感じ。

なっちゃんは、新人として一生懸命働いていたが、お客様の中に細めの中年男性がいた。
そして、ある時、なっちゃんのことを名札と同じ表示で呼んだのだ。

「山田な、さん、いつも元気でいいですね」

なっちゃん、ちょっと嫌な感じがしたがとりあえず仕事と思って乗り切った。

ところが、細い中年男性は来るたびにいろいろと話しかけるようになってきて。

「山田なさん、若い女性がいると雰囲気が明るくなりますね」

「山田なさん、この前はいなかったけど、具合が悪かったんですか」

名前を呼びかけられるのがだんだん苦痛になってきた。

支店に赴任して3年。
なっちゃんは本社に転勤。
これは偶然であったが、なっちゃんは人知れずほっとした。

なっちゃん「ほんと嫌だった。名札があるから嘘がつけないし。周りも仕方がないと言う雰囲気だったし。」

ーーー
たっくん5歳。
幼稚園の名札を袖のところに付けている。
家に帰るときには、名札を裏返しにして名前が見えないようにする。

なぜか。

園児の名前を他人に知られないようにするためだ。
園児の名前を知られてしまうと、悪用されることが考えられるから。
名前を呼ばれただけで、安心してついていってしまう子がいるかもしれない。

下校するときに、名札を外す小学校もあるそうだ。

ーーー
下の名前だけの名札をつけるホテルがある。

従業員の個人情報を守るとともに、よりお客様にきめ細かい対応をするように社内規定も改定した。

お役所も対応に乗り出している。

厚生労働省は薬剤師の名札のフルネームの表示を「名字のみ」でも良いと2022年に決めた。

国土交通省も2023年にタクシーやバスの運転手の氏名掲示義務を廃止した。

名前を知られるリスクの重さが、問題になったのであろう。

ーーー
なっちゃんの会社の名札はそのままである。

下の名前も表示されている。まだまだ個人情報保護とまではいかない。

昔は名前だけで危険が及ぶとは考えられなかった。
SNSが発達した現代では、本人のアカウントを特定して絡んでくる人もいるらしい。怖い。

安全のためには、下の名前だけの名札やハンドルネームのような名札でも良いだろう。

たとえば
「あつこ」
「ダイヤ」


いろいろな知恵を絞りたい。
とくに若い女性や子供は気をつけないと大変な時代なのだ。

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